「課題先進地」としての東北は今――3.11にIT企業が議論(2/2 ページ)

» 2013年03月13日 08時00分 公開
[石森将文,ITmedia]
前のページへ 1|2       

 国内には労働人口の減少を課題とする自治体が多い。被災した東北地方の各自治体も同様だ。ある意味東日本大震災は、緩やかな過疎化を一気に顕在化させることとなった。

 こういった課題を解消するには、復興だけでなく、経済活動の再構築が必要になる。当日行われたパネルディスカッションに参加した藤井靖史氏(アップルなどを経てピンポンプロダクションズを起業。2012年5月にKlabのM&Aを受ける)は「今や東北は“課題先進地”。日本の、そして世界のどこかの未来が東北だ」と指摘する。「ICTによる経済活動で東北を発展させられれば、その手法が世界のスタンダードになるはず」(藤井氏)

 日本IBMで東北復興支援事業部の担当部長を務める後藤浩幸氏も「復興予算はどうしても目の前の土建事業重視になる。ICTのビジネスを現地化することが長期的な発展には重要」と話す。被災地域を中心にインキュベーション活動を行う一般社団法人MAKOTOの竹井智宏 代表理事も「震災後のマジックアワーは終わりつつあると考えるべき」と指摘する。

 同時に竹井氏は「今が東北にとってのチャンス」と話す。「東北は期せずして最先端になった。国内だけでなく海外からも注目されている。こんなに起業しやすい場所はない」(竹井氏)

 震災前から東北地方で企業経営をサポートしてきた監査法人トーマツの谷藤雅俊氏は「(2005年にアメリカで発生したハリケーン)カトリーナの被災地域では起業率が上がった」と紹介する。実際、竹井氏によると東日本大震災の被災地域では起業数が全国平均のおよそ1.5倍になっているという。

 ディスカッションの司会を務めた佐々木氏は「東北の経済界には変革しなければいけない責任がある。その結果として、日本や世界によい結果をもたらすことができれば」と話す。

東北大の学生による1000億円の「壮大」な事業計画

VoIPという巨大な寡占市場の中でメガニッチを獲得するという

 当日は在仙のIT企業を中心にライトニングトークが行われたが、なかでも印象深かったのは、スマホで恋愛相談ができるVoIPサービス「SATORIBA(サトリバ)」。東北大学の学生グループによるプロジェクトで、代表は渡辺聡氏だ。

 渡辺氏自身が恋愛に失敗してきた経験をもとに開発したといい「気持ちを理解したい/されたい」というニーズに対するサービスだという。

 SATORIBAのユーザーは、登録時の属性情報をもとに異性同士がマッチングされる。そこで恋愛相談のトライアンドエラーを繰り返すことで、本命の異性を口説くシミュレーションができる仕組みだ。

 「VoIPは、LINEやcommなどによる巨大な寡占市場」と渡辺氏は分析する。「Facebookは“大学”に着目しLINEは“スタンプ”で伸びた。SATORIBAは“恋愛”にフォーカスしメガニッチを取りに行く」

 「そもそも恋愛相談とVoIPは相性がいい」と渡辺氏。5年の売上が200億円、10年後は実に1000億円という「壮大」な事業計画を引っ提げて、クラウドファンディングで出資を募っている(3月12日現在)。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