アップルがお手本、マルチチャネル統合で優れた顧客体験をSuiteWorld 2012 Report(2/3 ページ)

» 2012年05月17日 06時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
NetSuiteのザック・ネルソンCEO

 「3文字のITベンダーもわれわれの顧客となった。IBMではない。SAPだ」

 ネルソン氏はそう明かして会場を沸かせたが、どうやら昨年、SAPが買収した人材管理サービスのクラウドベンダーのSuccessFactorsがNetSuiteのユーザーだったらしい。今週、フロリダ州オーランドでSAPPHIREカンファレンスを開催しているSAPは直ちにこれを否定、SuccessFactorsがSAP Business ByDesignに移行を発表したが、真相は分からない。

 SAPの名を挙げたのはジョークとしても、乳製品メーカー大手のLand O'Lakesや世界最大の一般消費財メーカーであるProcter & Gambleなどの名立たる企業が、本社のオンプレミス型ERPと海外拠点のNetSuiteを連携させる2層アプローチを採用し始めている。新興企業に加え、大企業での採用が進み始め、同社の第1四半期決算は過去最高となる6930万ドルを売り上げた。1株当たりの利益も前年同期から倍増、通年では3億ドルの売り上げを見込んでいるという。

「CaaS」構想発表、NetSuiteをコマース向けに拡充

 同社は破竹の勢いにさらに弾みをつけるべく、今回のSuiteWorldで「Commerce as a Service」(CaaS)構想と中核サービスである「NetSuite SuiteCommerce」プラットフォームを発表した。

 「われわれはクラウドERPによって事業運営のやり方を変革してきたが、その領域をB2CやB2Bに拡大していく」とネルソン氏。顧客レコードにひも付けてすべての情報を一元管理し、営業、サポート、財務会計、配送、請求書など、すべての業務を継ぎ目なく進めることができるNetSuiteの特徴がB2CやB2Bのe-コマースの領域でも大いに生きる。リアルタイムで業務や経営の進捗を見える化するNetSuiteが、顧客とのリアルタイムのやり取りを可能にするSuiteCommerceへと拡張されると考えればいいだろう。

 既に2800以上のe-コマースサイトがNetSuiteで運営されており、合計1120万の商品が管理され、月間のユニークビジター数は480万に上る。eBayやAmazon.comには及ばないものの、NetSuiteで運営されているe-コマースサイトのユニークビジター数も5位にランクされるなど、意外に健闘している。PCだけでなく、スマートフォンやタブレットといったさまざまなデバイスが登場、企業と顧客と接点も多様化し、コマースが顧客主導で大きく変わりつつある今、NetSuiteによるCaaS構想とSuiteCommerceプラットフォームの発表は悪くないタイミングだ。

 「Appleが良いお手本だ。iPhoneやiPad、店舗や電話でApp Storeにコンタクトしても顧客は一貫した整合性のある体験を得られる。今やこれがスタンダードとなっており、消費者はAppleのような体験が得られることを期待している」とネルソン氏。NetSuiteによるCaaS構想の特徴は、デザインやユーザーインタフェースに依存せず、将来にわたって進化し続けるマルチチャネルを統合し、顧客レコードにひも付けてすべての情報を一元管理できることにあり、そのビジョンにブレはない。

 ステージでは、コアのERPに格納されている商品情報を引き出し、B2Cのショッピングサイトを構築、ブランド/サイズ/カラーといったフィルタで商品を絞り込む機能や、柔軟なカート機能・レジ機能などがデモされた。また、B2B向けには、例えば、バイヤーが繰り返し同じ商品を発注するのに便利なショッピングリストの機能なども用意される。ERPの在庫情報から納期を正確に知らせることができるほか、やはりERPにある顧客情報などから値引き率などをすぐに提示できるという。

GoProのステファン・バウマーCEO

 この日、SuiteCommerceの先行事例としてジェネラルセッションで紹介されたのは、GoProとSerena & Lilyの2社だ。

 サンフランシスコ郊外のハーフ・ムーン・ベイに本社を置くGoProは2003年にわずか3人で始めた新興企業。当初はアウトドア・スポーツ・グッズを手掛けていたが、2010年にヘルメットや体などに装着可能なスポーツ用ビデオカメラ「HD HERO」を発売するやこれが大ヒットする。年商は6億ドル、社員も200人へと急成長した。

 同社のステファン・バウマーCEOは、「オンラインのB2CサイトとB2Bサイトを運営するほか、直販やTargetのような大手量販店でも販売しており、今では取引が世界50カ国以上に及ぶ。急成長を支え、マルチチャネルを統合できるソリューションが必要だった」と振り返る。

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