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» 2011年10月24日 10時00分 UPDATE

IBM Pulse Japan 2011 Report:サービスマネジメントは、ポスト3.11の日本企業のビジネス価値を高めるか

2011年10月6日に開催された、サービスマネジメントを主題とするIBMのカンファレンス「Pulse Japan 2011」で示されたのは、ITのみならず電力や水をもビジネス価値の源泉として捉え、事業の継続を果たす新世代のサービスマネジメントだ。

[PR/ITmedia]
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joao.jpg 米IBMのバイスプレジデント、ジョアン・ペレツ氏

 「インテグレーテッド・サービスマネジメントの定義について、例え話をしよう」と基調講演の冒頭で話すのはTivoliソフトウェアを担当する米IBMのバイスプレジデント、ジョアオ・ペレツ氏である。「銀行にはカウンターがあり、ホテルにはフロントがあるように、ITをビジネスに用いる企業はコンピューターを管理する。これはいずれも“そこは顧客にサービスを提供する接点”という意味で同義だ」

 だが現在は、ネットワークはコンピューターの世界を飛び出し、これまではIT分野に含まれていなかった分野をも接続しつつある。「スマート化された世界では、すべてがインテリジェントに相互接続される。例えば会場となっているこのホテルには、おそらく数千台のデジタル機器があるだろうが、それらのデジタル機器のみならず、いずれ(エアコンやエレベーターといった)館内設備も統合管理されるはずだ。もはや、ITと非ITの世界に境界はなくなった」(ペレツ氏)

 運輸系の企業に置いては、ITそのものも管理するだろうが、物流ネットワークの最適化もビジネス価値に直結すると言える。ペレツ氏は「ブラジルでは、放牧している牛にRFIDを着けて相互接続し、Maximoで資産管理している事例がある。このネットワークは、農業に従事する200万人もの人が利用している。既にインテグレーテッド・サービスマネジメントは、非IT分野に適用されつつある」と話す。

 「インテグレーテッド・サービスマネジメントの考え方を取り入れれば、すぐにでもコストはペイする」とペレツ氏は自信を見せる。「平均的なサーバリソースの利用率は、いまだ20%から30%に過ぎない。このレートを改善するだけで、設備費も電力費も下がる」

 IBM、そしてTivoliのミッションはITと非ITを統合した新しいプラットフォームを定義することだという。「共に(インテグレーテッド・サービスマネジメント実現の)旅路を行こう。ラスベガス(3月に開催されるPulse 2012)で日本企業の成功事例が多くもたらされることを願っている」(ペレツ氏)

ビジネスとITのギャップを埋める

arakawa.jpg Tivoli事業部の事業部長を務める日本IBM 理事の荒川朋美氏

 ペレツ氏の後を継いで登壇したTivoli事業部の事業部長を務める日本IBM 理事の荒川朋美氏は、日本企業のビジネスサイドとITサイドの意識のギャップを指摘する。「ある調査会社のレポートでは、ビジネス部門がかつてない速度のビジネス環境の変化に対応するため “ITにはより予算を割り当てるべき”としているのに、IT部門は“コストが削減され続けている”“ビジネス部門が要求するサービスを提供できていない”と感じているという結果が出ている」

 その背景として荒川氏は、既存のITは保守運用に掛かるコストや負荷が大きく、新しいことを始める余裕がないという実態を挙げる。「ビジネスとITの意識のギャップをいかに埋めるかがサービスマネジメントの課題だ。ITの働きをどのようにビジネス価値に転換するか、その方法を探求していく」

 まず必要なのは「低コストでフレキシブルなITインフラ」(荒川氏)だという。それはつまり、クラウドということになる。1年半ほど前になるPulse Japan 2010の開催時は「まだクラウドは立ち上がりの時期。企業がパブリックとプライベートの両クラウドを検討する中で、ようやくハイブリッドクラウドというイメージが固まりつつあった段階」だったというが、「今やクラウドはITインフラの中核になった。IBM自身が手掛けた構築実績やクラウド上のトランザクションも大変な勢いで伸びている」(荒川氏)という。

