“ビッグデータ”が経営を変える

自販機ビジネスでは珍しいデータ活用で新境地開く JR東日本ウォータービジネス(3/3 ページ)

» 2012年05月07日 09時00分 公開
[伏見学,ITmedia]
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ミネラルウォーターの商品開発に生かす

JR東日本ウォータービジネスの笹川俊成営業本部長 JR東日本ウォータービジネスの笹川俊成営業本部長

 このようなデータ活用を基にした具体的なビジネス施策として、JR東日本ウォータービジネスが実施したのが「フロムアクア」というミネラルウォーターの商品リニューアルである。パッケージデザインを刷新するとともに、“落ちないキャップ”を採用した。

 フロムアクアはJR東日本ウォータービジネスの主力商品であり、かつては「大清水」という名称で販売されていた谷川連峰の天然水である。近年、競合商品の相次ぐ登場により苦戦、てこ入れを迫られていた。

 フロムアクアに関するPOSデータを分析すると、朝に販売のピークがあることと、女性の潜在的な購入比率が高いことが分かった。また、主要顧客と思われる郊外に住む典型的なビジネスマン・OLの購買行動を、居住エリア×購買エリア×時間帯売り上げによるクロス分析で検証したところ、多くの顧客がフロムアクアを乗車前に購入するという仮説が生まれた。その後、ネット調査によってその仮説を裏付けるデータが出たため、JR東日本ウォータービジネスでは、顧客ターゲットを「エキナカで購買して移動中に飲むビジネスマン・OL」として商品リニューアルを行った。

 移動中にミネラルウォーターを飲むことの悩みについても消費者調査を実施。すると、ペットボトルとキャップを別々に持つので両手がふさがってしまう、キャップを落としてしまうといった声が多かった。特に7割以上の女性がキャップを落とした経験があった。そこでこのニーズをくみ取り、リニューアル商品ではキャップをペットボトルのふちに止められるような仕様にした。「既にキャップメーカーが試作品で開発していたものに改良を重ねた。機能性や安全性など1年2カ月ほどテストを繰り返して、ようやく市場に投入できるものとなった」と笹川氏は振り返る。

データの“背後”を読み解く力を

 このように、大量データを活用、分析することでマーケティングや新たな商品開発につなげているJR東日本ウォータービジネス。今後の課題について、笹川氏は「データ分析に必要な知見を組織として蓄積することが不可欠だ」と強調する。

 例えば、商品の販売ピーク時間や購買者属性といったデータからトレンドを出すまでは誰でも簡単にできるが、それだけでは営業施策にはつながらない。もし朝に商品が売れるのであれば、何を並べればもっと売れるのか、あるいは、なぜそうなるのかという原因追究をして、さらなる効果を推測して施策を考える必要があるという。

「過去に売れていたから、今回もこれを売りますということにはならない。データというのは結果であり、なぜその結果に至ったかが分からないと何もできない。データと営業施策を結び付けるのは知見であり、これがないと十分なデータ活用はできない。試行錯誤してメンバー自らがデータ分析に対する知見をためていくしかない」(笹川氏)

 いかにビッグデータを使いこなすか。JR東日本ウォータービジネスのデータ分析に対する取り組みからは、まだ目が離せそうにない。

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