福岡から世界へ! モバイルAP開発に舵を切ったアイキューブド田中克己の「ニッポンのIT企業」(1/2 ページ)

受託開発からクラウドサービスへと事業転換を図ったアイキューブドは、近年、売り上げの倍々ゲームを続けている。

» 2012年07月10日 08時00分 公開
[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]

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 福岡県を拠点にするITベンチャーのアイキューブドシステムズが、モバイル・アプリケーション(AP)の開発に経営資源を振り向けている。クラウドサービスとモバイル端末を駆使した新しい業務システムに対するニーズが高まるとの判断からだ。

投資効果をすぐに出す!

 2001年に設立したアイキューブドは、2006年ごろに受託ソフト開発からクラウド活用へと事業をシフトさせた。AmazonのWebサービス「EC2」やGoogleのコラボレーションツール「Google Apps」、OracleのSaaS型CRMなどの導入支援に加えて、Appsの機能強化サービスやモバイル端末を遠隔から一括管理するMDM(モバイルデバイス管理)ツール「CLOMO」、モバイルAP用開発フレームワークライブラリ「YubizoEngine」を開発した。2011年には、日本ベリサインと提携し、「セキュリティ精度を高めるなど商品を補強してきた」と佐々木勉社長は話す。現在、分析ツールの開発を進めており、今秋にサービスを提供開始する予定だ。

 このようにアイキューブドは、クラウド環境におけるモバイル端末の管理やセキュリティ対策に力を注いでいる。クラウドを活用したシステム構築の実績を積んだ。中でも、iPadやAndroid端末などを遠隔管理するCLOMOはこの1年半で約350社が導入した。そうした経験を生かして、2011年夏にYubizoEngineなどの開発プラットフォームを活用したモバイルAPの開発へと事業の範囲を拡大させた。

 モバイル端末が情報共有などのコミュニケーションツールから業務システムのクライアント端末へと広がり始めているからであろう。既に数社との間でモバイルAPの開発に関する包括契約を交わした。この契約は、ユーザーと半年あるいは1年という長期間にわたる開発体制を組み、「作っては機能を追加したり、修正したりする」アジャル的な開発手法を取り入れて、システムを作り上げるというものだ。「ユーザーがモバイルAP活用の具体的なイメージを持っていないことがあるので、当社の開発チームが一緒になって開発を進める」(佐々木社長)。ただし、ゴールは設定しないそうだ。

 包括契約にしたのは、モバイルAPの特長にある。1つは「ここが使いづらい」「こんなことができないのか」などと利用者からのフィードバックがすぐにあること。そうした利用者の反応や要求を素早く取り入れることが求められる。「個別開発では、スピード感のある開発は難しい」(佐々木社長)ので、継続的な体制が欠かせないというわけだ。

 もう1つは、投資効果がすぐに表れること。モバイルAPを構築するユーザーの多くは収集した情報やデータを次の行動に生かすことを考えている。しかし、「最初から多くのデータを取り込もうとすると、システムが複雑になり、すぐには効果が出ない」(佐々木社長)ので、「あるデータだけを見るといったシンプルなシステムにしましょう」と投資額を抑えて、効果を早く上げる方法を提案する。利用者から高い評価を得られれば、経営者から「もっとやれ」となり、モバイルAPの機能をさらに拡充できる。しかも、「IaaS、PaaSのインテグレーション、つまり基幹系システムとクラウドとの連携も求められる」(同)。そんな発展系モデルを考えているのだ。

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