偽物はどっち? 「これが真のパブリッククラウドだ」――エリソンCEOがサービス参入を表明Oracle OpenWorld San Francisco 2011

サンフランシスコで開催している「Oracle OpenWorld」の最後の基調講演に登場したラリー・エリソンCEOは、パブリッククラウド事業への参入を発表するとともに、同市場で先行しているsalesforce.comをやり玉に挙げた。

» 2011年10月06日 18時05分 公開
[伏見学,ITmedia]

 10月5日(米国時間)、カリフォルニア州サンフランシスコで開かれている米Oracleの年次カンファレンス「Oracle OpenWorld San Francisco 2011」において、最後のキーノートセッションが行われた(カンファレンス自体は翌日まで開催)。ステージに登壇したラリー・エリソンCEOは、声高にパブリッククラウドサービスへの参入を発表した。エリソン氏は「Oracleのクラウドは業界標準技術に基づいた真のクラウドだ」と力強く語った。

饒舌に新サービスを語るOracleのラリー・エリソンCEO。カンファレンス初日のオープニングセッションとは別人のよう? 饒舌に新サービスを語るOracleのラリー・エリソンCEO。カンファレンス初日のオープニングセッションとは別人のよう?

 新サービス「Oracle Public Cloud」は、プラットフォームとアプリケーションのすべてにおいて、Javaをはじめとする業界標準技術が用いられているため、例えば、データベースやアプリケーションをOracle Public Cloudから米Amazon.comの「Amazon EC2」や米IBMのパブリッククラウドサービスに移行できるという。同様に、オンプレミス(社内設置システム)との相互運用も可能である。

 さらに、多くのユーザーがクラウド導入の課題に掲げるセキュリティにも対応した。従来のサービスの多くはアプリケーションにセキュリティ機能を組み込んでいるが、Oracle Public Cloudでは基盤となるインフラやデータベースをセキュアにすることで、その上に乗るアプリケーションは最初から安全性が担保されるような環境を構築した。

「パブリッククラウドでは今まで以上にシステムをセキュアにしなければならない。データセンターそのものが安心で信頼性の高いものであることを保証すべきだと考えた」(エリソン氏)

 具体的なサービスとしては、HCM(人材管理)やCRM(顧客情報管理)に関するサービスを提供していく。提供開始時期、価格ともに未定としている。

「ホテル・カリフォルニア」と同じ

 クラウドの第一人者的な存在といえば、米salesforce.comが挙げられるだろう。同社の会長兼CEOであるマーク・ベニオフ氏は元Oracle出身で、salesforce.com創設時にはエリソン氏が出資するほど。両者の師弟関係はよく知られている。

 しばしば、イベントの講演などでお互いの会社をけなし合うのも仲の良い証だと思われるが、本キーノートでクラウドサービスを発表するにあたり、エリソン氏は牙を剥いた。

「Oracle Public Cloudのアプリケーションをsalesforceのクラウドに移しても動作しない。Javaを使っていないからだ」(エリソン氏)

 Oracleは業界標準に準拠しているのに対して、salesforceのアプリケーションは基本的に独自のプログラミング言語「Apexコード」で作成している。つまり、Oracleとsalesforceのクラウドは相互運用性に欠けているというわけだ。「salesforceは、ユーザーは自社のクラウドの中だけにいてくれと思っている。これは『ホテル・カリフォルニア』のようなもので、チェックインしたら最後、決して立ち去ることができないのだ」と皮肉を述べた。

 さらに、「クラウドで有名なある人物が“偽りのクラウドに注意しろ!”と話している」と、過去のベニオフ氏の発言を引き合いに出し、「salesforceのクラウドは偽物で、Oracleのクラウドこそが本物だ」とばっさり切り捨てた。

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