「ネチケット」を賢く学べ! PCやスマホの初心者に告げたいこと“迷探偵”ハギーのテクノロジー裏話(2/2 ページ)

» 2012年10月05日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]
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メールのやり取りは「会話」ではない

 もし今、隣の席にいる上司へ外回りの報告をメールでしている方、それが会社の業務フローになっていて、実際は口頭で伝えたいがグループウェアなどでの報告に限ると会社の規則になっている方以外は、こうした行為をぜひ改めてほしい。「Face to Face(面談)」に勝る情報交換の手段は無いからだ。

 メールの文章はデータ量でわずか数キロバイトしかない。しかし、顔を見ながらの報告なら相手の健康状態、しぐさ、先方の対応や雰囲気など、データ量としてはメールの数千倍以上もの情報を上司に伝えることができる。微妙な雰囲気を文書で伝えることは作家以外の人間には極めて難しい。当たり前だが、メールなどだけのやり取りで本当に恐ろしいのは、「一生後悔する元になる」ことだ。メールはその場で消える口論と本質的に違うことを再認識してほしい。

 以前の職場でもこういうことがあった。ある日、休憩時間に給湯室で女性同士が取っ組み合いのケンカを始めた。偶然にもその近くの廊下にいた筆者は、すぐに女性たちを引き離して、「いったいどうしたんだ。AさんもBさんも普段は仲良しじゃないか」と尋ねた。

 するとAさんは、「冗談じゃない! こんな性悪女とは仲良しであるはずがない!」と話した。Bさんも同じようなことを怒鳴りながら話した。それから双方が落ち着いたころを見計らって、まずAさんに状況を聞いた。内容的には想定通り大したことはなかったのですが、彼女はこう話した。

 「Bさんはひどすぎる。3年前にケンカした時のメールの一部(Aさんにとっては都合の悪い)を持ち出して、『あなたは私にこう言ったのよ! それは今さっきのメールと矛盾しているわ! なんていい加減なの!』っていうのです。3年も前の、しかもその時もケンカ状態だった時のメールを今頃切り貼りして非難されるのは堪りません!」

 Aさんの言い分はその通りかもしれない。しかし、このような悲劇は社会のあちらこちらで起きていると聞く。なぜだろうか。それはメール自体が、まだ人類にとっては新しい手段であり、その扱い方に難があるからだろう。筆者が大学生の頃に初めてPCに触れたが、そんな頃にメールでやり取りできるようになると考える人はほとんどいなかったのである。

 その後、PC通信が急激に拡大し、インターネットも普及した。職場に初めてPCが持ち込まれた時、「そんな遊び道具を会社に持ち込むな」と真剣に非難する人もいた。今でも筆者の仕事での顧客の中には名刺にメールアドレスの記載が無い方が3割ほどいる。記載してもその部署の共有アドレス(例えば人事部なら「jinji@xxx.co.jp」)だ。今もこういう状況なのだから無理もない。

メールは口論の場ではない。

 メールは一生残る。言葉はいずれ記憶から消えていく。本来なら新人教育などの場で簡単に済ませることなく、専門家の手で丁寧に「教える」ということが必要なのである。今の若い人は、小学生のころからメールや携帯を利用しているからといっても、それは無免許で車を走らせているだけに等しい。基本を確実に習得してからインターネットの世界に出ないといけないのである。

 メールを送る際には絶対に読み返し、「この文章は一生残っても後悔しないのか」を自問自答してから送信するように心がけたい。筆者もメールでは若いころによく失敗した経験がある。そして、最近のいじめ問題でも、単にうさ晴らしのつもりで送ったメールが相手を自殺に追い込むケースすらある。このことは次に記したい。今や職場いじめも急増し、改めてこの問題を真剣に取り上げる。メールに限らず、あらゆるデジタルデータが原因となって起こる問題の兆候が見え始めている。

萩原栄幸

日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事、一般社団法人「情報セキュリティ相談センター」事務局長、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、ネット情報セキュリティ研究会相談役、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格した実績も持つ。

情報セキュリティに関する講演や執筆を精力的にこなし、一般企業へも顧問やコンサルタント(システムエンジニアおよび情報セキュリティ一般など多岐に渡る実践的指導で有名)として活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。


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