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» 2012年03月16日 08時00分 公開

えっホント!? コンプライアンスの勘所を知る:うちの会社はスバラシイ? 内部通報“ゼロ件”の恐ろしさ (2/3)

[萩原栄幸,ITmedia]

通報“ゼロ”の意味

 内部通報制度の実態はどのようなものか。筆者は日本の統計情報を見た記憶がないが、米国では業種別の内部通報制度における平均通報件数が公開されている。米国のものではあるが、その数字と筆者が現場で感じる状況と比べてみると、あまり違和感がない。冒頭の経営者がいう「内部通報が年間ゼロ件」の実態には幾つかのケースが予想される。

1.本当にすばらしい企業で通報がなかった

 可能性はあるが、詳細な分析が必要。現場の感覚としては、ほぼ「あり得ない」。

2.内部通報制度の管理者が間違った数字を報告している

 通常の会社なら、幾重にもチェックされているはずなので「過失」はほぼ無く、「故意」の可能性が高い。通報者の告発ですぐに明るみに出る可能性があるが、企業の通報制度の定義によっては「公益」に係る通報のみを有効な通報としている場合もあり(ほとんどの企業は「公益」以外の通報、つまりセクハラやパワハラなども対象にしている)、「有効な通報件数がゼロ」というケースはあり得る。これでは骨抜きになっていると思われても仕方なく、もしその場合は改善を推奨している。

3.企業規模(従業員数)が小さければ標準的な企業でもゼロになる

 米国の数字は従業員数1000人当たりの通報件数であり、そこで10件なら、従業員数10人の企業では0.1件となる。この場合なら、「ゼロ」でも範囲内となってしまうが、個別の分析が必要。

4.「通報者は不利益を被る」と従業員が考えている場合

 従業員が会社に対して不審を抱いているというもので、経験則ではこのケースが一番多い。例え通報があっても、わずかであり、実態が反映されていない。会社と従業員の関係修復が難しく、経営者にとっては大きな改革を伴わないと正常な関係にならない場合が多い。

 冒頭の企業の場合、筆者は内部通報制度にまでは踏み込まなかったが、明らかに(4)のケースである。それにも関らずすばらしい状態だと吹聴しているということは、経営者が誤った判断をしているか、本質を察知しているが対外的には「健全で優良な会社であること」をアピールしているだけなのかは不明だが、現状を「改善しない」という意味においては同じである。あきれた経営者だが、もし読者が経営者であるなら、絶対にこういう行動は取るべきではない。大部分の従業員は会社を成長させ、自分の生活向上のためにも実直になって仕事をしている。それにも関らず、独善者が経営する会社に輝かしい未来はない。

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