 とはいえ、課題もある。企業ITのすべてが短兵急にクラウド化することは現実的ではなく、「オンプレミスの自社システムとクラウドを、どのようにつなぐかが重要」(荒川氏)。それには「ユーザーがオンプレミスとパブリックを意識する必要がないシステムにする必要がある」という。

 1つの解として荒川氏が提示したのは、イベントと同日に発表した「Service Management Extension for Hybrid Cloud」である。これはTivoli Monitoringの機能によって、物理と仮想サーバを一元監視できるほか、Tivoli Service Automation Managerを通じオンプレミスとパブリックを同一プロセスでリソース配備できるようにするエクステンション。オンプレミス側のリソースが不足した場合に自動的にパブリックにリソースを割り振ったり、Tivoli Directory IntegratorによってLDAPとパブリックのユーザー情報を同期したりできる。既存のTivoliユーザーはWebからダウンロードし、無償で利用できるという。

ポスト3.11におけるサービスマネジメントが進む道

 荒川氏はここで話題を変える。「今年、日本では、ITの価値観を変える出来事が起こった。東日本大震災が企業ITにかかわる人々に与えた衝撃は大きい」

 もともとクラウドは日本をはじめとするアジア地域での支持が高かった。その要因はコスト削減である。しかし震災を受けて「コスト削減ではなく、事業継続とその先にある新たなビジネス価値創造の手段として注目されている」(荒川氏)という。

 ここで荒川氏はある自動車メーカーの事例を紹介する。「1台の自動車は4万点にものぼる部品で構成されている。でも震災でパーツのサプライヤーが被害を受け、サプライチェーンが寸断してしまった。もちろん、予備のサプライヤーも設定していたが、サプライヤー自身が他の(震災被害を受けた)サプライヤーから部品を調達しているケースも多かった」

 自動車メーカーからは、3次店、4次店のサプライチェーンは見えていなかったといい、「実際には、バックアップになっていなかった」と荒川氏は指摘する。

 ビジネスの価値を高めるには、事業の継続が必須条件となる。「今回のケースで言えば、サプライヤーを確保するとともに、それがどのようにつながっているかを可視化することが重要だった。ITのネットワークだけでなく、非ITのサプライチェーンも含めダッシュボードで把握できるか否かが、ビジネス価値の向上につながる」(荒川氏)

 サービスマネジメントがビジネス価値に直結している例として荒川氏は、インドの大手通信事業者バーティ インフラテルを挙げる。同社はインド18州に実に3万以上もの通信塔を保有しており、個々の通信塔には、自社のものを含め携帯各社の設備が相乗りしているという。「ここで困難なのは、各社との間で結んでいるSLAが異なること。当初はマニュアルで管理していたが、それをTivoliソリューションで可視化し、自動化した」(荒川氏)

 言うまでもなく、通信塔には物理とIT、それぞれの資産価値があるが「両者のイベント監視を、TivoliのMaximoとNetcoolで一元管理している。上がってくる情報が単なるIPアドレスであっても、どの通信塔からか? どのキャリアのものか? といった構成管理情報にひもづけて、ビジネス視点の意味あるデータに置き換えられる」(荒川氏)

 サービスマネジメントの革新により、その管理対象はITのみならず、電力や水、物理施設といった社会インフラに拡大している。「Smarter Planetを掲げるIBMは、社会インフラ全体を資産と認識し、ソリューションを提供していく。紹介した事例を皆さんのビジネスモデルに当てはめ、次のサービスマネジメントについて考えてみてほしい」と荒川氏は聴衆に呼び掛けた。

「IT運用管理では、ビジネスの変革に対応できない」

iwamura.jpg 日本IBMでITサービスマネジメントのエバンジェリストを務める岩村郁雄氏

 荒川氏による呼び掛けをより具体化する形でブレイクアウトセッションを実施したのが、日本IBMでITサービスマネジメントのエバンジェリストを務める岩村郁雄氏だ。岩村氏は、従来からIT運用管理として実施されてきた枠組みでは、ビジネスの変革に対応できないと主張する。

