持ち株会社でIT企業を結集、新技術活用に挑む 豆蔵OSHD田中克己の「ニッポンのIT企業」(2/2 ページ)

» 2012年03月23日 08時00分 公開
[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]
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技術情報の発信基地に

 IT技術の情報発信にも力を注いでいる。コンサルティング事業を展開する豆蔵が3年前から運営するのが、IT技術者に海外の最新技術を紹介したり、日本発の技術を海外に紹介したりする技術情報発信サイト「InfoQ」だ。技術情報だけではなく、実際に最新技術を使って、適用したビジネスの拡大にどう役立ったのか、といった情報も提供する。

 「多くのIT技術者に、新しい技術にもっと目を向けて欲しい」と荻原社長が思っているのは、「最新技術をいち早く取り入れた企業が勝つ」との確信からである。その先に描いているのは、おそらく日本の技術力で世界市場に打って出ることだろう。豆蔵シンビオはその先兵と思われる。NokiaやMotorolaなどのモバイル企業の研究開発を支援している、Symbioの組み込みソフトの技術やノウハウを製造業に売り込む。中国の現地法人では、中国の製造業に開発プラットフォームの標準化を提案している。海外現地法人はシンガポールにもある。JMTがオフショア開発拠点などとして設立したものだが、これら拠点を通じて東アジアへの営業活動を展開する。

 豆蔵OSHDが技術力のある企業や人と組んで事業を展開する理由は、荻原社長が豆蔵の設立以前、公認会計士としてソフト開発会社のコンサルティングをした経験にある。事業の成否は、ユーザーの要求に応えられる技術力を持っているかにある。だから荻原社長は提携先の技術力に加えて、経営者と経営方針を共有し、同じ方向に進めるかを見極める。「経営者と会って、この人となら一緒にやっていけると、ピンときたら買収する。JMTは1日で決めた」(荻原社長)。今後、セキュリティなどに強いIT企業をグループに加えるM&Aを加速させると思われる。


一期一会

 荻原社長に初めて取材したのは、東証マザーズに株式公開した2004年末である。これまでに取材したIT企業の経営者とは少し異なる印象を持った。荻原社長は1983年に公認会計士試験に合格し、アーサーヤング会計事務所(現アーンスト&ヤング)、朝日監査法人(現あずさ監査法人)などを経て、1996年には荻原紀男公認会計事務所(現税理士法人プログレス)を設立する。

 こうした公認会計士の立場から、IT企業を分析すると、勝ち負けは技術力にあることが見えてくる。InfoQの運営を引き受けたのはそのためで、日本のIT技術者に、最新技術について勉強し、その活用法を考えて欲しいからだろう。新しいことに挑戦しなければ、自分自身の技術力に磨きをかけられないし、所属する企業の成長に貢献もできない。

 荻原社長は「日本で、価値があるのに認められていないのが会社だ。この混乱期だからこそ、買収すれば将来、価値を高められる」と信じている。一方、中小IT企業の経営者は資金繰りや人材育成などに苦労している。上場するのも容易なことではない。そんなIT企業の経営者らと組むことで、成長を遂げるストーリーを描いているのだろう。だが、目下のところ、規模拡大を目的とした持ち株会社化で大成功したIT企業はない。労働集約型からの転換が図れない、などさまざまな理由がある。荻原社長が新たなにどんな策を打ち出すのか注目したい。

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