なぜ全国紙に全面広告を打ち続けるのか ビジネスアプリケーション田中克己の「ニッポンのIT企業」(2/2 ページ)

» 2012年08月07日 08時00分 公開
[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]
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人材派遣会社を取り巻く環境変化

 だが、リーマン・ショック後、人材派遣会社を取り巻く環境が厳しくなってきた。派遣法の改正も加わり、業界の再編・淘汰が加速した。当然、ビジネスアプリケーションの顧客数も減る。そこで、人材派遣会社の事業拡大に役立つ、営業支援システムや給与計算代行システムなどを開発した。

 100社超の企業の給与計算を代行できる給与計算代行システムは、2年の歳月をかけて開発した。その後、人事と労務の機能を付け加えて、人材派遣会社の業務代行サービス進出を支援するものに仕立てた。ビジネスアプリケーションにとっても、ユーザー1社あたりの売り上げを増やせることになる。

 同社が現在、最も販売に力を入れているのが、この業務代行支援システムである。全国紙に全面広告を掲載し、2012年3月に大規模なセミナーを開催したばかりだ。今も月1回以上のペースで、セミナーを開いているのは、人材派遣会社向け業務システムと同じように、「こんな機能がほしい」「ここが使いづらい」「こうしたほうがいい」というユーザーの声を直接聞いて、それを取り込んで改良し続けるためだ。それが売れる商品への近道ということだ。


一期一会

 64歳になった浅野代表取締役は、全国紙に全面広告を出すことを「分不相応と思われるかもしれないが、考え方」と話す。費用をどこにかけるかだ。営業担当者を雇うのか、広告に回すのか。例えば、社員1人当たり年1000万円かかるとして、10人の営業を採用すれば1億円になる。全面広告なら5〜6回掲載できるだろう。問題は、その有効性をどうみるかだ。

 おそらく、中小IT企業の経営者に、「全面広告を出したらどうか」と助言すると、「そんな予算はない」「考えたこともない」となる。だが、自社開発した商品やサービスをどのように販売するのか悩む中小IT企業の経営者は少ないだろう。

 そんな経営者から、浅野氏は「何回、広告を出したらいいのか」と尋ねられることがある。「1回や2回出しても成果はない。だが、10回やればいいのかは分からない。そう簡単なことではないが、成果が出るまでやり続けるしかない」と答えているという。「考えたら、実行する」。それが中小IT企業の経営者に求められている。

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