企業のデータ分析力を支える3本柱アナリストビュー(2/4 ページ)

» 2012年06月29日 08時00分 公開
[生熊清司(ITR),ITmedia]

データをうまく活用できない日本企業

 ここにきてデータ分析を競争力の源泉とする動きが欧米企業を中心に活発化している。さまざまな書籍や記事などで紹介されている昨今の事例は、データ分析を経営戦略の中心に据えたものであり、データ分析が企業競争力を高めていることを意味している。時々刻々と新たなデータが生成され、企業情報システムには大量の生データが保存されているが、十分に活用できている企業は少数派と言わざるを得ない。それらは蓄えられているだけであったり、報告の過程で要約されるなどして捨てられたりしている。

図4 BIツールの役職別使用状況(出典:ITR) 図4 BIツールの役職別使用状況(出典:ITR)

 図4は、2011年9月に実施したBIツールの利用実態に関するエンドユーザー調査の結果だ。回答数は500件で、全て国内のBIツール利用企業である。役職別にBIツールの使用状況を問うた結果を見ると、役職が上位になるほど、分析結果を基に作成されたリポートを参照する割合が多くなり、経営層では、48%と半数に近い割合に達した。

 経営データのような企業にとって重要なデータであっても、担当レベルから部門長レベル、そして経営層レベルへと報告されるたびに要約され、経営者の目に触れる時には定型リポートとなっていることが多い。そのため、経営者はそこに記載されていない詳細な情報を得るために、事業責任者や中間管理者に説明を求めるわけだが、多くの場合は、データのレベルが一段階詳細になっただけにとどまり、明細データ、つまり変化の原因となった事象までたどり着くことは難しい。

 図5は、BIツールの利用用途を問うた結果であるが、やはりBIツールはレポーティングのために利用されている割合が高く、分析用途には利用されていない結果となった。

図5 BIツールの利用用途(出典:ITR) 図5 BIツールの利用用途(出典:ITR)

 さらに、同調査にてBIツールの利用効果を問うた結果では、全ての項目で「多少効果があった」という回答の割合が多くを占めた。全体的には、レポーティングやデータ参照といった業務における作業効率化を目的とした利用での効果が高く、分析や意思決定支援といった戦略的な業務に対する利用効果があまり得られていないことが明らかになった(図6)。

図6 BIツールの利用効果(出典:ITR) 図6 BIツールの利用効果(出典:ITR)

 この調査結果から、本来はデータを分析することで意思決定を支援するためのBIツールが、多くはリポート作成の目的で利用され、その機能が十分に生かされていないと考えられる。

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