 「サービスマネジメントとは、ITサービスと社会インフラの相乗効果を最大化すること。そもそも企業のサービスは、大なり小なり、道路や電力、水といった社会インフラを利用して提供されている。だから企業は社会インフラの利用を最大限に効率化しなければならないし、インフラの提供者(行政など)はその継続性を最大限に担保しなければならない」

 ITを止めないだけの情報システム部門から、インフラを包含して価値を生み出すサービス実行部門になるために、人・プロセス・技術をサービスの形で提供できる組織としていくというのが岩村氏の提案だ。だがそこには課題もある。

 「既にシステムはサイロ化しており、それぞれ異なる運用管理が求められる。そのため本番稼働したシステムは容易に変更できず、リソースの標準化が進まない。結果としてますますサイロ化が進み、個別最適化した運用手順がそれぞれ確立するという悪循環がある」(岩村氏)

 「だが」と岩村氏は話す。「ビジネス部門は、事業継続や変化への対応力、グローバル化、スマートデバイスの活用といった困難な課題に取り組んでいる。情報システム部門も、システムが硬直している中でも変革に取り組む必要がある」

 そのために有効な目的設定として岩村氏は「ITサービスの構成要素のコントロール」「手順の自動化(電子化、ワークフロー化)」「ビジネス、インフラ状況の可視化」の3点を聴衆に提示した。

サービスマネジメントがもたらす現実解

shiseki.jpg 日本IBM 理事の紫関昭光氏。IBM Smart Business Cloud - Enterpriseを所管する

 当日は、サイロ化しがちなシステムの最適化に悩む聴衆にとって現実的なソリューションがいくつか紹介されている。IBMのパブリッククラウドサービス「IBM Smart Business Cloud - Enterprise」を所管する日本IBM 理事の紫関昭光氏は「プライベートクラウドに比べて、パブリッククラウドの利点はイニシャルの投資がないということ」と話す。

 実際、IBMのクラウドも「使用しない限り、契約しても費用は発生しない。従来からのIBMユーザーがとまどってしまうくらい」だという。

 クラウド導入には戦略が必要だ。だが紫関氏は「簡単に始められるのがパブリッククラウド。まずは使ってみてほしい。従来は、初期投資の高さゆえに実現できなかったビジネスアイデアも、パブリッククラウドを利用すれば実現できる。不確実性の高い世の中でも、新しいビジネスにチャレンジしてほしい」

maeda.jpg 日本IBM Tivoli事業部の前田昇平氏

 同時に、日本IBM Tivoli事業部の前田昇平氏は、ストレージの最適化という観点から聴衆に助言を与える。「多くの企業では、ストレージを余らせている。それはディスクフルを恐れて多めに買ってしまうからだ」(前田氏)

 本当は、必要な時に必要なだけストレージを利用できる環境が望ましい。そもそも容量対価格比の向上が著しいストレージ製品の“まとめ買い”は高くつく。だがシステムごとに調達時期がばらついたり、異なる部門の予算で調達したストレージは利用できなかったりという事情で、「企業レベルの無駄が生じているのが現状」(前田氏)だという。

 「そこで提案したいのが、プライベート型ストレージクラウドだ」と前田氏は話す。IBMでは、ストレージの仮想アプライアンス「System Storage SANボリュームコントローラー」やストレージの一元管理ソフトウェア「Tivoli Storage Productivity Center」を通じ、その構築を支援できるという。

 「IBMのソリューションでは、高いスキルがないと理解困難だったSANスイッチのトポロジーを視覚化できる。ストレージのマルチパスI/Oも一元管理でき、エクセル管理からの脱却を果たせる」(前田氏)

 「ユーザー環境のストレージ最適化を支援する過程で、ボリュームに相当の空きがあったり、ネットワークに以外と負荷がかかっていなかったりして、ユーザー自身が驚くケースも多い。気軽にIBMに相談してほしい」(前田氏)


 本稿は、基調講演の荒川氏によるコメントをもってまとめとしたい。「当初ITの管理から始まった運用管理が、社会のインフラをも支えるサービスマネジメントに進化した。これからのIT部門には、ビジネスの観点からITを把握することが求められる。サービスマネジメントに取り組む企業を、IBMは全力で支援したい」

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提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2011年12月15日

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