工夫を凝らして効率的なデータセンター冷却を実現、外気冷却の検討も始まる高まるデータセンターの省電力化

データセンターの消費電力を抑えるために、冷却の改善と電力マネジメントが注目を集めている。それを実現する上で、サーバそのものの設定や省電力化に加えて、施設の設備改善も求められている。企業が取り組むべきテーマについて、デルとAPCの担当者が意見を述べた。

» 2011年09月28日 10時00分 公開
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 データセンター(DC)の消費電力削減に向け、冷却の改善と最適な電力マネジメントへの関心が高まっている。冷却効率の大幅な改善と、限られた電源環境での高密度なサーバ設置はDCが持つ共通の課題だ。

 企業はIT機器に関する効率的な冷却の実現にあたって今後、どう取り組むべきなのか。デルのラージ エンタープライズ マーケティング ジャパン・マーケティング本部でサーバブランドマネジャーを務める布谷恒和氏、APCジャパンの取締役でビジネス・デベロップメント ディレクターを務める有本一氏の対談から、データセンターそのものの省電力化に向けたヒントを探りたい。

消費電力のモニタリングが節電への第一歩

図 APCジャパン 取締役 ビジネス・デベロップメント ディレクターの有本一氏

有本 昨今、企業ではDCの急な拡張・変更が求められることが少なくないため、設計にあたり将来的な柔軟性を確保することが極めて重要になっています。とはいえ、電源や空調など、考慮すべき範囲が多岐にわたるだけに、設計は一筋縄ではいかないのが実情です。この状況を踏まえて当社が提供しているのが、DCの各種物理インフラの管理支援を目的にしたソフトウェア製品「InfraStruxure Management Software(ISxMS)」です。

 ISxMSはサーバルームやラックの単位で電源、空調などの情報をリアルタイムに収集することを目的としたものです。サーバの重量や大きさ、定格容量など、IT機器にまつわるさまざまなデータが格納されており、例えばブレードサーバを追加する際には、空調や電力の変化をシミュレーションによってこと細かく把握でき、拡張に必要とされる手立てについて、そのデータを基に迅速かつ正確に判断を下せるようになります。その結果、IT機器のスケールアウトと同様に、必要なコンポーネントを追加する感覚でDCを継続的に拡張することが可能になるのです。

布谷 DCで消費電力の計画を行うためには、まずサーバごとにモニタリングを行い、実際に消費されている電力と負荷の動きを時系列で把握していくことが重要です。サーバごとにデマンド、つまり本当に必要な最大電力と最小電力を把握するということです。

 モニタリングという点では、デルも全サーバ製品に電力管理モジュールを標準で組み込み、リアルタイムに消費電力をモニタリングするとともに、CPUやメモリなどの搭載状況、負荷状況などもとにアルゴリズムに基づいてファンの回転数を調整したりなど、冷却の最適化を図っています。

 また、モニタリングを実現することで、負荷の低いサーバはBIOSから節電モードの設定を行ったり、あるいは計画的にPower Capping(消費電力の上限設定)を行い、消費電力のコントロールができるわけです。

有本 つまり、例えて言うと、スマートメーターでサーバの消費電力をモニタリングし、サーバ単位でのスマートグリッドを実現しているわけですね。実はAPCの製品設計におけるコンセプトもデルのサーバと極めて類似しています。

 例えば、局所冷却ソリューションである「InfraStruxure InRow」はラック列に複数台を並べて利用しますが、そこで使われる各空調機はネットワークでつながっており、デルのブレードラックと同様、ラック全体の負荷を踏まえてファンやコンプレッサーの動きを個別に制御しているのです。

InfraStruxure InRowによる冷却の仕組み(クリックすると拡大)(エーピーシー・ジャパン提供)

布谷 当社がサーバ単位であるのに対し、APCではPOD単位でのスマートグリッドを実現しているということですね。

有本 こうした類似性は時代の要請によるものと考えられます。計画停電の発生を機に、従来のように、DCに必要とされる電力をすべて供給するのではなく、決められた供給量の範囲で運用する、いわゆるデマンドレスポンスの重要性が高まっています。サーバのいわゆるパワーキャッピング(サーバの消費電力の上限をあらかじめ設定し、その上限を超える電力が使われた場合にはプロセッサーの動作周波数をコントロールして消費電力を抑制する機能)は、いわば筐体単位で同様の要求を満たすものと位置付けられるでしょう。エネルギーの最適化を考慮すると、冷却対象を包括的にとらえた対策が不可欠となっているわけです。

