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» 2012年04月17日 08時00分 UPDATE

チームワークが経営を変えた!:あなたは自分がボトルネックであることを認められるか【後編】 (1/2)

会社の根幹ビジネスを支える特定業務が一人の担当者に集中。この大きな経営課題に対していかに取り組むのか?

[北原康富,サイボウズ株式会社]

一極集中する業務情報

 「これは確かにあかんやろな」。ワークショップも後半に差し掛かったとき、A氏の口から思いも寄らず出た言葉に、参加者全員が注目した。同社が長年抱えていた問題を解決するため、新たな方向に組織の舵が切られた瞬間だった。

写真1 ワークショップの様子 写真1 ワークショップの様子

 2011年8月、かね善の常務取締役である岡田善靖氏が考える問題点を主要メンバーと共有するために、サイボウズの東京本社でワークショップが開かれた(写真1)。岡田氏の考える問題点とは前回お伝えした下記の3点である。

(1)営業担当間で情報の共有ができておらず、チームとして機能していない

(2)豆類商品の仕入れと販売のタイミング、価格設定が、一人の熟練者に委ねられている

(3)在庫を戦略的に活用するという取り組みが全社的にできていない

 「B-Mapping」(コラム参照)という手法を使って、現状の豆販売の流れを見える化する作業が始まった。模造紙にシールを貼っていくという、少し子どもじみた作業に最初は戸惑いながらも、さまざまな事柄を図に表していく作業によって、徐々にメンバーの本音が出てくるようになった。「仕入部に確認しないと商談が進められない。商談中に問い合わせても捕まらない」。東京支店で営業を統括する支店長のB氏は、大阪本社の仕入部に対する苦言を呈した。

 後に、B氏はこの時のことを振り返る。「仕入部の反応が遅れることで、現場でお客さんと話している営業社員は途方に暮れることもある。その実態を知ってもらいたい気持ちと、それを知りながらも自分自身が本社の動きを察知できていない苛立ちがあったのです」

写真2 業務の流れをマッピング 写真2 業務の流れをマッピング

 ワークショップを通しての作業は、B氏と仕入部のA氏それぞれの思いがぶつかり合う場にもなった。ワークショップが始まってから3時間が経過し、社内の主な部署が、豆の販売においてどのようにかかわり、業務を行っているかについての全体像が図で表されることとなった。図を見ると、多くの情報の流れが仕入れ部の1カ所に集中していることが容易に分かった(写真2)。それは、長年多くの社員が感じてきた「困った状態」をそのまま示しており、岡田氏が考えている3つの問題点の原因でもあった。しかし、それでもまだ明らかにすべき核心を口にする参加者はいなかった。その時である。

 「これは確かにあかんやろな。オレが変わらんと」

 あらゆる情報の中心部にいるA氏が口にした一言こそ、その核心だった。

 仕入部は、事実上、A氏一人なのである。長年の経験と研ぎ澄まされたカンで、取引の可否、金額、量の判断を行うA氏は、かね善の収益を左右する屋台骨だ。また、一人ですべての重要な取引を頭に入れていることで、全社でバランスのとれた判断ができる。A氏は、そのことを十分分かっているだけに、強い責任感から一人で仕切ってきたのだ。しかしその結果、情報の一極集中が起き、同社にとってのボトルネックになったのである。

【コラム】

kanezen003.jpg

B-Mappingワークショップは、業務の流れを表す専用の台紙とシールを使って、現状の見える化、問題点を抽出し、それを改善するための行動に落とし込んでいく一連の作業を、半日〜1日で行う参加型会議である。B-Mappingでは、ワークショップを行う前に、業務全体の目標や目的、問題点を明確にしておく。

 そのうえで、現場で業務を遂行する担当者やマネジャーが、現状の業務の流れを徹底的に視覚化する中で、業務全体としての目標とのギャップや問題の原因に気付いていく。部署をまたぐ業務プロセスの中で、各部署の問題意識を共有し合い、業務にとって最善の策をメンバー自らが考え出していくことで、改善へのコミットメントを高めていく。



 かね善の問題点が明らかになったところで、それに対処するために何をするか、具体的なアクションプランを話し合う場面へとワークショップは突入していった。続いて、以下の2点を検討することとなった。

(1)豆担当者を各支店に設置し、農産仕入部(本社)−豆担当者(各支店)−営業社員(各支店)の流れで、豆の販売情報を流通させる体制(指示命令系統)を確立する

(2)適切な在庫把握のため、在庫システムをステータス管理できるようにする

 A氏の元に、全国の営業社員から価格や在庫の問い合わせがすべて集まる状態を撤廃し、新たに各支店に豆担当者を設け、支店長とペアになって、豆の取引に関する情報とノウハウを支店で蓄積するのである。A氏は各豆担当者と連絡をとれば良いだけとなる。かつ、ノウハウを豆担当者に伝授していく体制を作り上げることができるというわけだ。A氏の持つ暗黙知を形式知化し、属人的にしない業務の仕組みを構築することによって、今後のさらなる取引増加に対応できる体制への方向が見えてきた。

 ワークショップが終盤を迎えたころ、「電話が来なくなって、仕事がなくなるかもしらんね」とA氏がポツリとつぶやいた。ワークショップは時として、その時出されたアクションプランが実行に移されないことがある。改善のアイデアを実際の行動に移せるかはかね善に委ねられている。A氏の発した一言は、筆者らを一瞬戸惑わせたが、それは杞憂であったことが、後ほど分かった。

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