“コンプリート”なミドルウェア製品に注力、IBMの2012年ソフトウェア事業戦略

日本IBMが2012年のソフトウェア事業に関する戦略説明を実施。セキュリティ事業部門も新たに設立した。

» 2012年01月24日 08時10分 公開
[國谷武史,ITmedia]
ヴィヴェク・マハジャン氏

 日本IBMは1月23日、ソフトウェア事業に関する2012年の戦略説明をメディアやアナリスト向けに実施した。ミドルウェア製品ビジネスの推進と、重点領域として掲げる「ビッグデータ」「ソーシャル」「セキュリティ」に注力していくという。

 ソフトウェア事業は、1月から常務執行役員のヴィヴェク・マハジャン氏が担当。同氏はミドルウェアビジネスの方向性を紹介する中で「コンプリート」という言葉をたびたび用い、企業が直面する課題として「データの増大」「グローバル化」「価値創造」「人材活用」「セキュリティリスク」を挙げた。IBMはこれらの課題の解決に必要なほぼ全てのミドルウェアを提供するという。

 マハジャン氏がこう語る背景には、同社の独自調査によれば、約3兆5000億円規模とされる国内ミドルウェア市場のうちパッケージが占める割合は800億円程度であり、カスタム開発が大半を占める実態があるという。上述の課題には「変化へ迅速に対応できる“真のエンタープライズアーキテクチャ”によるシステムが必要」(同氏)となるが、「ベンダーのミドルウェアポートフォリオはデータベース向けや運用管理向けなど各社で領域が異なる。複数ベンダーの製品で対応せざるを得ないのが現状」としている。

 「(米Gartner調査によれば)ミドルウェア市場におけるIBMのシェアは二番手の約2倍。150以上のオープンソースプロジェクトに参加し、5万人の開発者を擁する」とマハジャン氏は実績を紹介。IBMの広範なミドルウェアポートフォリオを利用することで、国内ユーザー企業は既存資産を生かしながら上述の課題を解決するためのITインフラを構築できると述べ、競合優位性を強調した。

ソフトウェア製品群とミドルウェアの活用事例(右)

 また、重点として挙げた3領域のうち「ビッグデータ」に関しては、多種・大量データの活用が企業の成長や変革につながるとして、構造化/非構造化データや高い頻度で変動するデータをリアルタイム分析するための包括型ソリューションを「InfoSphere」や「Netezza」製品などによって展開する。

 「ソーシャル」については、同社が標榜する“企業としてのソーシャル”の普及に取り組む。“企業としてのソーシャル”とは、管理性やセキュリティを伴った形で情報や知見を企業や組織全体として共有・活用するものであり、「国内企業でこれを実現しているケースはあまりない」(マハジャン氏)という。同氏は、プロジェクト管理のRational Team ConcertとIBM Connectionsの連携で特定の技術に詳しい人材を社内などから探し、プロジェクトへの協力を求めるといったソリューション事例を紹介した。

 「セキュリティ」では同社は、1月1日に営業や技術、マーケティングなど25人体制での「セキュリティ・システムズ事業部」を発足させた。これまで製品ブランドごとに分散していたセキュリティ関連商材を同事業部に集約し、「IBM Security」のブランドで提供していく。「2011年にサイバー攻撃が多発したことを受け、IBMとして一貫性のあるセキュリティソリューションを提供してほしいという顧客の要望が強まったため」(マハジャン氏)という。

 マハジャン氏はこれらの戦略を展開する上で、パートナー支援を強化するとも表明。大手システムインテグレーターとミドルウェアビジネスの協業の推進するほか、ディストリビューターが収益機会を広げられる支援策などを提供していくという。「これからの20年は“ソフトウェアの時代”と言える。パートナーとより密接した関係が不可欠」とマハジャン氏は語っている。

パートナー支援の方針

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