データ統合化のボトルネックは「合意形成」 組織の壁をどう越えるかMaker's Voice

データ活用の重要性が叫ばれる中、さまざまな組織に分散するデータの整理・統合がなかなか進まないというケースが少なくない。Informatica バイスプレジデントのジョン・シュミット氏は、「ICC」というコンセプトの導入を推奨する

» 2012年09月21日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
米Informatica グローバル・インテグレーション・サービス部門バイスプレジデント ジョン・シュミット氏

 米Informatica グローバル・インテグレーション・サービス部門バイスプレジデントを務めるジョン・シュミット氏は、企業でのデータの整理・統合に対する取り組みが失敗する原因に「合意形成」を挙げる。データ統合を成功させるためのポイントを解説してくれた。

 シュミット氏は、米Wells FargoやBank of America、家電販売大手のBest Buy、Digital Equipmentなどの情報システム部門に在席。ユーザー企業とベンダーの双方の立場で、情報システムの構築や統合化などの多数のプロジェクトを指揮した経験を持つ。現在はInformaticaで、「インテグレーション コンピテンシー センター(ICC)」というコンセプトの導入支援を手掛けている。

 ICCとは、組織横断型プロジェクトなどを円滑に実行できるよう、組織間の調整や全体の取りまとめを担う永続的なチーム、もしくはそのためのコンセプトという。米国では独立した組織が担う場合が多いが、国内では経営企画部、もしくは複数の業務部門のメンバーで構成される「バーチャルチーム」などが、これに近い役割を担う場合が多いだろう。

 データの統合化は、買収・合併に伴う組織再編や経営合理化、新たな法規制への対応、新たな経営計画の策定、災害対策といったさまざま要因をきっかけに行われる。ただ、そこでは複数の組織に散在するデータをいかにして整理・統合するかが大きな課題となり、データ活用への道筋のボトルネックになる。シュミット氏は、技術的な理由よりも組織間で合意ができないことが最大の理由だと指摘する。

 「一番の阻害要因は組織が縦割り型であり、予算も指標もバラバラなためだ。複数の組織に共通する問題に対して、一緒に働ける環境を整備することが重要」(シュミット氏)。その役割がICCだという。

 また、データの統合化では情報システム部門と業務部門の関わりも深くなる。しばし、「業務部門は技術を理解していない」「情報システム部門はビジネスを理解していない」といった両者の対立が起こりがちだが、ICCはこうした立場の違いを埋める上でも必要とされてくる。

 「業務部門のビジネスに精通して、データの抽出から分析、知見の提供までを担える人材が望ましい。もしくは、情報システム部門がデータの抽出や分析に必要なロジックやツールを開発し、業務部門がそれを活用して必要とする情報を自ら発見できるようにするアプローチもある」とシュミット氏。その際には「標準」「再利用可能」「柔軟性」という観点が不可欠であり、同社ではこれらの観点をもとに包括的なデータ統合ソリューションを提供しているという。

 データ統合事例として、シュミット氏はWells Fargoでの経験を次のように紹介する。

 「Wells Fargoでは顧客あたりの口座数が平均8つと、ほかの銀行に比べて2倍近くも多い。貯蓄やローン、決済、投資などさまざまであり、それぞれに情報システムがある。同社では各システムのデータを統合して『Get Best Product Recommendation Service』を構築した。これによって、一度断られた金融商品や購入済みの金融商品を繰り返し顧客に提案しないことが可能になった」

 ICCという永続的な仕組みを構築するのが難しい場合、まずは時限的なプロジェクトなどでノウハウを積む。社内に文化として定着させることで、将来は企業変革に貢献できる存在になると同氏はアドバイスする。

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