いま改めて考える「日本企業のグローバル化」

グローバルICT討論会が開催、メディアの論客が示した「グローバルICT」の行方(2/2 ページ)

» 2011年11月14日 10時00分 公開
[真野祐樹,ITmedia]
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グローバル企業が意識すべきクラウドの可能性

アスキー・メディアワークスTECH.ASCII.jp編集長の大谷イビサ氏

 ICTのグローバル化と関連性が深い技術やソリューションといえば、クラウドが真っ先に挙げられることが多い。

 星野氏はカシオ計算機、ファーストリテイリング、シスメックスといった企業が積極的にグローバルで活用するシステムにクラウドを導入していると指摘する。また、大谷氏はグローバルで活用するクラウドに変化が起きていると話す。

 「数年前はレンタルサーバやホスティングの延長でクラウドをとらえる企業が多かった。しかし、幾つかのクラウドサービスを使い分けて活用する企業が増えつつある。プライベートクラウドとAmazon EC2を相互に使うとか、クラウド間接続を盛んにやろうといった動きも出てきている。こうしたユーザーの動きに合わせてサービス提供側もデータセンター間、事業者間の障壁を無くして、システムの移行などを簡便にしていく動きが出始めた」

 一方でクラウド導入のメリットをなかなか享受できていない企業もあると、別井氏は指摘する。

朝日インタラクティブ CNET Japan編集長の別井貴志氏

 「ハードウェアのコストを削減できたが、運用コストはあまり下がらなかったという企業がまだまだ多い。当社の『ZDNet Japan』の調査でもその結果が表れている。まだまだコスト面でのメリットを追求する傾向が強い。クラウド活用には機動性が高く、快適なバックエンドシステムを利用するというメリットもあるのだが……」

 浅井氏は、クラウド活用から企業が新たなビジネスチャンスを生み出す可能性について言及している。

 「企業間、拠点間のデータのやり取りなどをメインフレームで行っていた企業が、拠点のサーバをつないで3極体制で行うようになった。いまや中央集権的なネットワークではないアメーバ型のネットワークに変化しようとしている。トヨタ自動車などもそうした動きを見せている。これは、例えば3極以外の拠点同士でビジネスを展開したり、新しい分野のビジネスパートナーとの間で情報のやりとりが進行しているからだ。そうした環境を構築することにクラウドが適している」

 星野氏も続けて指摘する。

 「クラウドのメリットは、デバイスを問わない、n対nのコミュニケーションに非常に適しているといったことだ。トヨタ自動車は自動車をクラウド端末にしようとしている。クラウドがさまざまなネットワークにつながっていくことで新しいビジネスが生まれつつある」

 グローバルICTを進化させる上でクラウドは欠かせない技術であり、同時にビジネスチャンスを生み出す技術としてとらえるべきだということだろう。それでは、グローバルICTを展開していく上でどんなパートナーを選択していくべきなのか。ここで舘野氏は事前に行ったアンケート調査の結果を示した。そこではグローバルを前提にすれば、コストが安い、パートナー企業の財務の健全性などが重視されている。また一方で、上流のコンサルティング力が重視されていることも注目された。

 これについて浅井氏は次のように述べた。

 「ビジネス視点で話をすると、IT部門から見れば、ITガバナンスに対してどれだけ貢献してくれるのかということがパートナー選びのポイントになると思う。ITカバナンスをどこまでサポートしてくれるのか、運用監視だけでいいのか、ユーザーにとって耳の痛いことも指摘し、解決策を提案する。判断材料になるデータをどこまで提示できるかといったことも挙げられるだろう」

 こうしたニーズを満たすには、単に日本的な「おもてなしの精神」に基づいたサービス力だけではない能力が求められると、その他の登壇者からも指摘がなされた。そのためには、少なくともグローバル企業にとってICTガバナンスはどうあるべきか、という根本的な問いに答えられる専門集団でなくてはならないということだろう。

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