福岡から世界へ! モバイルAP開発に舵を切ったアイキューブド田中克己の「ニッポンのIT企業」(2/2 ページ)

» 2012年07月10日 08時00分 公開
[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]
前のページへ 1|2       

求める人材像はフットワーク軽く

 こうしたニーズに応えるために、社員を2011年3月から2012年5月の期間で、20人強から約70人に増員した。年末には100人を超す規模にするという。特にこれまでのソフト開発方法に疑問を感じるIT技術者を探し求めている。基幹系など伝統的な情報システムのように、ユーザーが要件を固まってから体制を整えて開発に着手するのではなく、「ちょっとやりましょう」という感覚で小さいものから開発する方法を提案できるIT技術者だ。

 用途を絞り込んで成功に導くために、「ユーザーと議論し、『こんな課題があるので、こう解決したらどうか』と、一緒になって取り組む」(佐々木社長)ことも求められる。モバイルAPは進化させていくシステムだからだろう。だから、「新しい技術を使ってみよう」「こんな工夫を凝らそう」といったチャレンジ精神が欠かせない。エンドユーザーの視点で考えることも必要になる。もちろん「iOSにはこんな機能がある」など各種モバイルプラットフォームの特性を理解していなければならない。

 佐々木社長は「当社にはそんな技術者ばかりだし、いいものを創り出そうという力がある」と、イノベーションを起こせる人材がそろっているという。売り上げも急激に伸びており、2010年5月期の約1億6000万円から2011年5月期に約2億5000万円、2012年5月期に約7億円に達した。今期は約16億円を見込んでおり、社員の増強だけではなく、開発環境を整備し、パートナーのソフト開発会社に提供するなど協業体制も整える計画だ。


一期一会

 1年2カ月ぶりに佐々木社長に会ったが、アイキューブドの急成長に驚いた。同社は多くの中小IT企業と同じように受託ソフト開発から事業をスタートした。九州には自動車や半導体などの関係会社が多くあり、業績は順調に拡大したが、ビジネスモデルの限界を感じるようになった。仕様が固まるまでの時間が長期化したり、仕様変更が頻繁に発生したりすると、失敗プロジェクトがどうしても増えてしまうことだ。開発プロジェクトの要員手配に苦労するし、IT技術者が疲弊もする。

 そこで、クラウドサービスへと舵を切った。Google Appsを見た佐々木社長は「これこそ、次世代のIT基盤」と感じたことが決断の背景にある。佐々木社長は「世界に通用するITサービスを開発する」と意気込み、文書管理や表計算、メール、カレンダーなどAppsの付帯サービスやCLOMO、YubizoEngineなどを開発した。

 これからも、汎用的なサービスの商品化に取り組む一方、標準的な開発環境を用意し、大規模なモバイルAPの開発にも対応できる体制を整えていくという。次は「モバイルAPに国境はない」(佐々木社長)とし、グローバル展開を視野に入れる。当面の数値目標である年商100億円の達成に向けて事業を推し進める。

「田中克己の『ニッポンのIT企業』」 連載の過去記事はこちらをチェック!



著者プロフィール

田中克己(たなか かつみ)

日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長、編集委員室主任編集委員などを歴任し、2010年1月からフリージャーナリストとして活動する。約35年間にわたりIT産業の動向をウォッチし続けており、主な著書に『IT産業崩壊の危機』『IT産業再生の針路』(ともに日経BP社)がある。2004年度から2009年度まで専修大学非常勤講師(情報産業)を務める。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