画素数と画質の正体、デジタルカメラにモノ申す!“迷探偵”ハギ−のテクノロジー裏話(2/3 ページ)

» 2012年08月03日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

画素数は品質のバロメータではない

 ある時、電車の中で若者たちがこう話すのを聞いた。

A:「ついに1400万画素のデジカメを買ったぞ! すごいだろう」

B:「マジ? いいなあ。俺のは800万画素だからきれいに撮れないよ」

C:「俺は1200万画素だから、まだマシだな」

 デジタルカメラの画像の善し悪しが画素数で決まると思い込んでいる典型的なケースである。数字だけでみればその通りではある。しかし、「画素数が多いからきれいに撮れる」というのは間違い。販売店の店員のセールストークで、そのように言うケースもある……。

 カシオのQV-10が発売されてから7〜8年ほど、2000年代の前半まではそういう感覚でもある程度は良かった。だが画素数が500万画素を超え、今では筆者が一番に使っている機種でも1250万画素である(価格は3980だったが)。画素数だけなら高級機に肩を並べられる。しかし画質はそこそこだし、感覚的には昔の300万画素のデジタルカメラで撮った方が趣のある写真になる。それはなぜか(“購入価格のせい”というのは抜無しとして)。

 さまざまな理由があるものの、最も大きい点は銀塩カメラのフイルムに相当するデジタルカメラの撮像部にある。35ミリフイルムの撮影面は36×24ミリ。ところが、デジタルカメラの撮像素子はフィルムに比べて極めて小さい。撮像素子の種類は幾つかあるが、1/2.5型CCDなら5.7×4.3ミリ、1/2.33型なら6.2×4.6ミリ、レンズ一体型デジタルカメラで大型の2/3型では8.8×6.6ミリだ。高級一眼レフ型デジタルカメラでも通常は23.4×16.7ミリで、銀塩のフィルムカメラと同じサイズのCCDを装着しているデジタルカメラはほとんどない。

 数字で書くと味気ないが、例えば6.2×4.6ミリなら、本稿を表示している画面の標準サイズの1.5文字程度の広さに画素が1000万個も入っていることになる。1つの画素回路全体では1辺が約0.00000166ミリしかない。大雑把にいえば、そんな環境に光を受ける画素とその情報を伝達する画素などがきちんと小分けされ、格納されているのだ。

 一方、デジタルカメラの写真を表示するディスプレイはどうか。例えばフルハイビジョンは画素が1920×1080、つまり207万3600個しかない。今年、販売されている一般的なディスプレイで最も大きいワイドQXGAでも2560×1600である(試作や特殊用途向けなどを除く)。これでも400万画素程度だ。デジタルカメラ側でこれ以上画素を増やすなら、そのデメリットであるダイナミックレンジの補正とか、画像処理ソフトの問題を克服(一部の機種は実施しているが)すべきだと思う。もはや、画素数が画質のパラメータになるという見方は時代遅れである。

デジタルズームはズームじゃない

 また当初は無かったズーム機能も、だんだんと搭載されるようになるのだが、それとともに不満が募っていったのである。それは「デジタルズーム」と呼ばれるものだ。

 そもそもデジタルズームとは、一度撮影した画像の一部分だけを引き延ばしてデジタル情報として表示、格納しているだけに過ぎず、見た目はズームで拡大しているように映るが、物理的にズームをしているわけではない。物理的にズームする光学ズームには画像の劣化がない。デジタルズームは、言ってみれば拡大コピーのようなもので明らかに画質が劣化する。それにもかかわらず、「ズーム」という言葉で商品として売ることはいかがなものかと感じる。画像データをPCに取り込んで拡大表示するのと同じだ。

 商品によっては、ある程度の倍率までは光学ズームで、それ以上はシームレスにデジタルで数十倍にまで拡大する。ユーザーが意識しないままにデジタル“ズーム”が働いていることがあるので注意が必要だ。なお、今ではレンズ一体型のデジタルカメラでも光学ズームが42倍というすごい製品もある。

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