役員が陥りやすいコンプライアンスの落とし穴えっホント!? コンプライアンスの勘所を知る(2/2 ページ)

» 2012年04月20日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]
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誰も注意しない、注意されたときは時遅し

 役員に率先して注意できるサラリーマンは稀有である。そのことを「許容されている」と役員や経営者が勘違いしていると、そのうちに大きなしっぺ返しをくらう。その時に気がついてからでは既に遅いのだ。裁判所でいくら言い訳をしても、もう会社や部下を含めて味方は一人もいない。

コンプライアンス経営を目指せ!

 「コンプライアンス経営」という定義はさまざまなものがあるが、その本質は、社内だけではなくコミュニケーションを司るさまざまな関係者に対して、企業倫理や行動規範を含む「規則」や「ルール」を順守した経営を行うことである。法令順守を最優先する経営という意味ではない(企業が法令順守するのはあたり前である)。

 筆者は「見える化」「ガラス貼り経営」が重要だと考える。常に企業の姿勢を明確に示し、それに向けてどういう経営を行っているのかを誰もが分かる形で露出させ、公正明大な形にしておくことである。

 よく理解できないという経営者に対して筆者は、「茶道や華道も同じ。まず初心者は形から入る。そして、各自の胃(心)でその形を消化していくことでいつの間にか形だけの作法に魂が入り、物事の本質に近づいていける」と説明している。経営も同じであり、まずは形(見える化、ガラス貼り)から入っていくべきだろう。それが難しいというのは、それ自体が問題だということである。

不正な経営はコンプライアンスの敵

 当たり前のことでも、忘れがちになることの一つに、「不正とコンプライアンスは絶対に両立しない」ということがある。前述したセクハラやパワハラは、ともすれば本人が全く気づいていない類のコンプライアンス違反であるが、本質的な企業倫理を順守するというコンプライアンスにあっては、意識的に行う「不正」とは真逆だ。つまり、コンプライアンスを重視した経営とは、「不正を除外する」という、思ってもみなかった良い効果を生むことになる。

不法行為を行っている役員たちに

 「コンプライアンス=法令順守」と訳された先人には申し訳ないが、それではコンプライアンスという言葉の本質を理解することは難しい。なぜなら「法令順守」を「法律に抵触しなければ何をしてもいい」という誤った考えをする人間が現れてしまうからだ。法律は常に不完全ゆえ、「法律に抵触しない=悪ではない」という図式は成立しないのだ。法律に触れないだけで、実際には悪の道に足を突っ込んでいるかもしれない。真のコンプライアンスとは前述の通り、企業倫理や行動規範という不完全な法律を超える体制が人間として、社会人として「真っ当に生きる」内容が盛り込まれている。役員、経営者にとってのコンプライアンスとは、まさしく「世の中を真っ当に生きるバイブル」なのである。

 もし談合や脱税、不正経理をしているのであれば、今からでも遅くないので、少しずつでも良いから「真っ当に生きる素晴らしさ」をぜひ味わっていただきたい。そしてコンプライアンスのことを理解していただきたい。不正行為は必ずいつかはばれるものであり、その日までのカウントダウンを待っているくらいなら、コンプライアンスを体得してカウントダウンを止めるくらいの気概をぜひ持っていただきたいものである。

萩原栄幸

一般社団法人「情報セキュリティ相談センター」事務局長、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、ネット情報セキュリティ研究会相談役、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格した実績も持つ。

情報セキュリティに関する講演や執筆を精力的にこなし、一般企業へも顧問やコンサルタント(システムエンジニアおよび情報セキュリティ一般など多岐に渡る実践的指導で有名)として活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。


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