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» 2011年10月21日 10時00分 UPDATE

Citrix iForum 2011 Japan Report:事業継続と多様なワークスタイルを両立するIT基盤の作り方、ユーザーとシトリックスの事例を一挙公開

東日本大震災を契機に、企業の事業継続計画(BCP)に対する取り組みの重要性が改めて認識されるようになった。また、社員の生産性を高めて企業競争力の向上を図ることも課題とされている。その2つの課題をどう解決すべきか――シトリックスが開催したカンファレンス「Citrix iForum 2011 Japan」で数多くの事例が披露された。

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テレワークセンター構想の実現に向けて

iforum001.jpg 日本テレワーク協会 専務理事 井沢晃一氏

 事業継続や多様なワークスタイルを実現する方法の1つが「テレワーク」である。その現状はどうなっているのか。日本テレワーク協会の井沢晃一専務理事が、「テレワーク推進に向けた取り組みについて」と題して講演した。協会では「スマート・ワーク・コミュニティの実現」というビジョンを掲げているという。

 そのために日本テレワーク協会は、1.テレワーク効果の見える化、2.テレワークセンターネットワーク推進、3.テレワーク支援システムの開発、4.在宅テレワーク環境の改革、5.これからの新しい都市づくり、6.テレワーク関連の資格認定、商品・企業認定制度立ち上げ、7.公務員テレワーク制度の提言、8.テレワーク関連の労働法制法改訂、規制緩和、優遇税制の創設提言――を行っていくという。

 井沢氏は、「テレワークは働く場所によって、自宅利用型テレワーク(在宅勤務)とモバイルワーク、施設利用型テレワーク(サテライトオフィス勤務など)の3つに区分することができる」と説明。またテレワークの効果としては、1.事業継続性の確保、2.環境負荷の軽減、3.生産性の向上、4.ワークライフバランスの実現、5.優秀な社員の確保、6.オフィスコスト削減、7.雇用創出と労働力創造――が挙げられるという。

 総務省の「平成21年通信利用動向」によると、企業のテレワーク導入率は、平成19年(2006年)の10.8%から平成21年(2009年)には19.0%とほぼ倍近くに増えた。他方、企業規模別に見ると、資本金50億円以上の企業では49.1%、10〜50億円未満の企業では25.4%で実施されているのに対し、1000万〜3000万円未満では3.6%にとどまっており、「日本全体のテレワーク導入率向上には中小企業への拡大が課題」(井沢氏)とされている。

 日本テレワーク協会は、2011年10月25日〜2012年1月末日まで施設利用型テレワークの拠点となるテレワークセンターの実証実験を行う予定だ。

 「将来、テレワークセンターが日本全国に広がっていくためには、多様な事業者が、多様な形態でテレワークセンターの運営に参入することが必要。その実現のために、テレワークセンターの事業化モデルの構築に必要なデータなどの検証を行う」(井沢氏)としている。同時に、利用企業や利用者にとって、テレワークセンターの果たす役割の重要性についても検証を行うという。

 具体的には、東京郊外に2カ所の「郊外型テレワークセンター」、都心に3カ所の「都心型テレワークセンター」を開設する。「実証実験期間中の利用料金は無料となるので、ぜひ使ってほしい」と井沢氏は述べた。

XenDesktopとXenAppで開発環境をシンクライアント化

iforum002.jpg 大和証券 専務取締役 鈴木孝一氏

 ユーザー企業での具体的な取り組み事例を大和証券の鈴木孝一専務取締役が紹介した。鈴木氏は、2002年から約8年にわたり大和証券グループのシステム刷新に取り組み、その過程で仮想化技術を用いたインフラ統合も主導した人物である。その経験をもとに「開発環境の仮想化推進 ディザスタリカバリー対策」というテーマで講演を行った。

 DR(ディザスタリカバリー、災害対策)を考える上でのポイントとして鈴木氏は、1.キーワードは仮想化・集約化と徹底したペーパレス化、2.システム面ではサーバやディスク装置などのハードウェアを壊さないこと、3.特に「サーバ故障=ディスク故障」にならないようにディスク内蔵型サーバはすぐに切り替える、4.サーバからディスクを独立させて機器を統合、5.インフラは長期利用と共通化を図る、6.クラウドをはじめとするアウトソーシングをうまく使う――の6点を挙げている。

 開発環境の仮想化推進に当たっては、「OA環境より複雑な開発環境でのシンクライアントが使えるのか」「開発拠点のDR対策にもつなげたい」「オフショア(中国)開発でコスト削減を図りたい」といったユーザーからの要請があるという。

