“ビッグデータ”が経営を変える

自販機ビジネスでは珍しいデータ活用で新境地開く JR東日本ウォータービジネス(2/3 ページ)

» 2012年05月07日 09時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

現場感のないデータ分析から脱却

 このように多様なPOSデータを活用できることになったが、新たな問題が発生する。取得した大量データの分析だ。VT-10を導入してから1年ほど経ってデータが溜まり、いざ具体的に分析しようということになったが、これまで利用していた分析ツールでは大量データを処理するのに時間がかかりすぎるなど、使い勝手が悪かった。すべてのデータを活用して売り上げトレンドを把握することはできず、結果的に期間データを基に分析を続けていたという。

 そこでJR東日本ウォータービジネスは、新たなデータ分析ツールの導入を検討。いくつかの製品を候補に挙げた中で、基幹システムとの連携を踏まえ、2011年8月に、同じメーカーである富士通のオンメモリデータベースシステム「Oh-Pa 1/3」(提供は富士通ビー・エス・シー)を、基幹システムのリプレイスのタイミングに併せて導入した。これによって、一気にデータ分析の処理時間が縮まった。

「3、4時間かかっていたものが数分で完了するスピード感だ。今までは1回あたりのデータ処理時間が長いために失敗は許されず、事前に『このデータでいいのか』と何時間も検討したうえで、限られた分析しかできなかった。今は短時間で結果が出てくるので、まずは一度分析かけてから考えようと、データを積極的に活用しようとする意欲が高まった」(笹川氏)

 システム刷新と前後して、JR東日本ウォータービジネスは「情報分析プロジェクト」を2010年12月に立ち上げる。各部門の部長クラスが中心となり、大量のPOSデータを使って具体的にどのような分析ができるかという勉強会を行った。その後、2011年5月からは実務担当者を加えて、10〜15人ほどのプロジェクトチームにした。こだわったのは、営業施策、バイヤー、自販機営業など現場のメンバーが参加するという点だ。「今まではデータ分析する際、ITスキルの高い社員やITベンダーに丸投げしていたが、それでは仮説に結び付かないデータが出てきてしまうという問題意識があった。分析データを使って営業施策まで落とし込むのは実務担当者しかできないと思った」と笹川氏は話す。

 システム導入とデータ分析チームの再構築によって、現場の担当者自らが自販機POSデータを活用してさまざまな分析が可能になった。その結果、タイムラグなくして分析結果をすぐに次のアクションに移すことが可能となった。

「当初は1件のデータ分析をするのに1、2日かかっていたが、今では数分で行えるようになった。多くのノウハウも蓄積しており、データに対する洞察が深くなった」(笹川氏)

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