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» 2012年03月02日 08時00分 UPDATE

えっホント!? コンプライアンスの勘所を知る:不祥事からの脱出、2つの事件から見えた成否を分けるもの (1/2)

企業での不祥事が発覚するとその企業の本質が見えてくる。不祥事から立ち直る企業とそうではない企業の違いはどこにあるのだろうか。2007年に起きた石屋製菓と船場吉兆の事件から紐解く。

[萩原栄幸,ITmedia]

 企業で不祥事が起きると行われるマスコミ発表などを通じて企業の本質が現れる。不祥事における対応はどうすべきか――負のスパイラルから脱するポイントを探ってみたい。

両極端な対応の「石屋製菓」と「船場吉兆」

 2007年8月、北海道の石屋製菓で代表的な菓子である「白い恋人」の賞味期限の改ざん事件が起きた。改ざんされた期間は1カ月程度(後に最大2カ月と判明)だった。この行為は15年ほど前から続いていた。

 そして、その2カ月後の2007年10月、大阪の船場吉兆でも同様の事件が起きた。5つの菓子の消費期限もしくは賞味期限のラベルを張り替えて、期限を改ざんしていた。2つの事件は似ているが、その後に2つの会社は正反対の方向を歩むようになる。

石屋製菓の対応

 改ざん事件の発覚は2007年8月14日。マスコミ報道以前に内部告発による情報提供があったと言われるが、マスコミが大々的に報じたのがこの日であった。発覚当初、社長(当時)は否定したようだが、この事件と前後してアイスクリーム製品から大腸菌を検出したことを公表していないという出来事などが表面化した。社長は3日後の17日に引責辞任を表明。23日に同社にメインバンクである北洋銀行の常務が新社長として就任した。

 さらに創業家の影響を少なくするため、役員5人うち4人を占めた親族が1人(創業家の跡継ぎ)を除いて退いた。辞任した前社長は「今後経営には一切、関与しない」と表明した。

 当初の世間は同社を「北海道の恥」などの酷評をしていたが、発覚からわずか3日での社長辞任という素早い対応と自発的かつ潔い行為によって、だんだんと沈静化していったと思われる。そして、同年11月22日に操業を再開。その途端に商品が売り切れする店舗が続出した。

 不祥事企業としては極めて異例の事態である。操業再開の日、関係者は安堵することができたようだ。

船場吉兆の対応

 石屋製菓と真逆の対応をとったのが船場吉兆であった。不祥事企業はその後にも多々あるが、残念なことに、大部分の企業がこの船場吉兆と同じような対応をとっている。

 2007年10月28日、船場吉兆が経営する岩田屋本館地下2階「吉兆天神フードパーク」において洋菓子のラベルを張り替えていた事件が発覚した。11月1日には、同店の惣菜の一部でも消費期限や賞味期限をごまかし、「吉兆天神店」に流してしたことが発覚した。

 船場吉兆側は当時、一連の不祥事を「パートの女性らの独断によるもの」として組織的な関与を完全否定した。社長は記者会見にすら出席していない。11月9日、今度は船場吉兆本店にてブロイラーを「地鶏」、九州産の牛肉を「但馬牛」と産地偽装していたことが発覚した。16日には大阪府警が船場吉兆に対し、家宅捜索と強制捜査を行った。

 このような状況になっても、船場吉兆はラベル偽装がパートの独断であり、牛肉の産地偽装は仕入れ担当者の独断、地鶏は納入業者が勝手にしたことだと完全に否定した。だがパート従業員の告発で、「全責任はパート従業員にある」という会社作成の報告書に捺印することを強要した事実が明らかになる。納入業者は伝票などの証拠品を提示し、「そもそもうちは若鳥専門店であり、地鶏は一度も扱っていない」と反論した(この業者は100年以上続く老舗であり、新興の船場吉兆より歴史が古い、昔からの若鳥専門店であった)。

 12月10日に女将の湯木佐知子氏ら取締役が会見を開き、初めて経営陣の関与を認めた。女将が小声で指示する言葉をそのまま長男の喜久郎氏が会見場で繰り返し、マイクで全て報道されてしまうという哀れな一面も話題になった。

 12月25日には無許可で梅酒の製造・販売をしていたことを国税局から指摘される。翌2008年1月16日に同社は大阪地方裁判所に民事再生法を申請。湯木佐知子氏が新社長となり、その他の役員は辞任した。1月22日に本店が営業を再開するも、5月8日にお客の食べ残しを使い回していたことが発覚。しかも10年以上に渡り続けていた。

 天ぷらは揚げ直し、アユの塩焼きは焼き直す。刺身のツマは洗い直し、刺身は盛り直す。「もったいない」という感性だったという。しかし、それを正規の値段で密かに提供していたのでは、営利目的と言うしかない。さらに、湯木佐知子社長はマスコミに対して、「食べ残し」ではなく「手付かずのお料理」と表現するように要望している。ここにきて、体裁を取り繕ろうとする神経は尋常とは思えない。

 5月28日、ついに飲食店の廃業届を提出し、大阪地裁に民事再生手続の廃止を申し立てた。6月23日に破産手続きが行われた。

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