ニュース
» 2013年03月01日 08時00分 UPDATE

“迷探偵”ハギーのテクノロジー裏話:いじめ報道とパワハラの共通点 (1/2)

職場などで問題となるパワハラと、昨今の「いじめ事件」の報道には根本的なところで重なる部分が少なくない。それは一体なにか――。

[萩原栄幸,ITmedia]

 筆者は、毎年企業や自治体からの依頼でコンプライアンス教育を行っている。その中でパワハラにおける考え方と、昨今のマスコミ報道における「いじめ問題」と相当重複している部分があることに気が付いた。今回はこの重なる部分について解説したい。

いじめの原因と「いじめられ役」の心の弱さ

 以前の寄稿でも紹介したことがあるが、筆者は中学時代に徹底的にいじめに遭った人間である。トイレの個室に閉じ込められて、上からバケツの水を浴びせられたり、待ち伏せに合って殴られたり、下駄箱から靴が無かったり、体操着が隠されたこともあった。

 相手は冗談のつもりだが、こっちは必死だ。そういう感性の無いいじめ役の人間が怖かった。「自分がどうして?」と毎日自問自答したものである。多分、いじめていた人間は相手側の心を理解しないのだろう。そのくらい被害者と加害者との間にギャップの生じることがイジメの特性ではないかと以前から考えていた。

 当時の担任に告白もしたが、担任は当時としては有名な教育者であり、自分の担当するクラスでいじめがあるという事実を認めたくなかったのだろう。筆者の告白を信じず、成績優秀だったクラス委員の「ふざけているだけじゃないのでしょうか 萩原君も笑っていましたよ」という証言を優先した。逆に怒られたのである。筆者はそれ以降、卒業まで必要以外の話をしなくなり、同窓会などにも全く参加していない。

 当時のことを論理的に考えてみても、担任の行動は誤っていると思えた。「なぜクラス委員の話だけを信じて、私の話を信じてくれなかったのか?」と聞いてみたかった。これは長い間疑問だった。しかし、成人して自分がそれなりの年齢になると分かり始めてきたのである。それは、いじめられ役の人は、それを周囲の知人や大人に気がつかれることを極端に嫌う。だから、わざと笑ったり、ふざけているような振る舞いを自然としていたのだ。教育者にそういう配慮が無いのは極めて残念であることには変わらないが。

マスコミや評論家の誤解

 以前に比べると少なくなったが、今でもテレビで一部の評論家や芸能人などが、「いじめられる側にも多少責任がある」と発言している。

 はっきり言えば、この種の発言には「冗談じゃない! 無責任だ!」と叫びたくなる。筆者は同世代のいじめ経験者と話をしたり、当時に傍観者だったクラスの人間にも聞いたりしてみたが、原因のきっかけは本当につまらないことだった。

 次のようなケースがきっかけになることもあるだろう。

  • 入学式のスカートが他人より数センチ短かった
  • クラスの権力者との間にささいなトラブルがあった。もしくは目をつけられた
  • 難聴者だった

 筆者は以前、「吃音者」だった。今でも疲れるとそうなるが、小学生の頃に学校の紹介で何回か大学病院や吃音研究所に行かされてとても恥かしかった。足の不自由な人が普通の人に比べて動きが悪かったり、車イスで登校したりしていじめられる場合、こういう評論家や芸能人はどう言うのだろう。本人に「キミにも多少責任がある」と話せるだろうか。極めて不快な発言である。

いじめている方にも罪悪感がある?

 いじめた方の大部分は、実は驚くほどに罪悪感がない。というより、20年以上経って話すと、「えっ! 俺ってそんなことしたっけ? 記憶にもない」といじめ役だった人間の大半がいう。決して嘘ではない。同じ境遇の人に聞くと、同じような状況だという。つまり、根本的には他人に対する思いやりという感性が無いらしい。

 この感情は、遺伝ではなく教育(道徳や品性に近い教育)により伝達するものであるのだと筆者は理解している。このことは、情報セキュリティ教育における「社内不正における真の原因」の中でも出てくる感情だ。職場におけるいじめにも通じる部分がある。マスコミは決してそこまで深掘りをしない。残念である。

 いじめによる自殺や遠隔操作ウイルス事件でも同様だが、マスコミはあまりにも偏った内容を連日放送しているように思える。それを信じた一部の方が、「この教師はとんでもない! 死刑にすべきでは?」と話しているのを聞いた。筆者は取材していないので良く知らないが、関係者のブログなどを見る限り、「決して極悪人ではないのでは?」とも思える。顔を出してOBや生徒の親が、「先生を助けてあげて」と表明していることは、ヤラセとは到底思えないのである。

 マスコミは、自分たちの報道が与える世間の影響を考えているのか。ヒステリックなほどの偏りと思われる報道が一部にある。これでは、ますます現場の先生方は教育が大変になるだろう。同情しかない。たぶん、現場では何か子どもたちが世間からみて非常識な行動や言動をした際に、先生が注意すると、スレタ子どもなら「体罰ですか〜」「私はこれで学校を辞めましたっていいたいわけ?」ということを平気で言うだろう。しかも世間ではこういう状況である。悔しくて涙を流す熱血漢の先生方が多数いるに違いない。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