新興国の時代? ビッグデータに最適化されたPureData Systemがアジアから世界デビューIBM InterConnect 2012 Report(1/3 ページ)

IBMは10月9日、シンガポールで開催中の「InterConnect 2012」カンファレンスでPureSystemsファミリーの新製品「PureData System」を披露した。新たなテクノロジーの活用は、意外にも新興国が長けているのかもしれない。

» 2012年10月10日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
シンガポールのシンボル、金融街とラッフルズ卿

 IBMが新しい「PureSystems」ファミリー発表の地として選んだのは、世界経済の成長を牽引するアジア、特にASEAN地域の急成長を背景にして再び存在感を増しているシンガポールだった。IBMは10月9日、ビジネスとITのエグゼクティブを対象とした新たな試み、「InterConnect 2012」カンファレンスでPureSystemsファミリーの新製品「PureData System」を披露した。

 シンガポールは、19世紀初めに東インド会社の書記官だったラッフルズ卿が上陸して以来、アジア地域の貿易の拠点として栄えた歴史を持つ。国土がわずかに東京23区ほどしかなく、もちろん天然資源も乏しい。おのずとITをはじめとする最先端技術で国を富ませる「知識集約国家」の道を追求する。

 今年4月に最初の製品が発表されたPureSystemsは、IBMが「Expert Integrated Systems」(EIS)と呼ぶ新たなカテゴリーの製品。汎用システムの柔軟性とアプライアンスの使いやすさ、そしてクラウドコンピューティングの俊敏性も併せ持つ全く新しいシステムだ。設計段階からハードウェアやソフトウェアを高い次元で最適化し、さらに同社が培ってきたインフラやアプリケーションの構築、および運用管理に関するノウハウ、技術、経験など、「専門家の知識」を組み込んだという。

 顧客が自社で所有する形を取りながらもクラウドの「IaaS」を利用するように迅速にハードウェアインフラを構築・運用できる「PureFlex System」と、やはり所有しながらもPaaSのように使える「PureApplication System」は、どちらも迅速な配備と運用負荷の軽減をもたらし、IT予算の約8割が既存システムの運用と保守に費やされるというITの現状に対して、クラウド機能を盛り込んだ柔軟なオンプレミス型製品としての選択肢を提供する。

ミルズ上級副社長兼グループエグゼクティブ

 「ハードウェアとソフトウェアをデザイン段階から最適化し、さらに専門家の知識をビルトインしたPureSystemsは、配備に要する時間を大幅に短縮し、運用と保守の課題も解決できる。21世紀にふさわしいベストパッケージ」と胸を張るのは、IBMでハードウェア事業とソフトウェア事業を統括するスティーブ・ミルズ上級副社長兼グループエグゼクティブ。

 先週、Exadataの最新バージョンを発表したOracleのように、ハードウェアとソフトウェアの融合によって新しい価値を提案するベンダーはほかにもあるが、IBMにはメインフレームで培ってきた、コンピュータのリソースを極限まで使い切るシステム運用技術の積み重ねがある。

 ミルズ氏は「世界には3260万台のサーバがあるといわれているが、キャパシティの85%はアイドル状態だ」とし、効率的な運用とはほど遠いITの現状を指摘する。

 一方、Facebookだけで毎日500テラバイトを超えるデータが生み出されるなど、データの爆発はますます加速する。しかし、企業のIT予算は青天井ではなく、データセンターの電力消費も常に抑制が求められる。さらに厄介なことに、人が関わる運用管理コストが占める比率も年を追うごとに高まっている。

 「OracleのExadataとは戦略もアプローチも異なる。単なるバンドルではない、ハードウェアとソフトウェアの最適化がITのライフサイクル全体にわたる簡素化と管理性の向上を実現し、企業が直面する課題の解決に大きく貢献するはずだ」と話すのはナンシー・ピアソンPureSystemsマーケティング担当副社長。

 ミルズ氏も「Exadataとの違い? 彼らはOracleデータベースを最適化しているだけ。Oracleの株主にとっては良い話だが、顧客はそれほど恩恵を得られないだろう」とアプローチの違いを強調する。

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