高速3Gが牽引したモバイル大衆化時代の到来モバイルワーク温故知新(3/5 ページ)

» 2012年09月25日 08時00分 公開
[池田冬彦,ITmedia]

3.5G対応のスマートフォンが登場

 イー・モバイルの画期的なサービスは、現代に通じるモバイルワークの礎を作ったが、世間を驚かせたのはそれだけではない。実は、2007年のサービスインとともに、初の3.5G通信対応のスマートフォンの元祖とも言える「EM・ONE」を発売したのだ。

イー・モバイルのサービス開始とともに発売された「EM・ONE」

 EM・ONEの登場はセンセーショナルだった。下り3.6Mbpsという3.5G通信に対応する初の小型情報端末であり、OSにWindows Mobile 5.0を搭載していた。タテ・ヨコ2方向に開閉するスライド式のQWERTYキーボードと4.1インチ液晶タッチパネルディスプレイ(800×480ピクセル)を備えていた。

 Webブラウズやメール、オフィス書類の表示や編集、スケジュールやアドレス帳の管理といった一通りのアプリケーションを備えており、必要に応じて自由にアプリをインストールできた。またVPNにも対応し、会社へのリモートアクセスも可能だった。しかも、本体は幅14×縦7センチ、厚さ1.89センチで、重さはわずか250グラムしかない。

 EM・ONEは、重たいノートPCを持ち歩かなくても一通りの仕事ができる「夢の端末」として大いに注目された。当初は通話機能を備えていなかったが、Skypeソフトウェアをインストールすれば、通話ができた。

EM・ONEにプリインストールされたアプリケーション

 もっとも、高速なクアッドコアプロセッサが当たり前になった昨今のスマートフォンに比べると、EM・ONEはまだまだ黎明期の産物だ。搭載された「PXA270」というプロセッサのパワーは乏しく、Windows Mobile OSの仕様でプログラム実行用のメモリ領域が111.2Mバイトしかないという制約もあった(最近のAndroidスマートフォンに比べると、5分の1から10分の1程度しかない)。

 また、バッテリの容量も小さく、Webブラウジングをしたりメールチェックをしているだけで標準バッテリなら、2時間程度でバッテリ消耗の警告が表示されるという状況だった。さらに、使いやすくカスタマイズしようとすると、Windows Mobileアプリの知識や、Windows Mobile OSの知識や使いこなしのコツが必要で、初心者にはハードルが高かった。

 それにもかかわらず、事前予約は1万台の大台を記録し、発売当日だけで2万台も売れたというヒット商品になったのである。2007年10月には新機種として「EM・ONEα」が発売され、2008年7月からは050番号を使用した発着信に対応した。

 さらに、2009年にはゼンリンデータコムが開発したナビアプリ「いつもナビ」とBluetoothタイプのGPSユニットを組み合わせたGPS付きキットも販売され、EM・ONEをカーナビとして使うこともできた。今のスマホの世界ではGPSで動作するナビゲーションソフトは当たり前だが、その出発点はこんなところにあったのだ。

「いつもナビ」の利用イメージ

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