ソーシャル熱に潜む落とし穴、失敗しないビジネス変革の方法とは?Lotusphere 2012 Orlando Report(2/3 ページ)

» 2012年01月17日 12時08分 公開
[浅井英二,ITmedia]

ソーシャルで仕事のやり方を変える老舗企業のBayer

Bayer MaterialScienceのCIO、デ・ルワ氏

 この日、ユーザーのトップバッターとしてステージに招き上げられたのは、アスピリンで知られるドイツのBayer。創業は1863年という化学および製薬会社の老舗だ。グループの従業員は11万人、売上高は350億ドルに上る。

 「Bayerでは多くの専門家と知識が世界中に散らばってしまっていた」と話すのは、Bayerの一部門として化学素材を開発・製造するBayer MaterialScienceのCIO、クルト・デ・ルワ氏。

 Bayer MaterialScienceでは、自動車用のポリカーボネートなどを主力製品としているが、地球環境に優しい素材やナノテク素材の開発でライバル企業としのぎを削っている。2010年に「IBM Connections」を採用、わずか18カ月でパイロット導入から本番導入に漕ぎ着けた。ソーシャルソフトウェアが根付く下地があったのかもしれない。秘訣はソーシャルによって考え方や仕事のやり方を変えたことだという。

 「早くも企業文化の一部になりつつある」とデ・ルワ氏。

 そのConnectionsは、2010年秋に日本でもリリースされたバージョン3.0において、「人」や「コンテント」をレコメンドしてくれるアナリティクス機能を搭載し、その後も改良を重ねている。今年後半のリリースに向けて開発が進んでいる次期バージョン(おそらく4.0)では、「Activity Streams」も実装される。

 このActivity Streamsは、次世代のコラボレーション環境を研究する「Project Vulcan」で採用検討が進められ、既に多くの場でデモされてきた。Atomフィードを拡張したもので、Twitter、LinkedIn、FacebookといったソーシャルメディアコンテントやSAPのような基幹業務システムのデータも統合する。こうした標準技術の採用によって、ISVらはConnectionsとシームレスに統合した「埋め込み式」のアプリケーションを開発することができるという。

 この日のステージでは、Trilogのプロジェクト管理ソフトウェアや、お馴染みのSAP Business Suiteがデモされた。例えば、新しい受注の承認を求めるリクエストがActivity Streamsに現れ、クリックするとユーザーはConnectionsから離れることなく承認できるようになるという。現在、こうしたリクエストの多くは電子メールで飛び交っているが、対応するアプリケーションが増えれば、環境は大きく変わるだろう。

 オープンなソーシャル標準による「疎結合」はConnectionsだけにとどまらない。メッセージとコラボレーションのためのLotus Notes/Dominoにもこれまで「Notes NEXT」と呼ばれていた「Social Edition」の開発が進んでいる。

 やはり電子メールが中心の環境ながら、Activity Streams標準に対応し、埋め込み式のアプリケーションによってNotesの受信ボックスから離れることなく、さまざまなワークフローを処理できるようになるという。

 新しいNotesでは、Webブラウザへの「プラグイン」だけでNotesクライアントのすべての機能にアクセスできるのも大きな改良点だ。依然として根強い人気を誇るNotesだけあって、そのデモにはこの日一番の驚嘆と拍手が贈られた。

 Notes/Dominoの開発責任者として日本の顧客らにもよく知られているケビン・キャバナー副社長によれば、斬新な機能が盛り込まれているが、顧客が望む一貫性を重視し、現行のNotes/Domino 8.5.3に続く「Upgrade Pack」8.5.4としてリリースが予定されているという。

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