布谷 その実現を、各種のモニタリングの仕組みが支えているわけです。逆に言えば、モニタリング環境の整備を抜きにはさらなる省電力化を実現することはできません。デル製品のユーザーにはぜひともスマートメーターに位置付けられる「iDRAC6」を使いこなしてもらいたいところです。

日々の運用業務を支援するための細かな配慮

有本 DCの運用担当者が抱える悩みを解決するには、日々の運用にまで踏み込んだ製品設計が重要になります。例えば当社のラック「NetShelter」では、サーバを差し替える際に物理的な場所の確認を容易に行えるよう、背面にも1Uごとに数字を振っています。一見すると単純ですが、作業効率を向上できるとユーザーからの反応は上々です。

布谷 デルが出荷するサーバのうち、ラックマウント型のサーバ、つまりDC向けの占める割合は7割にも上ります。そのため、当社もDCでの利用を想定したサーバの改善をこれまで継続的に行ってきました。メンテンナンス性と省電力性を大幅に向上できたのも、データセンターからの豊富なフィードバックを基に、高品質な部品を製品に取り入れてきたからこそです。背面のレイアウトを主力のモデルで共通化しているのも、ケーブルリング作業の煩雑さを少しでも解消し、きれいな配線を行ってもらうためです。ひいては、空気の流れが良くなり、冷却効率の向上も見込むことができます。

有本 冷却の問題はDCではとりわけ重要です。日本では換気が良くなるとの誤ったイメージからか、1スロットごとにスペースを空けてサーバをラックに設置することも少なくありません。実はこうすることで、かえって空気の循環が悪くなり、温度を上昇する原因になってしまいます。

 その改善を目的に開発したのが、ツールレスで、いわば空いたスロットにふたをするための「ブランクパネルキット」です。DCではサーバの変更作業が頻繁に発生し、結果的に空きスロットが生じてしまいがちですが、ブランクパネルキットを利用すればその場合にも簡単かつ安価に対策を講じることが可能です。冷却効果を高めるとともに、その分のコストも削減できます。実機を用いたテストでも、ブランクパネルキットを用いた方がスペースを放置しておく場合に比べ大きく冷却効率が改善することが確認されています。

ホットアイルに熱を閉じ込めホットスポットも解消

布谷 ファシリティとITを一体としてとらえて電源効率を高める上で、ブランクパネルキットは優れた着眼点のツールと言えます。加えて、APCは大規模かつ最先端のDC向け冷却ソリューションもそろえていますね。マイクロソフトが大手町に設置した「マイクロソフト大手町テクノロジーセンター」においても、InRow RCや、ホットアイル(サーバの排熱がたまる空間)をドアおよび天井パネルで囲って冷却する「Hot Aisle Containment System(HACS)」、それらの冷却装置や電源などの管理が可能なアプライアンスサーバ「InfraStruxure Central」などを提供しているとか。

有本 非常に高密度かつ処理負荷の極めて高い検証作業を行う同センターでは発熱量も膨大です。APCの製品がマイクロソフトに選らばれた理由の一つは、このような環境においては従来型の冷却方式では対応が困難だったからと言えます。

 では、従来型の冷却方式とInRowやHACSなどの冷却方式とはどこが違うのか。決定的な差は冷却装置とラックとの距離、そして排熱の扱い方にあります。前者は一般に冷却装置が部屋の隅に置かれますが、その場合、冷却された空気がITラックに届くまでに熱せられてしまうことから、冷却装置の吹き出し温度をかなり低く設定しなければなりませんでした。しかも、放熱が部屋全体に回り込み、ホットスポットの発生も避けられませんでした。

 対して、後者では熱せられた空気を密閉された空間、いわゆるホットアイル内に閉じ込め、近接の冷却装置からサーバに必要な温度の空気をIT機器に対して効率よく送り込みます。そのため温度ロスが発生しにくく、空気の過冷却を回避でき、電力消費量を大幅に抑えられるのです。さらに、ラックに取り付けた温度センサーデータを元に、ホットスポットの問題にも極めて効果的に対処できます。

布谷 デルではこれまで、自社製品とAPC製品を組み合わせて提供することで、多くのお客さまから高い評価をいただいてきました。そこで、その拡販に力を入れるべく、デルはホットアイルコンテインメント(熱気の囲い込み)に特化したサーバ製品「PowerEdge C5220」もリリースしました。同製品は前面に電源モジュール、サーバ(スレッド)、ネットワークポートが全て配置されるなど、設置後はホットアイルに入ることなくメンテナンス作業できるよう工夫されています。

外気冷却型DCのメリットとは?

