数年後の世界 PCやスマホはどうなっているのか“迷探偵”ハギーのテクノロジー裏話(2/2 ページ)

» 2013年01月11日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]
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スマホはどうか

 筆者は、今のスマホの普及は危険だと考えている。それは昔のPCの比ではなく、初心者のお手本になるような存在がほとんどいないという点であり、それが問題だと感じている。操作方法やOSのバージョンアップ方法などはインターネットで幾らでも解説されている。しかし、スマホの基本をどう学べばよいかという点では、PC教室のようなその模範となる秋葉原のショップやWebサイトがほとんど存在しない。

 このため、PC以上にスマホの危険性やリスクと認識できない若者が多いのである。このままではいったいどうなるのだろうか。年末にある大学院生の自宅に招かれたが、何とPCをインターネットに接続しているのに、「ウイルス対策ソフト」が常駐していなかった。筆者はすぐに「これはまずいでしょう。しかも、君は情報工学が専門だから、なおさらまずいでしょう」というと、彼は平然として「PC内に個人情報がほとんどないし、盗まれても特に困らない。法律で決められているなら入れますよ」と答えた。

 素人なら、その発言は許容されるが、彼は情報工学を学んでいる。筆者は続けて、「専門家の卵としての発言なら、その考えは明らかに間違っているよ。『被害者=加害者』ということは知っているか」と伝えた。だが、「大学院に行くときは節電も兼ねてコンセントから外していますし、私が操作中に加害者になるといっても、せいぜい『不作為の罪』程度なので、捕まることは絶対にないです。それよりも、ウイルス対策ソフトはPCが遅くなるし、お金もかかる」という。筆者は呆れてしまった。知識の問題ではなく、個人の品性に、である。

 数年後、まさにこういう問題がスマホでも実際に起こるかもしれない。いくら啓蒙したところで、本人がこういう考えでは全く効果が無い。スマホ、特にAndroidのウイルス対策ソフトは管理者権限では動作していないため、PCのセキュリティ対策ソフト並みの有効性が無い。一番の対策は「危険なサイトに自ら行かない」ということに尽きるが、上述の青年のような考えでは理解されないだろう。もはや、学校教育や家庭内でのしつけから対処しなければいけないとも考えている。

数年後のPCの技術は……

 PC王座は当面揺るぎないだろうが、確実に王座から転落する日は近づいている。これは時代の流れだ。じゃあ、数年後はどうか。

 PC単体でみると、HDDからSSD化は進むものの、ある程度で頭打ちになるだろう。HDDのドラスティックな技術進歩で、5テラ〜10テラバイト容量の製品が登場するだろうし、そんなに容量を必要としないビジネスでは2.5インチのHDDが主流になるだろう。かつてIBMが開発した「マイクロドライブ」がその革新的な技術でSSDを上回る存在として再登場するかもしれない(筆者の期待)。

 CPUのスピードは今より当然アップするだろうし、性能では定格クロックで10GHz超もあり得る。スレッド数は64に達するかもしれない。メモリ容量は標準で64Gバイト、512Gバイトもあり得るだろう。ただ技術者の弁を借りると、そこまでの容量は実用的では無いので、標準なら32Gバイト程度で落ち着くかもしれない。デスクトップの利用はますます減少して、ノートPC、タブレットPCとの境が無くなっていく。数年後にはその境が既に消滅しているかもしれない。

 スマホはどうか。一部の方には申し訳ないが、シェアでは圧倒的にAndroidが優位に立つだろう。それもGoogleの思惑を超えて、「スーパーAndroid」のようなタイプが登場するかしもれない。そして、1月8日に発表された「テレビをPCとして使えるようにする”Androidスティック」)のような、これまでと全く利用目的が異なるAndroidデバイスがどんどん出現するに違いない。Windows 8も、数年後にはMicrosoftが全力で従来のスマホやタブレットに対抗し、大きなシェアを握るかもしれない。こういう競争は進歩の糧になるので、好ましい状況が生まれることを期待したい。

 ここまでの予想が数年後にどうなるか。それこそ「夢物語」になるかしもれない。ITの活用でもっともっと人が幸せになることを祈願し、この夢物語を終わりとしたい。

萩原栄幸

日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事、「先端技術・情報犯罪とセキュリティ研究会」主査。社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格。2008年6月まで三菱東京UFJ銀行に勤務、実験室「テクノ巣」の責任者を務める。

組織内部犯罪やネット犯罪、コンプライアンス、情報セキュリティ、クラウド、スマホ、BYODなどをテーマに講演、執筆、コンサルティングと幅広く活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。


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