IBMが全世界で同時発表した「PureSystems」とは何か知見を結集してクラウド構築を効率化(2/2 ページ)

» 2012年04月13日 08時00分 公開
[伏見学,ITmedia]
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運用管理の負荷を10分の1に

 では、それを体現するPureSystemsとはいかなるものか。その大きな特徴の1つは、システム構築や運用管理におけるコスト削減にあるという。IDCの調査によると、全世界のデータセンターにおけるサーバ管理費は、1990年代半ばは約30%だったのに対し、システムのオープン化が進み、現在では約70%にまで膨れ上がっている。加えて、「ビッグデータ」時代において構造化、非構造化を含めた大量データを扱うことにより、システムの運用管理負荷がますます増大になるという。「ハードウェアそのものは技術が進化して安価になっているのに、運用コストは増える一方である。これを解決するのがPureSystemsなのだ」と橋本氏はメリットを強調する。

 具体的に説明しよう。従来のシステムでは、専門のシステム担当者による設置や導入作業が必要だったが、PureSystemsは製造工場でサーバやストレージなどをラックに組み込むとともに、仮想化環境を最適化した形で出荷されるため、ユーザーは納品後に電源を入れてからアプリケーションが動作し、システムが自律的に稼働するまで4時間以内で完了するという。

 加えて、システムの計画から導入、運用に至る煩雑な作業も簡便化できる。一般的に企業がシステム導入を行う際には、要件定義でハードウェアやソフトウェアの構成を決めて、社内で稟議処理して発注する。その後、システムを調達し、技術担当者がセットアップして、ミドルウェアやアプリケーションを導入、顧客ごとに最適な環境にチューニングして、開発者やエンドユーザーに開放する。稼働後は24時間365日、システムを運用・保守するという流れとなる。

 PureSystemsでは、サーバやミドルウェアなどを個別に検討、設計、発注する必要はなく、最適化された1つのインフラとして購入できるほか、導入時にはIBMやISVが用意するパターンを利用してシステムに最も適したアプリケーションを選択できる。パターンは稼働後にも動的に追加できる。運用においては、仮想化環境、サーバ、ストレージ、ネットワークなどを個別に管理せず、システム全体を「Flex System Manager」と呼ばれる管理コンソールで一元管理できるため、運用の手間や時間の大幅な削減が可能だという。IBMの試算では、計画からミドルウェア環境の構築まで従来は30〜45日かかっていたところを数分から1時間で完了するほか、運用管理の負荷は従来の10分の1になるとしている。

PureFlex System(左)とPureApplication System PureFlex System(左)とPureApplication System

 PureSystemsは、汎用システムとアプライアンス、クラウドの利点を組み合わせたものだという。汎用システムの利点は柔軟性や制御能力である一方で、構築に要する時間とコストが課題である。アプライアンスはシンプルで迅速に稼働できるメリットを持つが、特定用途にしか対応できないというデメリットがある。クラウドの特徴は俊敏性や弾力性だが、共有環境による制限が伴う。まさにこれら既存システムの“いいとこ取り”をしたのがPureSystemsだとしている。

 PureFlex Systemは、小規模から中規模までに最適なインフラストラクチャ環境を提供する「Express」、ストレージとネットワークのサポートを含む、アプリケーションサーバのためのインフラ環境を提供する「Standard」、拡張性のあるクラウド環境に適したインフラ環境を提供する「Enterprise」の3モデルをそろえる。PureApplication Systemは、96コア、1.5テラバイトメモリのSmallライセンス、192コア、3.1テラバイトメモリのMediumライセンス、384コア、6.1テラバイトメモリのLargeライセンス、608コア、9.7テラバイトメモリのHi-Perf.ライセンスで構成されており、それぞれに6.4テラバイトのSSD(Solid State Drive)ストレージと48テラバイトのHHDストレージ、システム全体に対するアプリケーションサービスの使用権が付与される。

 価格は、PureFlex System Expressモデルの最小構成で2350万円(税別)から。PureFlex Systemは5月21日から、PureApplication Systemは8月1日から順次出荷を開始する。サーバ統合やプライベートクラウドの導入を検討する企業やiDC事業者に向けて販売していく。

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