数字や用語の意味を知る――地震災害編萩原栄幸が斬る! IT時事刻々(3/3 ページ)

» 2011年11月26日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]
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3.助けを求めている方には積極的に関与しよう

 これも難しい問題ではある。都会にいて、平時なら他人との接触をなるべくしないようにすることが、自分の身を守る術の1つであることが半ば常識であるからだ。しかし緊急時は、それでは絶対に後で後悔すると筆者は感じた。もしビルが倒壊している場所に遭遇したら、自分の安全を確保できる範囲で積極的に被災者を助けてあげたい。

4.自分の命を大事にしてほしい

 よくテレビで、「この方の行為は称賛に値する! 勲章ものですよ!」という場面を見る。例えば、飛行機が川に墜落して多数の乗客が水の中に投げ出される。そこに救援ヘリが到着する。皆われ先にと、手を差し出す。そこにある若者が綱を取ると、周りの方に譲る。次も、次も……。そして、ついにその若者は力尽きて川の底に沈んでいく――確かにすばらしい行為である。でも、その若者を見て筆者が感じるのは、「家族のことを考えての行動なのか?」というものだ。

 案の定、彼には彼の家族がある。素晴らしい未来もある。妻もいる、赤ん坊も。残された家族のことを考えるなら、その行動は疑問に思えるのだ。仮に勲章を貰っても、家族にとってはかけがえのない夫、お父さん、実家にとっては息子が生きて無事でいる方がはるかにいいに決まっている。

 筆者にも大学生の息子と娘がいる。だから余計に思うのだ。もし災害時にこういう場面に遭遇したら、息子や娘に「確実に自分が助かる範囲であれば、救援はいくらでもしなさい」と言いたい。だが、彼らが自分を犠牲にしたら、残された父親(筆者)はその救援活動を恨むに違いない。「なぜ、生きてくれなかったのか?」「他人の笑顔と引きかえにしたお前の人生と私たち両親の悲劇は本当にバランスがとれるのか?」――筆者は一生考えるに違いないのだ。

 ぜひ“バランス”の取れた救援活動をしていただきたい。もし若者(仮にあなたとしよう)が筆者のような“おじいさん”を助けるのなら、あなたの安全性を確保できる範囲で構わない。「若いあなたの人生を優先させなさい」とその場で呼び掛けたい。でも筆者の心の片隅には「助かりたい」という気持ちもあるし、もしかしたら見苦しいまでに「助けて!」と連呼するかもしれない。人間とは、とても弱い生き物なのだ。こういう微妙な問題は本当に難しい。

萩原栄幸

一般社団法人「情報セキュリティ相談センター」事務局長、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、ネット情報セキュリティ研究会相談役、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格した実績も持つ。

情報セキュリティに関する講演や執筆を精力的にこなし、一般企業へも顧問やコンサルタント(システムエンジニアおよび情報セキュリティ一般など多岐に渡る実践的指導で有名)として活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。


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