いま改めて考える「日本企業のグローバル化」

グローバルビジネスを支えるIT部門とパートナーの役割とは? IT系メディアが議論(2/3 ページ)

» 2011年10月17日 12時05分 公開
[ITmedia]

難題を乗り越られる存在に

 「業務システムの標準化」は、既にグローバル展開をしている企業が直面する大きな課題になっている。だが、これからグローバル展開をしようとする企業は、これ以外にも多くの課題に直面することになる。朝日インタラクティブ CNET Japan編集長の別井貴志氏は、「最近では数多くのソーシャルゲーム関連企業が海外進出を進めている。しかし、簡単ではないようだ」と話す。

photo 別井氏

 「進出先の通信やネットワークの環境を十分に把握できないことや、現地顧客に対する適切なサポート方法が分からないといった課題を抱えている。自社だけで取り組むのは難しいのでベンダーやコンサルティング会社の協力を求めることになるが、“こういう課題をどこに相談すれば良いかすらも分からない”という声が頻繁に聞かれる」(別井氏)

 このような企業が仮にクラウドサービスの利用を検討したとしても、その理由は「安そうだから」といった全く戦略性のないケースが散見されるという。「失敗から学んでいくという考え方もあるが、実際には失敗して海外から撤退したケースが山ほどある」と指摘している。

 舘野氏も、実際に現地に赴いて初めてインフラ事情の悪さを知ったという話をITRの顧客企業から聞く機会が多いという。「海外のインフラ事情を日本で収集することが難しいのではないか」というのが同氏の見方だ。

 「これはメディアにとって反省すべき点になる」と、アスキー・メディアワークス TECH.ASCII.jp編集長の大谷イビサ氏は話した。同氏によれば、2001年に発生した米国での同時多発テロを契機に、メディアによる海外取材の機会が大幅に減っている。「われわれメディアが海外の事情を現地から十分に発信できていない」という。

 海外進出を目指す企業は、やはり自らの手で情報を集めていくべきか――。この点について、「パートナーとなるICTベンダーの存在に注目してはどうか」と星野氏が提起した。

photo 星野氏

 「通信インフラでは、進出先の“ラストワンマイル”のような部分を現地の通信事業者に任せざるを得なくなるだろう。例えば、ベトナムの地方都市なら何日間で通信回線が開通できるかといったことは、実際に現地にいないと誰にも分からない。グローバルビジネスのICTパートナーには、そういった豊富なノウハウが求められるだろう」(星野氏)

 これから海外市場に進出していくという企業も、進出先での通信環境という課題に直面することになるだろう。こうした課題は氷山の一角にすぎないだろうというのが、浅井氏 の見方だ。アジアを中心に海外進出をしている20社ほどの企業とディスカッションを交わし、「ラストワンマイルの問題に加えて、相手国の法規制への対応の難しいことや、現地でサポートしてくれる人材の不足といったトラブルにも直面している」(浅井氏)という実情が明らかになった。

 海外進出を目指す企業がこうしたITに関わる課題を乗り越えるには、グローバルICTパートナーとの関係作りが重要になってくる。舘野氏は、「その前に、企業のグローバル化戦略の初期段階で、IT部門が経営層にITの要件を積極的に発信していくべきではないだろうか」と提起している。

 しかし実際には、海外拠点の立地が決まり、その他のさまざまな条件が決定した後になって、ようやくシステム構築の話が出てくる事例が多いという。「IT部門は経営者のアドバイザーとしての役割をもっと果たすべきではないか」(舘野氏)との見解に、別井氏も「経営戦略の中に入り、“このシステムをこういう理由だからこう作ります”と発言できるIT部門が必要だ」と意見を重ねた。

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