 外気冷却の利用が徐々に、しかし着実に進みつつある。すでに海外の例では、空冷設備を持たない「チラーレス」なDCの構築に積極的に取り組んでおり、1.07〜1.03という究極のPUE(DC全体の消費電力を、サーバなどのIT機器の消費電力で割った値)を実現していた企業も存在するほどだ。


布谷 一方、デルは現在、DCの空調に外気を利用する、いわゆる「外気冷却」型DCの実現に積極的に取り組んでいます。その狙いはDCにおける究極的な消費電力の削減にほかなりません。一般的なDCでは総消費電力の23%が空調に費やされるのに対して、外気冷却であればその分の電力消費まで削減することが可能になります。事実、GoogleやFacebook、Microsoftといった先進的な企業で採用された外気冷却型データセンターを見ると、いずれのPUEも1.07〜1.03と極めて低く抑えられています。

デル ラージ エンタープライズ マーケティング ジャパン・マーケティング本部 サーバブランドマネジャーの布谷恒和氏

有本 ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)が2008年にDCの推奨温湿度条件を緩和したことを機に、環境対策にもつながるフリークーリングは以前にも増して、世界的に注目を集めています。当然、日本でも今後は普及することでしょう。ただし、その実現にあたっては、例えばラックの空気の吸い込み口など、DC内の温度情報をよりきめ細かに把握し、それらを基に空調や電源を効率的に稼働させられるよう、データセンターの物理インフラの仕組みのトータルな見直しが欠かせません。

 万一、DC内の一部エリアで温度が上昇した場合、同様の仕組みがない場合には何の手も打てず、結果的にサーバのファンによる冷却で電力を浪費してしまうことにもなりかねません。

布谷 確かにその通りです。加えて、サーバベンダーとして必要性を強調したいのが、稼働温度・湿度範囲の広い製品の採用です。当社ではそうした条件下での研究と稼働テストに約3年前から取り組んでおり、すでに「PowerEdge R710/R610/T610」といったサーバ製品やストレージ製品、スイッチ製品の一部で、従来10℃〜35℃だった稼働保証温度をマイナス5℃〜45℃にまで拡大しています。

デルが実現する“Fresh Air Cooling” デルが実現する“Fresh Air Cooling”(クリックすると拡大)

有本 これまでは冷却のための電源設備はファシリティ部門、サーバなどのIT機器はIT部門がそれぞれ管理しており、両者に適切な情報の共有がないことが大半のケースでした。しかし、特に外気冷却のような仕組みを推進するにあたっては、両者がまさに一体となって運用することが必須になるわけですね。

外気冷却の実現に向けてサーバ製品も拡充

有本 これまで外気冷却を実施したいと考えても、そのための設計がなされたサーバが乏しく、現実的にはあきらめざるを得ませんでした。しかし、デルがラインアップを拡充することで、ユーザーは安心して利用に乗り出せるようになります。ただし、DCのサーバの全てを一度に対応製品に置き換えるのも現実的ではありません。その点を考えると、特定のエリアだけ温度をコントロールするといった段階的な移行が現実的な方法ではないでしょうか。

 一方で、APCは今後、ビルディング管理や電力品質管にまで踏み込むことで、DCの電力のさらなる効率化に取り組む考えです。10月にシュナイダーエレクトリックと社名変更するのも、その意思を明確に示すためです。

布谷 それは頼もしい限りです。その一方で、ユーザーのDCが千差万別であることを踏まえるならば、身近な、すぐに対応できるところから改善をしていくことが重要です。例えば消費電力モニタリングの確立、省電力モードやPowerCappingなどの設定、ブランクパネルの取り付け、などです。

 もちろん、本格的なインフラストラクチャの見直しとして、サーバを電力効率に優れるブレードに集約したり、ラック環境にAPC社の「InfraStruxure InRow」を採用したりなども大変有効かと思います。当社も2012年前半にサーバ製品が大きく第12世代目へと一新する予定で、その際にはさらなる省電力対応も視野に入れて開発を進めています。その点で、DCを支えるプラットフォームにまで管理の裾野を広げるAPCとの協業をさらに強化し、必要とされるソフトウェアとハードウェアを一元的かつ総合的に提供することで、今後もDCの消費電力削減をあらゆる側面から支援する考えです。

“Fresh Air Cooling” に対応した、デルの製品群 Fresh Air Cooling” に対応した、デルの製品群(クリックすると拡大)

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2011年10月31日