「自働サーバ」に込めたHPの思惑Weekly Memo

日本HPが先週、「自働サーバ」と銘打ったx86サーバの新製品を発表した。同社が「自働」という言葉に込めた思惑とは――。

» 2012年04月02日 08時00分 公開
[松岡功,ITmedia]

新サーバプロジェクトの中核製品が登場

 「x86サーバ市場はこれまでスペックと価格の競争に終始してきたが、これからは運用クオリティの競争へ土俵を移し、HPならではの新しいソリューションによって優位性を発揮していきたい」――日本ヒューレット・パッカード(日本HP)エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括の杉原博茂執行役員と、同サーバーマーケティング統括本部インダストリースタンダードサーバー製品本部の橘一徳本部長は3月29日、同社が開いた新製品発表会でこう強調した。

 日本HPが同日、x86サーバの新製品として発表したのは「HP ProLiantサーバーGeneration 8(以下、HP ProLiant Gen8)」。同社の説明によると、テクノロジー、インフラ、サービスを融合させることで、導入・監視・運用・保守といった運用ライフサイクル全般で「自働化」を実現する新たな設計コンセプト「HP ProActive Insightアーキテクチャ」を実装したのが最大の特徴という。

 この新アーキテクチャを実現するコアテクノロジーとして、サーバ内蔵の管理システム最新版「HP iLOマネジメントエンジン」を標準搭載。これまでのリモート管理や電源管理・制御といった機能に加えて、導入・維持更新の作業時間を大幅に短縮できる「インテリジェント・プロビジョニング」機能、OSに依存しない「エージェントレス管理」機能、OSの動作に依存せずに自動でダイアログやログを記録する「アクティブヘルスシステム」といった機能も提供する。

 また、ハードウェア自身が障害予兆などをHPサポートセンターへ自動的に通報することにより、問題発生を事前に回避できる「自動通報」機能や、サーバの運用・保守に必要な情報をまとめて表示するクラウド型のハードウェア管理ポータルも提供するとしている。

 杉原氏によると、HP ProLiant Gen8は、HPがこれまで2年間で約250億円の投資を行い、900以上の特許を出願している新サーバプロジェクト「Project Voyager」の中核をなす製品だという。同プロジェクトはデータセンターでのあらゆる作業の自動化を目指しており、「作業効率3倍」「ソフトウェア更新作業69%短縮」「障害に対する問題解決時間66%短縮」といった具体的な目標を掲げている。HP ProLiant Gen8はそれらを具現化するべく登場した製品である。

クラウド時代のサーバのあり方を示唆

 さらに詳細な機能の内容などについては、すでに報道されているので関連記事などを参照いただくとして、ここでは日本HPが「自働」という言葉に込めた思惑に焦点を当てたい。

 では、どんな思惑があるのか。橘氏がこう説明した。

 「今回の新ソリューションでHPが訴求したいのは、サーバ運用の根本的な変革。すなわち、ハードウェアの提供からサーバ運用の提供へのシフトだ。HP ProLiant Gen8はテクノロジー、インフラ、サービスを三位一体の形にして新しいレベルのサーバ運用環境を提供していく。そのキーワードとなるのが自働だ」

 橘氏によると、このキーワードの元となる英語として米HPが適用しているのは「Self Sufficient」。直訳すると「自給自足」の意味合いになるが、日本HPでは敢えて「自働」と銘打ったという。その理由について同氏はこう語った。

 「例えば、サーバ自身が必要な情報をクラウドから常時取り込む。もしくはクラウドに対して発信する。さらに自らの状態を自己診断し続ける。しかも、こうした動作を繰り返し行うことによって、運用クオリティを自ら向上させていくことができる。このようにサーバ自身が働いて自らの役割を果たすことができる意味を込めて、自働という言葉を適用した」

 この「自働サーバ」というコンセプトは、クラウド時代のサーバのあり方を示唆しているように思う。なぜならば、ユーザーにとってはサーバ運用面での一層の安心・安全を手に入れることができ、販売パートナーにとってはサーバ運用をHPに委ねることができるので手離れのよいビジネスが可能となり、サーバベンダーにとってはユーザーおよびパートナーの囲い込みを図ることができるという「三方良し」の状態が成り立つ可能性が高いからだ。

 ちなみに、日本HPは今回の新ソリューション投入にあたり、機密保持契約を結んだうえで70社の顧客企業に利用してもらうとともに、150人を超えるパートナー関係者からアンケートを募ったという。そのフィードバックを見ると、多少のリップサービスがあるにしても、手応えは十分感じられる。

 冒頭のコメントにあるように、これまでx86サーバはスペックと価格の競争に終始してきた。クラウド需要が拡大しつつある中でも、ともすれば「消耗戦」になりがちな市場競争が続いてきたが、「自働サーバ」の登場で市場の流れが変わる可能性は大いにありそうだ。

日本HPの「HP ProLiantサーバーGeneration 8」発表会。右側に立つのは杉原博茂執行役員

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