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» 2013年03月12日 10時00分 UPDATE

「ものづくりニッポン」復活へ:打ち寄せるグローバル化の波 日本の製造業が生き残るためのIT戦略とは?

アジアを中心とする新興国の発展に伴い、日本の製造業を取り巻く環境は複雑性を増している。生産や組み立ての価値が希薄化する中、日本企業がグローバル市場で勝ち抜くための戦略とは。製造業向けのセミナーからヒントを探った。

[PR/ITmedia]
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 グローバルでの技術水準の向上や新興国の発展など、日本の製造業を取り巻く環境は複雑性を増している。こうした難局を打開すべく、「経営戦略」と「IT戦略」の両面で製造業の新たな活路を提言するセミナーが、2月にインターネットイニシアティブ本社(東京・神田神保町)で開かれた。

 「グローバル時代の製造業戦略 〜メイドインジャパン 逆襲のストーリー〜」と題したこのセミナーでは、テクノロジの発展が製造業に及ぼす影響、コモディティ化が進むものづくり市場での戦い方、グローバル市場で勝ち抜くためのIT戦略の方向性などが示された。以下ではその様子を紹介しよう。

ITの進化を捉え、ビジネスの新たな活力に

photo インターネットイニシアティブの保条英司氏

 「企業ITには大きな変化が起きつつある」――こう話すのは、インターネットイニシアティブ(IIJ)専務取締役の保条英司氏。セミナー冒頭に登壇した同氏は「モバイルネットワーク」「スマートフォンなどのソーシャルデバイス」をはじめとするITの発達と、それに伴う企業のデータ活用の方向性について説明した。

 高性能のモバイル端末やLTEなどの高速通信インフラの普及により、個人が生み出すインターネットトラフィックは増大し、同時アクセスによるサーバへの負荷も急増している。こうした中、企業のデータの扱い方には業種別で差が広がりつつあるという。

 保条氏によると、例えばソーシャルゲーム業界では、モバイル端末からの同時・大量アクセスを処理するため、1つのゲームタイトルにつき数百台のクラウドサーバを専有している。これに対して製造業は、グローバルにビジネスを展開している場合であっても、生産管理システムをわずか数台の仮想化済みクラウドサーバで運用しているケースもある。

 製造業はインターネット業界などと比べてデータと縁遠い業種と思われがちだが、同氏が1つの事例として注目するのは、ソーシャルメディア上のデータを分析してマーケティング活動に生かす「ソーシャルリスニング」というアプローチだ。これにより、製造業もネット上に広がる“ユーザーの声”を収集、分析し、自社のイメージ向上や製品開発の強化につなげられる可能性があるという。

 製造業のビジネスには、財務会計システムや生産管理システムなど幅広い業務システムが欠かせない。だが今後は既存システムにかかるコストを仮想化やクラウドサービスの活用で削減し、代わりに大量のモバイル端末に向けた新規事業や、モバイル端末から生み出されるソーシャルデータを活用するシステム基盤の構築などに投資していく動きが本格化すると保条氏は予見する。

グローバル化がもたらす製造業の根本変革

photo 三菱商事の岩野和生氏

 次いで登壇したのは、三菱商事でビジネスサービス部門 顧問を務める岩野和生氏。同氏は「オープン化する社会における製造業の針路」と題し、製造業を取り巻く環境の変化と、最新のテクノロジが製造業にもたらすインパクトについて解説した。

 ものづくりを「デザイン」「ビルド」「オペレーション&メンテナンス」の3つの要素に分けると、かつてはビルド(生産、組み立て工程)が製造業の主軸であった。だがここ10年ほどで、従来の生産方式では利益を生み出すのが急速に難しくなりつつあるという。

 その原因の1つは、国や地域に合わせて生産物を変える「リージョナライゼーション」の進展だ。例えば、韓国Samsung Electronicsをはじめとする携帯電話メーカーは、今では国や地域別に異なるラインアップの製品を提供している。こうした方式では製品1種類当たりの生産量が減るため、生産や組み立て工程で競合他社と差別化するのが難しくなっているという。