 他方、複数にまたがる環境の課題としては「開発資源(ソース)の管理や同期作業が複雑になりそう」「現地開発環境構築、維持が負担」といったことがある。また、環境が遠隔地にあることでの課題として「標準ルール、手順、ツールなどを守ってもらわないと困る」「セキュリティ対策(開発情報漏えい防止)も必要だ」といったことが挙げられている。

 こうしたユーザー側の要請や課題を受け止めつつ、大和証券グループは国内外の開発拠点にシンクライアントシステムを導入。クラウド上のサーバにCitrix XenDesktopやCitrix XenAppを乗せて開発環境を構築した。「シトリックス以外のシンクライアントサービスや製品も検討したが、シトリックス製品が最もWAN回線を安定して利用でき、管理がしやすいことが分かったので選択した」と鈴木氏は述べている。現在、稼働しているクライアント数はオフショアサイトで600〜700台。今後はグループ全体で数千〜1万台を導入する予定だという。

 また鈴木氏は、「プライベートクラウドの環境上でシンクライアントが動いている。PCは日中ずっと使われているが、夜間は使われていないので、その時間帯に、時間がかかる分析のためのシステムなどをサーバ上で動かせるようになった」とも語った。

 ただし、そのためには事前に自社システムを整理することが必要だという。また、整理してもそれが特殊なサーバ上でしか動かないとなれば、夜間に動かせない。その場合はやむなくクラウドベンダーに業務を委託することになるが、鈴木氏は「自社のリソースが空いているにもかかわらず、それをクラウドベンダーに頼むと割高になる」と指摘している。

 その点で、「可能であればOSとアプリケーションを含めて1つのものを全員でシェアするのがいい」という。ストレージの容量も少なくて済む。ただし、ソフトによっては、個別のPCの環境設定の中で動作が不安定になるものがある。

「そのため、アプリケーションである程度まとめられるものについてはXenAppの環境上で利用し、個別に動かさないとパフォーマンスが上がらないものはXenDesktop上で利用する。こうした“二刀流”で大和証券グループの開発環境のシンクライアントシステムはできあがった」(鈴木氏)とのことだ。

仮想デスクトップで東日本大震災でも業務を継続

iforum003.jpg 日本オフィス・システム ITプロフェッショナル・サービス部 中道聡氏

 「BCPベストプラクティス ENEOSグローブ社はこう使う――仮想化デスクトップによるBCP基盤の確立」と題する講演を行ったのは、日本オフィス・システム ITプロフェッショナル・サービス部の中道聡氏。

 同社顧客であるENEOSグローブは、2010年11月16日に会社統合に伴うBCP対策としてのデスクトップ仮想化・サーバ仮想化を含めたIT基盤インフラの刷新プロジェクトに取り掛かった。仮想デスクトップ環境にはXenDesktopとMicrosoft Windows Server 2008 R2 Hyper-Vを採用。プロジェクトは、約4カ月後の2011年2月28日に成功のうちに完了した。

 日本オフィス・システムは、システムインテグレーターとしてENEOSグローブのITインフラ構築に携わったという。

 ENEOSグローブで仮想デスクトップの導入を検討されるきっかけになったのが、2009年に起きた新型インフルエンザの世界的な流行である。この時、同社の社員は自宅待機を余儀なくされ、ビジネスの継続に支障きたす可能性が浮上。早急にBCPを講じる必要に迫られた。

 事業継続が可能なITインフラを構築するに当たっての要件は、1.社外から社内システムへの柔軟なアクセス、2.社外からでも社内と同様のオペレーションで業務が可能、3.セキュリティを確保し、データの持ち出しは禁止――の3つ。これらを可能にするソリューションとして、仮想デスクトップ環境の構築を検討したという。

 「ENEOSグローブがXenDesktopとMicrosoft Windows Server 2008 R2 Hyper-Vを選択した理由は、WAN経由でのパフォーマンスが高いこと、多くのデバイスに対応していること、管理や運用の機能が充実していること、Windows 7に対応していることの4点だった」と中道氏は話す。

 仮想デスクトップ導入による効果は大きく、具体的にはBCP対策、安全な社外からのアクセス、運用負荷の軽減を実現した。そして、「インフラ刷新後の3月11日に東日本大震災が発生したが、業務を継続できた。震災後に一部の社員が出社できなくなったが、自宅のPCから会社のデスクトップ環境にアクセスして必要な業務を行えたとのことだ」(中道氏)。

