持ち株会社でIT企業を結集、新技術活用に挑む 豆蔵OSHD田中克己の「ニッポンのIT企業」(1/2 ページ)

2006年に持ち株会社へ以降して以来、豆蔵OSHDは積極的にM&Aなどを行うことでグループの陣容を強化している。その狙いは。

» 2012年03月23日 08時00分 公開
[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]

 「持ち株会社化し、規模拡大を図る」。ITホールディングスやJBCCホールディングスなど大手に加えて、中堅・中小IT企業が動き始めた。その1社が豆蔵OSホールディングス(HD)である。荻原紀男社長は数十億円の案件を取れる体制にするため、M&A(企業の合併・買収)などでグループの陣容を現在の約650人から3年以内に約2000人に、売り上げを約3倍の約300億円にする計画だ。

豆蔵OSHDの業績推移(単位は億円)。注)2011年12月に、売上高約30億円(2011年2月期)のJMTを傘下に加えたことで、実質的には100億円近くなる 豆蔵OSHDの業績推移(単位は億円)。注)2011年12月に、売上高約30億円(2011年2月期)のJMTを傘下に加えたことで、実質的には100億円近くなる

規模拡大で、勝ち組に入る

 1999年設立の豆蔵が持ち株会社に移行したのは、2006年10月のこと。その年の3月にJavaなどオープン系技術に強いオープンストリームを子会社化したのを皮切りに、2009年8月にリッチクライアントのアクシスソフトの株式取得(2011年6月に子会社化)、2009年12月にコンテンツ配信などを展開するネクストスケープとIT技術者紹介サイトなどを運営するフォスターネットを子会社化、2011年12月にソフト開発と半導体関連装置保守などのジェイエムテクノロジー(JMT)をTOB(株式公開買い付け)により子会社化する。

 2012年1月には、ソフト開発会社など7子会社(約900人)を傘下に抱えるジークホールディングスの株式を9.5%から24.7%に増やし、持分適用関係会社とした。2010年9月には中国・上海に現地法人、2010年12月にはフィンランドのSymbioとの合弁会社も設立している。

 このように異なる技術をベースに事業展開するグループ各社は、異なる顧客を持つ。オープンストリームはEC事業者、ネクストスケープは音楽配信業、アクシスソフトは運輸、JMTは通信、豆蔵は製造、金融に強いといった具合だ。福岡に本社を置くJMTは大阪や広島、四日市などに拠点を設置する。約1万3000人のIT技術者が登録するビジネスマッチングサイトを運営するフォスターネットはグループ内で必要な人材を確保できない場合、最適なIT技術者を見つけ出し紹介する。各社が補完する仕組みになっているのだ。

 豆蔵OSHDが技術力を持つIT企業のM&Aをしてきたのは、「新しい技術をいち早く取り入れるビジネスを展開する」(荻原社長)ためだ。技術革新の激しいIT業界の中で、中小IT企業が勝ち抜くには最新技術の積極的な活用が不可欠なのである。そこで、「仲間になった各社が力を発揮できる」(荻原社長)よう、持ち株会社が財務や人事、営業などを支援する。グループ各社は技術力や商品力を磨き上げる。そんな体制にするが、「各社は技術的に自由に活動している」(同)。

 ただし、「あたかも一つの会社のような動き方をする」(荻原社長)ために、各社の連携を強める会合を開いている。月2回、グループ会社の社長と営業部長が集まって営業活動などを報告するのがその一つだ。「漏れのない営業をしているのか。技術者の稼働率はどうなっているか」といったことを報告したり、会合で明らかになった課題への対応策を指示したりする。意思統一の場でもある。

 「一つの会社として、アイデアを出し合える」(荻原社長)よう、技術交流や人事交流も行っている。月1回の技術交流会では、グループ各社が開発した商品やサービスを説明する。協業の呼び掛けもする。「この技術でユーザー企業を攻めるにあたって、関連する技術を持つ御社の協力が必要」などと訴える。例えば、オープンストリームがネクストスケープのスマートフォンやタブレッド端末などの技術力を取り込んで、新しいEC構築を提案する、などだ。

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