マスコミ対応を疎かにしてはいけないワケえっホント!? コンプライアンスの勘所を知る(1/2 ページ)

コンプライアンスに抵触する出来事ではマスコミへの対応次第で、その後の進展に大きく影響する場合が目立つ。“反面教師”ともいえる事件を例にその重要性を解説する。

» 2012年05月18日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

 最近、企業防衛の観点から「マスコミ対応」をテーマにした企業内実習や講習が増えている。その背景には近年、不祥事絡みの記者会見における企業の対応が、その後の進展において大きな優劣となって影響するケースが数多く見られるためであるようだ。今回は広義における「コンプライアンス経営」の点からマスコミ対応について解説したい。

“反面教師”となった船場吉兆事件

 相次ぐ偽装問題から廃業に追い込まれた「船場吉兆事件」の記者会見を時系列に振り返ってみたい。

2007年10月27日:岩田屋の店舗で消費期限切れのお菓子にシールを付け替えて販売していたことが発覚し、記者会見。しかし社長が出席せず取締役が「組織ぐるみではない」と反論。

2007年11月1日:お菓子以外に惣菜など12品での期限切れ販売が明らかになった。

2007年11月9日:牛肉や地鶏の産地偽装も発覚。記者会見では「業者が地鶏と偽って納入した、産地偽装の件は現場の仕入担当者が独断で行った」と話したが、業者は昔から有名なブロイラー専門店であることが判明。一連の偽装を「パートの女性らの独断によるもの」と説明する。

2007年11月14日:パートの従業員らが「店長らの指示」と暴露。「全責任はパート女性にある」とする会社作成の事故報告書に、湯木尚治社長が署名・押印を迫ったと述べた。

2007年11月16日:「みそ漬け」の産地偽装が発覚し、強制捜査。「会社ぐるみではない」「幹部の承知事項ではない」などと組織的な関与を否定。

2007年11月18日:本店などの料理でも牛肉の産地偽装発覚。営業自粛を発表。

2007年12月10日:農林水産省に改善報告書を提出、記者会見


 ここで有名な「ささやき女将」(社長の母親)が登場した。うつむいたままで話す息子(45歳の社長)に、女将は横から「大きい声で目を見て」「ほれ、しっかりいわんか」などと、小声でアドバイスするのが、全て映像を通じて視聴者の耳に入ってしまった。

 「どうして前回と証言が変わるのか?」という記者の質問に、女将は「頭が真っ白だった。頭が真っ白だった」とささやく。社長は「前回は初めての記者会見という場で、なんというか、頭が真っ白の状態というか、なってしまい……」と話した。

 「あざむくつもりがあったのか?」という質問に、女将は「ないです。ないです」とささやく。社長は「結果的にあざむくことになってしまった。つもりはなかった」と答えた。女将(母親)の言う通りに、見事に答弁をしてしまったのである。

2008年1月21日:本店の営業を約2カ月ぶりに再開

2008年5月2日(本店)、7日(全店):本店を含む全店舗で客が食べ残した料理を使い回していたことが発覚。「天ぷら」は揚げ直して出すこともあり、「アユの塩焼き」は焼き直し、「アユのおどり揚げ」は二度揚げしていた。わさびは形が崩れて下げられてきたものを「わさび醤油」として出し直し、刺し身は盛り直していた。刺し身のツマはパート従業員が洗い、調理場に持参。料亭経営を取り仕切っていた当時の湯木正徳前社長の指示で、2007年11月の営業休止前まで常態化していた。また使い回しが発覚した後に、湯木佐知子社長は「食べ残し」と呼ばず、「手付かずのお料理」と呼ぶようにマスコミへ要望したという。

2008年5月14日:大阪府料理業生活衛生同業組合に退会を申し入れ。廃業となる。


 これ以上はないと思えるほど酷い記者会見であった。今でもYouTubeにその時の映像があるので、興味のある方は一度映像を見てみるとよいだろう。

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