 またENEOSグローブは、これまで安全性を考慮して社外からのアクセスを許可していなかったという。これも仮想デスクトップ環境ではアクセスするデバイス側にデータが残らないため、機器を紛失した際に情報が漏えいする危険性を解消することができた。

 このほかに仮想デスクトップの導入効果としては、クライアント端末1台ごとに行うアプリケーションのインストール作業でプロビジョニングサービスを利用することによって、一度の作業で端末に一斉に展開できる点があるという。中道氏は、こうした事例を踏まえて仮想化デスクトップの活用を来場者に呼び掛けた。

自社製品と事後分析を計画に生かすシトリックス

iforum004.jpg Citrix Systems アジアパシフィック ITサービス シニアマネジャー ポール・ジョーディソン氏

 ユーザー企業の事業継続をさまざまな製品やサービスで支えるシトリックスだが、同社自身のBCPはどのようなものか。アジアパシフィック ITサービス シニアマネジャーのポール・ジョーディソン氏が紹介した。

 同社のBCPの最大目標は、社員と顧客を含めた関係者を保護し、確実に事業を継続することにある。BCPにおいて必要なシナリオは、被害予想や対応策、行動内容などをリスクに応じて作成している。平時に演習を重ねて社員の理解度を高め、リスク発生(イベント)時にBCPを確実に実行できるよう準備している。そして、イベント後に必ず分析を行い、BCPの有用性を高める作業を繰り返しているという。

 シトリックスの本社がある米国フロリダ州は、年平均11個のハリケーンが来襲する地域。ハリケーンをリスクとするBCPを実際に発動させたこともある。2005年のハリケーン来襲では、同社は5拠点中3拠点のオフィスを1週間以上にわたって閉鎖。社員は3拠点で約1600人に上るが、全社員が自宅や避難所などでXenAppを使って業務を継続した。その後、自宅が被災した社員への融資制度を導入するなどBCPを強化したとのことだ。

 ジョーディソン氏は、BCPの実行において社員の意思決定に必要な情報を確実に伝達する仕組みが重要だとアドバイスする。同社では事業単位で危機対応と連絡調整のチームを置き、さらに全社として危機対応と連絡調整に当たるチームを配置している。チームごとに活動範囲や役割を分担し、相互に連携することで、BCPを円滑に実行させるのが狙いだ。

 社内および社外とのコミュニケーションでは電話メールやインスタントメッセンジャー、携帯電話のショートメッセージ、コラボレーションシステムなど、できるだけ多く手段を利用。関係者に対して情報を配信する(プッシュ)、社員などが自主的に情報を取得する(プル)の両方ができるようにしている。

 BCPのシナリオは、事前準備を重視するものと事後対応を重視するものに大別され、それぞれで常識を超えるような最悪の被害を想定して作成することが求められるという。シナリオの数は必要最小限にし、リスクに応じて内容を追加・修正する。平時はシナリオに基づいた演習を実施し、本番で各人が自ら行動できるよう訓練を繰り返していく。イベント後の分析とともに平時の訓練で得られた知見もBCPに生かしていく。

 BCPを支えるIT基盤はどうなっているのか。ジョーディソン氏によれば、同社では米国と欧州、オーストラリアで複数のデータセンターを運用。自社製品で仮想化した業務アプリケーションや社員のデスクトップ環境をデータセンターに展開し、社員は自身のPCやスマートフォン、タブレット端末などからデータセンターにアクセスして、業務を行っている。データセンター間でのデータのレプリケーションはもちろん、災害時にDRサイトへ瞬時に切り替える体制も完備する。

 IT基盤のDR対策は四半期ごとに見直し、社員の評価も反映している。自社保有のリソースにこだわらず、事業継続性の確保やコスト面などでメリットがあれば、外部のクラウドサービスも積極的に利用している。ここ数年は事業規模の拡大に応じて、DRが必要なアプリケーションの数が増加の一途をたどっているものの、前述した取り組みの成果から、対処すべき課題の数は減少しているという。ジョーディソン氏は、「社員が働く場所とシステムの稼働場所を分離することが最も重要」と語っている。

 東日本大震災が発生した3月11日、シトリックスの東京本社は午後3時半に閉鎖された。翌週は社員の安全を確保するため、170人の全社員が在宅勤務となり、オフィスが再開したのは3月22日のことだった。

 日本の業務システム環境はオーストラリアのデータセンター上に構築され、普段は日本から同センターにアクセスして業務を行う。震災後の在宅勤務でもこの仕組みが特に変わるわけでなく、平時と同じように業務を継続した。営業やマーケティング、総務などの担当者はXenDesktopとWeb会議のGoToMeeting、システムエンジニアやコンサルタントはリモートアクセスのGoToMyPC、ITサービスや顧客サポート担当者は遠隔管理ツールの「GoToAssist」を利用した。

