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» 2012年10月11日 08時00分 公開

松岡功のThink Management:サプライチェーンマネジメントの勘所

今回は、PwCが先頃発表した調査レポートとともに、サプライチェーンマネジメントの勘所について考えてみたい。

[松岡功,ITmedia]

PwCが説くサプライチェーン先進企業

 サプライチェーンマネジメント(以下、SCM)はここにきて、自然災害による混乱や急激に変動する経済環境などによって困難さを増すとともに、ビジネスの浮沈を左右するより重要な要因となってきている。

 SCMについてはこれまでもさまざまな議論がなされてきているが、先頃プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が「グローバル・サプライチェーン・サーベイ2013」と題した調査レポートを発表したので、その結果とともに、あらためてSCMの勘所について考えてみたい。

 まずはSCMについて少々おさらいしておきたい。「@IT情報マネジメント」用語辞典によると、SCMとは主に製造業や流通業において、原材料や部品の調達から製造、流通、販売という、生産から最終需要(消費)に至る商品供給の流れを「供給の鎖」(サプライチェーン)ととらえ、それに参加する部門・企業の間で情報を相互に共有・管理することで、ビジネスプロセスの全体最適を目指す戦略的な経営手法、もしくはそのための情報システムをいう。

 企業にとっての具体的な目的は、納期短縮・欠品防止による顧客満足の向上、流通在庫を含む在庫・仕掛品の削減によるキャッシュフローの最大化などが挙げられる。

 そんなSCMについて、PwCグローバルのオペレーションリーダーであるマーク・ストロム氏は、「サプライチェーンのパフォーマンスに優れた“サプライチェーン先進企業”は、顧客個々のニーズに応えつつ収益性を高める次世代型サプライチェーンの構築に投資している。迅速な対応が可能なサプライチェーンのパターンを複数用意することにより、業績の向上だけでなく、市況が荒れる中でも顧客へのスムーズな対応を図っている」と語っている。

 では、同氏がいうサプライチェーン先進企業は、具体的にどのような取り組みを図っているのか。PwCが実施した調査レポートでは、以下の6つのポイントが浮き彫りになったとしている。

大事なのはリスク軽減とコストのバランス

(1) サプライチェーン先進企業は、業績および顧客対応面で平均以上の結果を出しており、サプライチェーン後進企業に比べ2倍の収益性を上げるとともに、納期順守率では17ポイント上回っている。また、サプライチェーンは戦略的資産であるという認識の上に立っている。しかし、こうした認識を持つ回答企業は全体の半分以下にとどまり、依然として改善の余地がある。

(2) サプライチェーン先進企業は、顧客ニーズの高度化に応える最良の配送、コスト削減および柔軟性の確保に注力している。最高の価値を創出するための2大要素は、配送能力の最大化およびサプライチェーンコストの最小化である。

(3) サプライチェーン先進企業は、明確に定義した市場参入のアプローチを有しており、83%が異なる顧客層のニーズに合わせてサプライチェーンをカスタマイズしている。一方、サプライチェーン後進企業はサプライチェーンのパターンも少なく、万能型のアプローチをとる傾向にある。

(4) サプライチェーン先進企業は、生産や配送部門を外部委託することが多いが、新製品開発、経営および販売計画、調達などの中核的な戦略機能については、グローバルの管理体制を保持し続けている。

(5) サプライチェーン先進企業は、成熟市場および新興市場において、サプライチェーンの能力差別化に重点的に投資している。

(6) 次世代のテクノロジーおよびサステナビリティ(持続可能性)への関心が高まっている。回答者の半数以上が、プロセスの自動化や可視化のための新たなツールを導入中あるいは導入する計画があると答えている。また、回答者の3分の2以上が今後、サステナビリティがサプライチェーンにおいてより重要な役割を担うと考えている。

 ちなみに、PwCのこの調査は今年で9回目とのことで、欧州、北米、アジア地域の幅広い業種のサプライチェーン責任者503人を対象に、2012年5〜7月にインタビューを行った結果をまとめたものだという。

 それぞれのポイントとも示唆に富んだものだが、激しいグローバル競争にさらされている日本企業の多くは、コスト削減のために主要部材を最も効率的な地域で集中生産し、それらを持ち寄って完成品を組み立てる形でグローバルサプライチェーンを構築。さらにコストを下げるため、部材の在庫も極限まで減らしてきた。

 これは取りも直さず、もし1つの部材の供給に問題が生じると、関連する多くの拠点で生産が止まるリスクと隣り合わせでコストを削減してきた格好だ。しかし、昨年3月の東日本大震災の際、例えば特定の半導体を生産する工場が被災し、自動車や電機産業で多くの企業の生産に支障が生じたのは、記憶に新しいところだ。

 こうしたリスクを軽減するためには、部材の在庫を多めに持つとか、供給拠点を複数持つといった対策が考えられるが、一方でコストの上昇を覚悟しなければならない。この相反する2つの要素をどこでバランスさせるのか。サプライチェーン先進企業へとステップアップするためのさしずめの勘所は、この点にある。

 しかも想定すべきリスクは、自然災害リスクだけではない。テロやサイバー攻撃、政治リスクなど極めて広範にわたっている。こうした複数の要素をうまくバランスさせることが、今後ますます企業競争力の決め手になってくるだろう。

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