ユーザー企業はIBM、Microsoft、Oracle、SAPとどう向き合うべきかGartnerアナリストが提言(1/2 ページ)

4大アプリケーションベンダーの戦略が似通ってきている――Gartnerのデニス・ゴーハン氏はこう指摘する。ユーザー企業は自社のIT課題とベンダーの戦略との整合性に注視すべきだとアドバイスする。

» 2012年03月02日 20時56分 公開
[國谷武史,ITmedia]
Gartner リサーチ部門マネージング バイスプレジデント デニス・ゴーハン氏

 米Gartnerでエンタープライズアプリケーション分野の調査・分析を手掛けるリサーチ部門マネージング バイスプレジデントのデニス・ゴーハン氏は、同分野の大手ベンダーの方向性がユーザー企業にとってリスクになり得ると指摘する。戦略次第で製品やサービスの提供が中止され、既存ユーザーが対応に迫られるといったものだ。ユーザー企業がこうしたリスクを回避するには、ベンダーの戦略や方向性を把握し、それが自社のIT環境にどう影響するかを理解することが重要だという。

 ゴーハン氏が“メガアプリケーションベンダー”とするのは、IBM、Microsoft、Oracle、SAPの4社。同氏によれば、各社は似通った戦略、製品ポートフォリオを展開するようになり、1000億ドル以上の資金を投じて顧客の囲い込み、さらには競合からの奪取を狙う。例えばデータベース分野では、IBM、Microsoft、Oracleが競合しているが、最近になってSybaseを買収したSAPがこれに加わった。

 「ユーザー企業はベンダーの製品や機能に目が向くが、戦略や動きに注目すべきだ。“ベンダーに管理されるか”、それとも、“ベンダーを管理していくか”という視点を持っていただきたい」と同氏は語り、4大ベンダーの戦略の特徴や違いについて次のように説明している。

サービス志向のIBM

 IBMについてゴーハン氏は、「Lotus」や「WebSphere」といった製品ブランドを主役とするビジネスからサービス主体のビジネスに変化し、ソリューションとしてアプリケーションを提供する動きを加速していると分析する。

 「“Smarter Planet”というメッセージを掲げた同社のマーケティングは、非常に上手い。製品ポートフォリオもこれに準じたものになっている」(ゴーハン氏)

 ユーザー企業が留意すべき点として同氏は、IBMの掲げる方向性が将来に渡るものであるかを見極めることだと指摘する。「同社にとって優先度の高いものは大きな収益源であるからだ」といい、同社の製品ポートフォリオがユーザー企業のニーズに合致するかを見ていくべきだという。

 またIBMの買収戦略によって、一部の領域では他のベンダーとの共存関係が競合関係に様変わりする可能性もある。「IBMと他社の関係をグローバルもしくは地域単位で見ていくべきだ」もアドバイスしている。

Microsoftの拡大戦略

 Microsoftについてゴーハン氏は、OSおよびその周辺領域においてパートナーと密接した関係に基づく安定的なビジネスを展開している点に強みがあると評する。モバイルやクラウドといった新たなコンピューティング環境の台頭では既存顧客をつなぎとめる“守りの戦略”となっている。

 さらに、成長戦略に位置付けられるアプリケーションビジネスの拡大が好調だという。特にDynamicsなどの製品が大規模企業の拠点や中規模企業のERPとして採用されるようになり、「大規模向けERPに続く領域でのプレーヤーになった」(ゴーハン氏)

 だがゴーハン氏は、Microsoftのアプリケーションビジネスが、大企業の中枢に浸透していくかという点に不透明さが残るとみる。大企業のコアプリケーション領域はIBM、Oracle、SAPの牙城であり、この“壁”の突破は容易ではない。大企業顧客をグローバルでサポートできる体制をパートナーと構築できるかが焦点になるという

 「Microsoftに関するユーザー企業の相談で最も多いのが、SharePointを大規模展開できるか、また、そうした場合のガバナンス(統制)をどう実現すべきかと、いうものだ」(ゴーハン氏)

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