 この時の対応についてITサービス シニア ビジネス システム アナリストの小林義博氏は、「普段と変わらなかった」と話す。同社の業務環境は、どこでも同じように業務ができることに念頭が置かれ、震災後の在宅勤務でそのことが証明された。なお、東京でITサービスを担当するのは、小林氏ともう1人の2人だけとのこと。仮にシステムが社内に構築されていれば2人で全社員のIT環境を支援することは物理的に不可能だった。小林氏は「社員に気を配り、ケアができるだけの十分な余裕を持つことができた」としている。

まずはリモートアクセスから

iforum005.jpg シトリックス・システムズ・ジャパン システムズエンジニアリング本部 西日本SE部 部長 小島薫氏

 まだ十分なBCP/DR対策を構築できていないという企業に対して、シトリックスが提案するのがリモートアクセスだ。平時は社員の生産性を高めるワークスタイルを実現する手段として、非常時には事業継続性を確保する手段として威力を発揮する。同社のリモートアクセス環境をシステムエンジニアリング本部の岡部俊城氏、小島薫氏、河原林剛史が紹介した。

 まずリモートアクセスではネットワークセキュリティの考え方がポイントになる。一般的な企業では「オフィス外」「オフィス内」「データセンター内」の3つの場所でセキュリティを確保し、データを場所の外には持ち出さないというルールを導入している。しかし、シトリックスではオフィスの“外”と“内”のセキュリティルールを一元化している。つまり、データセンターの中にある実際のデータや業務システムをその外側には一切出さないというアプローチだ。

 前述のように、日本での業務の実際のシステムはオーストラリアのデータセンター上にあり、社員はリモートアクセスでシステムを利用する。その様子を岡部氏がデモンストレーションで披露した。社員はまず自社サイトにアクセスして従業員専用ページからワンタイムパスワードも使った二要素認証でログインする。すると、使用が許可されたアプリケーションのリストが表示され、必要なアプリケーションを起動して業務を行う。このアプリケーションが動作しているのは、オーストラリアのデータセンターである。

 なお、こうしたリモートアクセスで気になるポイントの1つが、ネットワーク帯域の負荷だろう。岡部氏はExcelを操作して、何も操作しなければデータの転送量はゼロバイト、簡単なグラフを作成しても毎秒6キロバイト程度であることを紹介し、ネットワークリソースの消費がいかに少ないかを実演した。

 シトリックスでは「BYOプログラム」という制度を導入している。端末購入資金として3年間で一定の金額を社員に支給するもので、社員は好みの端末を購入して業務に利用できるが、ハードウェアや会社でサポートする以外ソフトウェアの保守は社員が自ら行う。しかしBYOプログラムのような制度の導入には、予算の確保や経営層の理解も必要だ。そこで小島氏が勧めるのが、同社で配布しているさまざまなツールの活用である。

 例えば、社員が既に保有しているPCから安全に仮想デスクトップ環境にアクセスする方法として、セキュアブートCDが利用できる。同社サイトから起動用のLinux OSとCitrix Receiverを入手してCD-ROMに書き込む。社員はこのCD-ROMを自身のPCにセットして電源を入れると、Linux OSとCitrix Receiverが起動し、仮想デスクトップ環境に接続できるようになる。社員のPCにアクセス環境が保存されることはない。実質的なコストは、1枚数十円ほどのCD-ROMだけだ。社員の利用環境が変われば、CD-ROMを破棄することでアクセスできなくなる。新たにCD-ROMを作成する手間も少ない。

 こうしたツール以外にも同社ではリモートアクセス環境の構築や運用を支援するツールを、製品にバンドルしたり、Webサイト上で公開したりしている。小島氏は、リモートアクセスでは社員の利用環境に合わせたセキュリティルールを適用していく“スマートアクセス”という考え方を提唱。業務効率や生産性とバランスの取れたセキュリティ確保すべきことが重要だとした。


 このように、既に数多くの企業がシトリックスの製品やサービスを存分に活用して、確実な事業継続を実現するための取り組みを進めている。そして、それらは非常時において役割を果たすだけでなく、平時は社員に多様なワークスタイルを提供する存在であることも見逃せない。セキュリティを高め、組織に活力をもたらし、万が一の際は事業継続のインフラとなる――ぜひ積極的にこうした仕組み作りに取り組んでみてはいかがだろうか。

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提供:シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2011年11月20日


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