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» 2012年01月12日 08時00分 公開

松岡功のThink Management:外に向いて仕事をしていますか

この新連載コラムでは、企業をはじめとした組織・集団、ひいては個人におけるマネジメントのあり方について、ジャーナリストの視点で多様な見方を提供したい。

[松岡功,ITmedia]

警察の失態にみるマネジメントの問題

 まずは最近の出来事から。1995年2月に起きた東京の目黒公証役場事務長拉致事件で警察庁から特別手配されていたオウム真理教元幹部の平田信容疑者が2011年12月31日深夜、警視庁丸の内署に出頭した。

 報道によると、平田容疑者は丸の内署に出頭する前、東京・霞が関の警視庁本部を訪れ、庁舎前で警備のために立っていた機動隊員に「平田信です。出頭してきました」と名乗り出ていた。

 だが、隊員は人相などから本人ではなく「悪質ないたずら」と判断、「近くに警察署があるから」と同署に向かうよう指示。平田容疑者はさらに「特別手配の平田です」と言ったが、聞き入れられなかったという。

 その後に出頭した丸の内署でも、外にいた警察官に名乗ると「うそ」と驚かれ、「ほら、背が高いでしょう」と言うと「本当にそうなの」と署内に入れられたという。

 なんとも間の抜けたやり取りだが、再び逃走するおそれもあっただけに見過ごせない話である。警察庁長官がその後の記者会見で、「今後こういうことのないように、基本にのっとって緊張感をもって職務にあたるよう指導を徹底したい」と述べているが、再びこのようなことが起こらないように取り組んでもらいたい。

 さて本題。筆者にはこの出来事における根本的な問題が、組織マネジメントの観点から、警察だけでなく多くの企業にもはびこっているのではないかと思えた。この出来事では警備を行っていた機動隊員や警察官が矢面に立ったが、緊張感のなさは当人たちだけの責任ではなく、むしろマネジメントのあり方にあると考える。

 では、根本的な問題とは何か。端的にいうと「外に向いて仕事をしているか」である。どういうことか。それを紐解く意味でも、これまでさまざまな取材で得た話を整理しながら、マネジメントの真髄について筆者なりにまとめておきたい。

明日から「マネージャー」になる方法

 マネジメントという言葉には最適な訳語がない。通常「管理」と訳されるが、管理の英訳は「コントロール」である。日本ではマネジメントとコントロールという言葉の意味があいまいなまま使われているが、欧米では両者は峻別されている。実はこの2つの言葉の意味の違いに、マネジメントの真髄がある。

 では、企業における2つの言葉の意味の違いを説明しよう。マネジメントとは、経営ビジョンや方針に基づいて事業戦略・計画を策定し、具体的な活動のコントロール・オペレーションまでを行うことである。

 一方、コントロールとは、策定された事業戦略・計画に沿って、具体的な活動のコントロール・オペレーションのみを行うことである。

 これはすなわち、コントロールが定められたことだけを正しく行っていればよいという「Do Things Right」の考え方であるのに対し、マネジメントはまず正しいことを求めてそれを実行するという「Do Right Things」の考え方で、発想がまったく逆だ。

 たとえ「管理」という訳語が同じでも、コントロールではなくマネジメントを行っていくためには、この「Do Things Right」(事を正しくする)から「Do Right Things」(正しい事をする)への発想の転換が必要なのである。

 ちなみに、同様にあいまいな意味として一般的によく使われている言葉に、「マネージャー」と「リーダー」がある。これも先ほど述べたように、マネージャーは事業戦略・計画の策定からコントロール・オペレーションまでを担うのに対し、リーダーは方向性を示してその方向に全体を引っ張っていく能力、いわゆるリーダーシップが求められる。

 この2つの言葉の意味は違うが、リーダーシップはマネージャーにとって重要な資質である。

 最後に、ある経営者から聞いたマネージャー育成法を紹介しておこう。しかも日本語で言うところの管理職者に、明日からマネージャーになってもらう端的な方法である。

 それは、オフィスの机の配置で、例えば部員たちの机が並んでいる正面に、部長が大きな窓を背にして部員たちのほうを向いて座っているとしたら、明日から部員たちに背をみせて大きな窓の外に向かって座ってもらうのである。

 これで内向きの管理職者から、顧客をはじめ外に向かってみんなを引っ張っていくマネージャーに変身だ。この発想、できればトップダウンではなくボトムアップで出てくるのが望ましい。まさしく「外に向いて仕事をする」ための1つの処方箋といえる。

 ということで、この新連載は隔週ペースで、マネジメントのあり方をさまざまな角度から考察していきたい。ご興味をお持ちいただければ、ぜひお付き合いいただきたい。

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