「RDBやAPサーバは品揃えしない」―― 日本HP幹部が明言ニュース解説 日本HPが統合運用管理製品を発表

統合運用管理ツール群の最新版投入を機に、日本HPのソフトウェア事業責任者が語ったHPのソフトウェア事業戦略とは――。

» 2011年10月26日 08時00分 公開
[松岡功,ITmedia]

事業ポートフォリオがほぼ完成

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が10月25日、統合運用管理ツール製品群の最新版となる「HP Business Service Management 9」を発表した。ITの構成情報と稼働状況をリアルタイムに可視化し、監視と分析の自動化を促進するのが最大の特徴である。

 製品群の内容はすでに報道されているので、関連記事などを参照いただくとして、ここでは同日の発表会見で日本HP執行役員HPソフトウェア事業統括の中川いち朗氏が語ったHPのソフトウェア事業戦略に焦点を当てたい。

HPのソフトウェア事業のポートフォリオ(クリックで拡大)

 中川氏は会見の最後にHPソフトウェア事業のポートフォリオ(写真参照)を示して、「今回の運用管理分野の新製品投入によって、HPソフトウェア事業のポートフォリオは、ほぼ完成した形になる」と語った。

 中川氏の説明によると、HPソフトウェア事業の柱となるのは、運用管理をはじめ、アプリケーション・ライフサイクル管理、情報管理、セキュリティといった分野だ。そして、これらを生かしてIT利用の全体最適化を図るエグゼクティブ・スコアカードと、これらを支えるサービス・サポートを組み合わせた形でポートフォリオが形成されている。

 具体的な製品(最新版)は、写真にもあるように、日本ではほとんどが今年に入ってから投入されている。そうした勢いもあってか、「今年度、HPのソフトウェア事業はグローバルで前年度比およそ20%増で推移しているが、日本はそれを上回る伸びを示している」(中川氏)との好調ぶりだ。

RDBやAPサーバを品揃えしない理由

 そこで、HPソフトウェア事業のポートフォリオがほぼ完成したという中川氏に、HPにとって最大のライバルであるIBMのソフトウェア事業と比べて、このポートフォリオで十分に戦っていけるのか、を聞いたところ、こんな答えが返ってきた。

 「最近ではHPもIBMも、事業のスピードを買うためにソフトウェア企業を買収しながら、ポートフォリオを広げてきているが、カバーしている分野だけをみるとIBMのほうが広いといえる。IBMにあってHPにない分野としては、リレーショナルデータベース(RDB)やアプリケーション(AP)サーバなどが挙げられる」

 「HPもIBMと同様、RDBやAPサーバを品揃えするという選択肢もあったかもしれないが、現時点で品揃えしていないのには明確な理由がある。それは、RDBやAPサーバといった領域は今後、オープンソースの台頭も合わせてコモディティ化していくとみているからだ」

 「コモディティ化していく分野で製品自体に付加価値を持たせ続けるのは難しく、これからはむしろ、それを生かしたサービス品質の高さが求められる。そこはHPも注力していく。一方で、今後もますます付加価値が求められるとみられる分野にHPはフォーカスしている。それが、この事業の後発であるがゆえの差別化戦略ともいえる」

 HPが現時点でRDBやAPサーバを自ら品揃えすることはない――中川氏はこう明快に語った。

 実は、今年に入ってから、RDB最大手のOracleに対抗する意味合いもあって、HPが有力なRDBベンダーを買収するのではないか、との憶測が業界の一部で流れていた。その意味でも中川氏の会見での発言は、新製品投入とともに、ニュースである。

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