エンタープライズモバイル戦略を加速する英Vodafone(2/2 ページ)

» 2012年06月26日 08時00分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
前のページへ 1|2       

SAPと共同で業務のモバイルアプリ化を

 使い勝手とユーザーの許容度に加えて、モバイルで注意していることは何だろうか。オサリバン氏は、セキュリティ、ITスキルも挙げる。人事(HR)アプリではコアシステムにあるレコードにアクセスすることになり、パスワードを利用した安全なアクセスとデータ保護が重要になる。IT側のスキルについては、確立された分野であるERPとネットワークというこれまでにはなかった組み合わせでの作業が必要になる。「ITスキルが新しい分野とミックスしはじめた」とオサリバン氏は語る。

 共同開発プログラムの第1号となるTravel Expenses Captureに続いて、休暇申請の「HR Leave Request」など7〜8種類のモバイルアプリを今年6月中にソフトローンチする計画だ。これには、Travel Receipt CaptureのようにSAPと共同開発したアプリと、SAP独自のアプリの両方が含まれるという。端末側では、米Appleの「iPhone」と加Research In Motion (RIM)の「BlackBerry」を利用しており、iPhone向けには「iTunes Store」を経由して配布、BlackBerryにはダウンロードへのリンクを貼って知らせているという。今後はAndroid端末の導入も積極的に進めていく。SAPは韓Samsungなどと協業してAndroid端末のセキュリティ強化を進めており、この成果にも期待を寄せる。

 Vodafoneのモバイル戦略は、このようなモバイルアプリによる業務効率化のほか、もう1つの柱がある。タブレット端末「iPad」でERPにアクセスして分析するという、より経営戦略的な利用方法だ。業務アプリのモバイル化では利用を簡単にしてサポートとトレーニングのコスト削減を図るものであるのに対し、タブレットを使った分析は一歩進んだモバイル利用といえる。経営データなどの分析をスピードアップすることで「企業のビジネスを変える、大きなメリットをもたらすだろう」とオサリバン氏は狙いを語る。

 最終的にはERPトランザクションに占めるモバイルの比率を8割に高めることを目標としている。当面はモバイルアプリを順次ロールアウトしてユーザーの利用を促進する。使いやすく、きちんと動くアプリが増えることで、社員からの需要を作っていきたいという。「2012年に10〜15種類のアプリを用意し、2013年には一気に加速できるのではないか」とオサリバン氏は見通しを示す。ERPにアクセスするタブレット向けの分析アプリについても、年内にライブにこぎ着ける計画だ。Sybaseの魅力は「高速な開発サイクル」であり、これは動きの早いモバイル分野では必須の特徴だと選定理由を説明する。

 「モバイルはVodafoneのDNAであり、ITによって社員がモバイルでリードするのを支援したい」とオサリバン氏は力を込める。Vodafoneは法人顧客分野を強化中で、まずは自社でモバイルエンタープライズを実現することが法人戦略にも大きな好影響をもたらすはず、と期待を語った。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