 「かつては少品種の製品を、いかに安く、品質よく大量生産するかが重要だった」と岩野氏は振り返る。だが現在では、製品を提供する地域ごとに合わせたアフターサポートの提供こそが、製造業の新たな差別化のポイントになりつつあるという。

 また今後、個人1人1人の嗜好に合わせて生産物を変える「パーソナライゼーション」の動きも加速すると岩野氏はみる。こうした生産方式は製品当たりの生産数が非常に少ないため、従来は生産コストとの兼ね合いで成り立たなかった。だが今後、3Dプリンタなどを使って個人がモノを作れるようになれば、個人向けにデザインデータを提供することが製造業の新たなビジネスになる可能性もあるという。

 「日本の製造業は“ものづくり”にこだわってきたが、モノはそれ単体で価値を生み出すのが難しくなりつつある。今後はモノを内包したソリューションを提供することが、日本の製造業の新たな競争力の源泉になるだろう」(岩野氏)

ものづくりのエコシステムを変革、デザインとサービスで差別化を

photo ブリスコラの今岡裕輔氏

 ものづくりの価値が変容する中、日本の製造業はどのように体制を立て直すべきか。続いて登壇したブリスコラの今岡裕輔氏(クラウド戦略コンサルティング本部 統括本部長)は、ものづくりの“エコシステム”を変える必要があると指摘する。

 ものづくりのデジタル化やモジュール化の進展に伴い、生産や組み立てなどの工程は新興国の企業に安価で委託できるようになった。そこで今後は、自社を中心とした垂直統合的な体制で生産活動を行うのではなく、ものづくりの各工程で外部のパートナー企業と柔軟に連携していくことが重要になるという。

 パートナーとの連携で成功した企業の例として、今岡氏は米Appleを挙げる。「Appleは自ら工場を持たずに世界中の優秀な部品を集め、自社で設計したデザインを基にそれらを組み合わせている。そうした企業が成功を収めていることは驚異的であり、従来型の製造業で働く人も無視できないはずだ」(今岡氏)

 また、社内外のデータを分析、活用し、顧客向けのサービスを従来型の商材(モノ)に組み込むことも競争力強化につながるという。例えばコマツ建機販売では、販売する建設機械に取り付けたセンサーでデータを集めて分析することで、ユーザーの資産管理を支援するアフターサービスを提供しているとのことだ。

 こうしたパートナーとの連携やデータの活用を実現するためには、柔軟なITインフラの構築が求められると今岡氏は話す。「企業を取り巻く環境変化のスピードが増し、取り扱うデータも増大する中、従来のサイロ型のITシステムでそれらに対応するのは難しい。そこで今後は、クラウドサービスをはじめとする社内外の最適なモジュールを組み合わせ、あらゆるデータが連携できる基盤を用意し、伸縮自在のITインフラを構築していくべきだ」(今岡氏)

 これに合わせ、IT部門に求められる役割も変わっていくという。「業務部門の期待を上回る価値を提供できるシステムを構築するため、IT部門はサービス選択の“目利き力”を高めていくことが重要になるだろう」(今岡氏)

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クラウド選定のヒントは――ITRのアナリストが解説

photo アイ・ティ・アールの金谷敏尊氏

 では、企業はクラウドサービスをどのように選ぶべきか。続いて登壇したアイ・ティ・アール(ITR)の金谷敏尊プリンシパル・アナリストは、企業がクラウドサービスを選定する上で考慮すべき点について説明した。

 金谷氏によると、企業内システムの中で特に早くクラウド化が進むのは会計システムで、今後は約5割の会計システムがクラウドサービスで構築される見込みという。そのうち約3分の2を占めるのがプライベートクラウドだ。「日本企業の多くはデータを他社に預けることに抵抗があり、プライベートクラウドを志向する傾向がある」(金谷氏)

