“ビッグデータ”が経営を変える

ビッグデータReadyな組織に生まれ変わった巨大企業の取り組みとは“ビッグデータ”が経営を変える(2/2 ページ)

» 2012年03月21日 08時00分 公開
[伏見学,ITmedia]
前のページへ 1|2       

顧客を理解する

 では、こうしたビッグデータ時代に対して、日立はどのような取り組みを行っていくのか。Field to Future Technologyを基盤に、さまざまなデータ分析のためのライフサイクルを回していくとともに(下図参照)、顧客とのつながりを強化し、データ活用における顧客の目的、課題、目標(KPI)を共に作り上げていく。

ビッグデータ利活用への日立の取り組み(出典:日立製作所) ビッグデータ利活用への日立の取り組み(出典:日立製作所)

 とりわけ顧客との関係性は重要だという。なぜなら「何のデータをどういった目的で分析したいかを明確にせずに分析しても良い結果は生まれない。そのためには、顧客の業務現場や目指すものを深く理解する必要がある」と三木氏は説明する。

 例として、三木氏はインターネット検索を挙げる。検索ボタンをただ押しただけで、欲しい答えが得られるわけではない。重要なのは検索窓にどういった内容を入力するかであり、それが分からずして本当に知りたい情報の検索などできないという。

「ビッグデータにかかわらず、日立では現場から上がってくるデータや、実世界から出てくるデータを非常に重視している。良いものを作ろうとしたとき、それに対する本当の課題や問題点を知っているのは現場。現場の真実に裏打ちされたデータこそが価値をもたらすものなのだ」(三木氏)

 また、AI(人工知能)をはじめ、ITが人間を超えるという錯覚があることにも警鐘を鳴らす。

「ITの領分を知れ。あくまでも最終的な価値を判断するのは人間であり、ベンダーもユーザーもそれを再認識する必要がある。ただし、ビッグデータを活用するための裏側のシステムにはITの力が不可欠であるのは間違いない」(三木氏)

 このように、企業のビッグデータを支える基盤技術としてのField to Future Technologyを具体的な形にしたのが、先月リリースしたインメモリ型データグリッド製品「uCosminexus Elastic Application Data store」である。複数のサーバが持つメモリ空間を単一の巨大な仮想メモリ空間に統合するため、大量データの処理が可能になるほか、データをメモリに配置することでディスクアクセスのオーバーヘッドを排除し、高速なデータ処理を実現できるという。

ビッグデータ時代の分析スペシャリストを育てていく

 ビッグデータに対する顧客の期待感はどうか。日立ではビッグデータに関するヒアリングを1年間で100社以上に実施してきた。いろいろな疑問や要求が寄せられた中で、ビッグデータ活用の具体的な検討に入るユーザーが広がっていく可能性を十分に感じているという。

「顧客が気になっているのはやはり成功事例。小さくても良いのでビッグデータを活用した新しいビジネスモデルや応用を発見し、事業成功に結び付ける行為が何よりも大切だし、ベンダーとしても積極的に関与し、多くの成功を作らなければならない」と三木氏は強調する。

 ビッグデータ活用に取り組む人材、いわゆる「データアナリスト」の育成も重要だと考える。日立は分析ツールなどのビッグデータソリューションを提供するだけではなく、日立自身が顧客企業に入り込んでデータ分析や業務コンサルティングを行っていくという。

 一般的にデータアナリストは不足していると言われるが、三木氏によると、狭い部分での分析専門家は決して少なくないという。しかし、幅広いデータが分析対象となるビッグデータ時代においては、全体を把握できるスキルが不可欠だという。そこで、今後必要になってくるのは、そうした専門家を分析内容に応じて適切に配置できるような人材であり、その育成に対しても日立は注力していく。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