モバイルデバイスの導入、戸惑いながら準備を始める企業スマートフォン/タブレット時代の幕開け(2/2 ページ)

» 2012年07月09日 10時00分 公開
[ITmedia]
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スマートフォン導入のきっかけは「ワンマン社長の鶴の一声」

 「社長がスマートフォンを買ったみたいですよ?」

 そんな不穏な噂を聞いたのは、入社2年目の後輩からだった。それから数日後、わたしたちクライアント管理チームのメンバーが情報システム部長に呼ばれた。部長によると、社長が個人所有の携帯電話をスマートフォンに機種変更したということ。ただ、それだけではなかった。社長は、スマートフォンを使って社内ネットワークにアクセスし、自分の仕事をこなしたいと言い出したのだ!

 創業者である社長が一代で会社を成長させたウチの会社では、社長は神のような存在。彼が「右」と言えば、わたしたち社員は右を向かなくてはいけない。それから間もなく、社長が勧めたのだろう、専務や常務など経営幹部のお偉いさんたちが一斉にスマートフォンを使い始めた……。

 さらに社長室からは、わたしたちクライアント管理チームが耳を疑うような質問が飛び込んできた。

 「社長が業績をスマートフォンで見たいというのですが、どうすればデータを移せますか?」

 ひとまず「調べてみます」と回答をにごしておき、情報システム部では緊急会議を招集する。このままでは、会社のITガバナンスを効かせることは困難。早々にプロジェクトを立ち上げ、スマートフォンを導入するしかない……。そんな決定をして、部長がスマートフォン導入の稟議を経営幹部会議に上程した。

 その結果、社長の「やりなさい」という鶴の一声で、モバイル対応のプロジェクトをスタートさせることになった。プロジェクトを急ぐ代わりに、社長には社内でのスマートフォン利用をしばらくの間、我慢してもらうことに。社長には、ちょうどわたしが入社した5年前、IT利用の社内規程を厳格化した際にITガバナンスの重要性を理解してもらっているので、今回は素直に情報システム部の意見を聞き入れてくれた(ほっ)。

BYODは時期尚早! 端末は社長と同じiPhoneに

 わたしたちにとっては、ここからが勝負! プロジェクトマネージャーにはチームリーダーの課長が就任したが、彼は複数のプロジェクトでリーダーを兼任しており、本プロジェクトの業務だけに多くの時間を割くことはできない。そこで実質的なプロジェクト推進の役目が回ってきたのが、なんとわたしだった。

 課題として与えられたのは、情報システム部が管理でき、安全性を担保したモバイル環境を整備すること。もちろん、社長を満足させるだけの利便性の実現も求められる(これが一番重要だったりして)。

 わたしは最初に、社長室に依頼をして、社長や経営幹部のスマートフォンの機種を調べてもらった。その回答は予想通り。個人所有の端末だけあって、携帯電話キャリアもバラバラ、機種もバラバラだった。OSだけ見ても、複数のバージョンが異なるAndroid、iOS、が混在している! BYODに対応して、個人所有の端末利用を認めてしまうと、それだけ情報システム部の負担は大きくなる。また、携帯電話を管理するMDM製品を導入しても、OSやバージョンの違いで管理できる項目が微妙に違っている。ということは、管理性も安全性も不十分というわけね……。

 BYODは時期尚早という結論を持って、会社で購入したスマートフォンを支給することにする。もともと会社支給になることを想定してのプロジェクトだったので、予算オーバーになることはない。念のために、現状報告とBYODの課題をレポートにまとめ、プロジェクトマネージャーの課長に報告する。戻ってきた回答は、「いいよ、任せた」というもの……。

 気を取り直して、機種の選定に入るわたし。社長が利用しているのは、iPhoneだ。幸い、法人契約しているキャリアでも扱っている機種なので、導入するのは容易だ。社長の個人所有と同じ機種ならば、異論が出ることもなく、すぐにOKとなるだろうという判断もあった。

 問題は、管理性と安全性の確保である。キャリアの担当者に話を聞くと、キャリアで用意しているサービスもあるが、MDM製品を導入するという手段があるという。MDM製品を導入すれば、紛失や盗難などのいざというときに、端末ロックやデータ初期化を遠隔操作できるセキュリティ管理の他に、ホワイト/ブラックリストを用いてモバイルデバイス上のアプリケーション利用制限やバージョン管理ができるなどよりセキュアな運用が可能。これならば、安全性は問題ないわよね。

iPhoneを管理できるJP1/ITDMとの嬉しい出逢い

 管理性のほうは、オペレーションの工程が増えるものの、MDM製品を直接操作すれば何とかなる。ただし、そうひんぱんに使う機能じゃないので、いざという場面で使いこなせるかちょっと不安……。普段使いしない機能は、どうしても忘れてしまうことがあるからだ。

 そうならないためにも、できれば普段使い慣れた運用管理のツールを使って、スマートフォンも含めて一元管理したいところ。ウチに運用管理ソフトウェアを導入してくれたシステムインテグレーターに問い合わせしてみるわたし。すると、予想の上を行くうれしい回答が得られた!

 ウチでは日立製作所の「JP1」を社内システムの運用管理ツールとして導入し、利用している。そのJP1に、今度新しくMDM製品と連携して利用できる新機能が追加されたというのだ。しかも、導入を決めたiPhoneにも対応しているという。

 「JP1/IT Desktop Management(JP1/ITDM)」というその製品は、クライアント管理機能を提供するもの。クライアント管理の仕組みが不十分だった情報システム部、特にわたしが所属するクライアント管理チームにとって有用なツールだった。

 さっそく機能を調べてみると、モバイル用途のノートPCも含めたクライアントの資産管理、OSのパッチを自動的に強制適用できる配布管理にも対応している。クライアントの脆弱性を診断する機能も用意されているなど、セキュリティ対策面でも気が利く機能が満載されているみたい。

 MDM製品との連携機能では、スマートフォンの詳細な端末情報が入手できるようだし、スマートフォンの画面をロックしたり、データをすべて初期化して工場出荷状態に戻したり(ワイプというそうだ)、パスコードを解除したりといったことが、管理者の手元の画面から遠隔操作で簡単に行えるという。ライセンス価格も1台あたり1万3500円と、プロジェクトの想定予算を下回るリーズナブルさ。さも自分の手柄のように、JP1/ITDMの発見を報告するわたし。

 システムの構築・導入は、キャリアやJP1のディストリビュータであるSIベンダーの協力もあって、短期間のうちに完了した。今回は、社長を含めた経営幹部と営業部門の一部部署のみで先行導入することにしたが、社長はITガバナンスと利便性を両立できたことを高く評価してくれているとのことだった。

 でも、営業部門の先行導入ユーザーからは、やはり個人所有のスマートフォンを業務に利用できないかという声が上がってきている。BYOD対応については、端末管理と安全性の確保などの市場動向を見てから検討しよう。今回、MDM環境を整えたことは、将来のBYODにも役立つはずよね。

※2012年6月現在、JP1/ITDMが対応しているMDM製品はMobileIron 4.5です。

※MobileIronは米国におけるMobileIronの登録商標です。

提供:株式会社 日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部
掲載内容有効期限:2012年8月8日

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