【第4回】IT導入でやるべきことまるごと! 中堅・中小企業とIT経営(3/3 ページ)

» 2011年09月27日 08時00分 公開
[春日丈実,三菱UFJリサーチ&コンサルティング]
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成功するためのポイント

 IT導入を成功させるには、まずは経営者(もしくはプロジェクトオーナー)の思いを明確にし、契約関係の3つ(図表1-1)について対応をすること。また、前回説明をした「やってはいけない5つのポイント」に対応することである。これらを実施すれば、成功率はかなりアップできると考えている。

 ただ、これで「必ず成功するか」と言われれば、もうひとつ付け加えないといけないものがある。それは、「コミュニケーション」である。コミュニケーションといっても、いろいろなレベル(場所)がある。筆者が考えるコミュニケーションは5つの場所で必要になる。それぞれの場所でコミュニケーションを十分に行うことによりIT導入を成功に導けると考える(図表3-1)

図表3-1 コミュニケーションが必要な場所 図表3-1 コミュニケーションが必要な場所

 コミュニケーションが必要な5つの場所についてそれぞれ解説をしていく。

プロジェクトコミュニケーション

 まずは、顧客企業とシステム会社間によるコミュニケーションである。これはプロジェクトミーティング(高頻度)と定例ミーティング(月1回程度)があり、ここでプロジェクト管理を行っていく。ここのコミュニケーションが一番重要であり、ほとんどのITサービス導入プロジェクトでは実施している。

顧客企業内コミュニケーション

 プロジェクト規模にもよるが、実施してないところもある。中小企業は、風通しは比較的よいが、営業部隊(フロント)と管理部隊(バックヤード)では意見が対立することもある。企業規模が大きくなれば比例してコミュニケーションは取りにくくなるので注意が必要だ。

システム会社内コミュニケーション

 システム会社によっては、プロジェクトで初めて組成される体制もあり、コミュニケーションは取り難い場合もある。これらは顧客企業が管理できるものではないため、プロジェクトコミュニケーションでこれらのチェックを行うことになる。このコントロールはシステム会社側のプロジェクトリーダーが行うため、プロジェクトリーダーに誰がなるかは重要なポイントとなる。

経営者とのコミュニケーション

 経営者とのコミュニケーションがよくないために、プロジェクトの方向性が途中で変わることがある。経営者がプロジェクトにコミットしている場合はよいが、最終決裁者が経営者でプロジェクトリーダーが別の場合、ここでのコミュニケーションがよくないと色々なところで問題が発生する可能性がある。本稿の最初にある、経済産業省の「中小企業IT経営力大賞」で受賞している中小企業は、このコミュニケーションがうまくいっていると思われる。

システム会社の営業−開発コミュニケーション

 できている会社とそうでない会社というよりも、個人の立場に依存している面がある。営業サイドは顧客企業に対して「何でもできます」というようなことを言う傾向があり、開発プロジェクトリーダーは保守的に話をする傾向がある。一概に決め付ける訳ではないものの、営業と開発という立場からそういった傾向があるのは事実であろう。これらもやはり、開発側のプロジェクトリーダーが管理することになる。

 最後にもう1つのコミュニケーションを加えるならば、図表3-1にある「第三者」を設置することもITサービス導入には有効である。社内にそういった人材がいる企業、もしくはシステム会社に信頼のできる人がプロジェクトリーダーになった場合はよいが、それ以外の場合には設置の検討をする。

 第三者といっても、顧客企業サイドに立って、ITサービス導入についてアドバイスや経営者に対して報告するといったコミュニケーションができる人を指す。

 以上、IT導入でやるべきこととして、さまざまな提案をしてきた。最終的にはITサービスを導入するプロジェクトのコミュニケーションがうまくいけば、そのプロジェクトは成功するものと考えている。つまり、顧客企業とシステム会社双方の協力なくして、ITサービス導入は成功し得ないといえる。

 次回は本連載のまとめとして「企業変革へのIT活用ポイント」について解説する。


著者プロフィール

春日丈実(かすが たけみ)

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 チーフコンサルタント

筑波大学大学院経営システム科学修了。電子部品メーカー、ダイヤモンドビジネスコンサルティング(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)を経て、2006年1月より現職。業務改革支援、システム構築支援を中心に活動。内部統制(J-SOX)構築・運用支援では、顧客企業の業務プロセス改革支援、IT統制構築支援を中心にコンサルティングを実施。最近はIFRS(国際会計基準)コンサルティングを手がけている。



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