 だがプライベートクラウドの場合、自社でサーバなどのハードウェアを抱える形になるため、パブリッククラウドの利点である「拡張性」や「スケールメリット」を享受できないデメリットもある。そこで金谷氏が提案するのが、パブリッククラウドとプライベートクラウドの特徴を併せ持つという「バーチャルプライベートクラウド」(VPC)だ。

 VPCは、データセンター事業者などが持つ共有ITリソースを、インターネットを介さずに専用線で企業のITシステムと接続するアプローチだ。したがって、パブリッククラウドの拡張性を確保しつつ、比較的セキュアな環境でクラウドリソースを利用できるメリットがある。

 「企業がIT資産をクラウド化する場合、インターネットと接続したくないなどさまざまな要望があるはずだ。だがプライベートクラウドやオンプレミスシステムでは、ビジネス環境の変化に合わせて柔軟にITリソースを拡張したり縮小したりするのが難しい。したがって、共有リソースのメリットを得られるVPCの利用が望ましいと言えるだろう」(金谷氏)

 また、VPCはプライベートクラウドと比べて価格優位性もあるという。「クラウド移行にかかる資源調達や運用、移行費用や機会損失などを含めたTCO(トータルコスト)を試算したところ、VPCはプライベートクラウドと比べてコスト削減効果が高いことが分かった」と金谷氏は話している。

“持たざるプライベートクラウド”がもたらすITインフラの柔軟性

photo インターネットイニシアティブの喜多剛志氏

 「プライベートクラウドの課題は、ユーザー企業自身がハードウェアのアセットを持ち、保守や運用もする必要があることだ」――IIJでプロダクトマーケティング部 GIOビジネス推進課長を務める喜多剛志氏はこう話す。

 同氏によると、企業がプライベートクラウドを構築、運用する場合、実質的なトータルコストが構築前の予想よりも下がらない場合があるという。「プライベートクラウドを構築するためにはスペックの高いハードウェアが必要となるほか、周辺構築やソフトウェア費用も含めたトータルコストが下がらず、運用コストが上がるケースもある。一方で、企業の要件を満たすパブリッククラウドも少ない」(喜多氏)

 そこで同社が提案するのは、サービス事業者が持つIT資産をユーザー企業が専有利用する「デディケイテッドプライベートクラウドサービス」(IDC Japanの定義から引用)というアプローチだ。この提供方法ではVPCと同様に、事業者のデータセンターリソースを活用するため、使用するITリソースを自由に拡張したり縮小したりできる特徴がある。また短期的な利用もできるほか、運用主体を自社やパートナー企業など柔軟に選べるメリットもあるという。

 IIJでは、同社のパブリッククラウド「IIJ GIO」上にユーザー専用の仮想化環境を構築して提供する「IIJ GIOコンポーネントサービス 仮想化プラットフォーム VWシリーズ」を提供している。同サービスではWindowsやLinuxなど特定のOSを搭載せず、VMwareの仮想化基盤ごと提供するため、ユーザー側でOSを自由に選択できる特徴があるという。

 これによりユーザーが使用している既存のソフトウェアライセンスを持ちこめるほか、ソフトウェアを提供するポータルサイトも用意。迅速な仮想環境の構築を支援するという。さらにVMwareの管理コンソールをそのまま提供するため「オンプレミスと同等の自由度を実現する」(喜多氏)としている。

 「これまで企業が求める要求を満たすVWシリーズのようなサービスはなかった」と喜多氏は力を込める。仮想化基盤そのものをサービスとして提供し、ユーザー企業のITシステムと接続して利用できるようにすることで「ユーザーにとっての“持たざるプライベートクラウド”を実現する」と喜多氏は話している。

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 日本の製造業を取り巻く環境が複雑性を増す中、パートナー企業との連携やデータを活用したサービスの提供が重要性を増すことは間違いない。それらを実現するためのITインフラ構築に当たっては、ビジネス環境の変化に合わせてITリソースを柔軟に拡張/縮小できるVWシリーズが1つの選択肢となりそうだ。

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提供:株式会社インターネットイニシアティブ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2013年4月30日

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