この方は5歳と3歳のこどもを抱えるワーキングマザーであり、1日7時間の短時間勤務契約です。しかも事業支援本部副本部長という立場にある中根弓佳は、ウルトラワークを試行する前からたまに在宅勤務を組み合わせて仕事をしていました。試行中も大きく変わることはなかったようです。
彼女の場合、午前9時から午後5時のコアタイムはミーティングで埋まることが多く、ほとんどの日は会社へ出勤します。ミーティングが続いてコアタイム中にレポートなどを書く時間がないときは午前4時に起きて6時まで仕事をすることもあるそうです。通勤電車の中ではスマートフォンでメッセージやワークフローを確認しています。午後5時に退社した後も就寝まで家事が忙しく仕事をする時間はほとんど取れません。
たまに在宅勤務をしているときは、昼にスーパーへ出かたり、外で布団を干したり、早い時間にこどもを迎えに行けたりできるので非常に便利だといいます。ワーキングマザーの場合、案外そういう小さな用事をこなせることがウルトラワークでの場合一番のメリットなのでしょう。
彼女の友人で保険会社に勤務するワーキングマザーに話を聞くと、仕事を家に持ち帰ることが一切できなければ大変そうだと言います。夕方の帰宅間際になって「今日中に見ていただけますか」と部下などに言われたとき、テレワークの環境があれば、家に帰ってみることもできるので帰宅しやすくなります。
その他の人の場合はどうでしょう。ウルトラワークを最大限活用できそうな営業職の場合、ウルトラワークの試験前と試験中とでは大きな違いは見られませんでした。昼でも何割かの社員は会社内にいます。それどころか、彼らに聞いてみると「時間も場所も決めてほしい」という意見が若手を中心に多く、意外にも驚きました。
どうも周囲の評価が気になるようです。つまり、「仕事をしていると評価してくれるだろうか」「サボっていると思われないだろうか」という不安です。
評価とは、ある価値観に従って価値の高さ(給与など)を順序付けることです。時間や勤務態度、行動プロセスという目視可能な尺度で評価されることに慣れている人にとって、ウルトラワークは期待よりも不安のほうが大きいのでしょう。
ウルトラワークのような自由な勤務形態で求められるのは、個々の社員の自立です。評価に値する価値を自分で考え、アピールするところまでを自身でできる人が、ウルトラワークを心から楽しめるのでしょう。
こうなるとワークスタイルの自由化を実現するには、物理的な業務フローの見直しだけでなく、その他に以下の3点がそろっていなければなりません。
大切なことは、「自由な」ではなく「多様な」です。社内には「自由」を求める人ばかりではなく、「勤勉」を評価されたい人もいます。それはそれで貴重なスキルなのです。
次回はウルトラワークスタイルを支えるサイボウズの勤務制度と人事評価制度についてレポートします。
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