ワークスタイル変革と生産性向上への取り組みで実感した工夫と課題次世代オフィスの進化論(1/3 ページ)

場所にとらわれない働き方とオフィス環境を追求した「Thin Office」を構築するクオリカ。連載の最終回は、ワークスタイル変革やオフィス改革への取り組みを通じて同社が実際に感じたメリットや今後への取り組みについて、社員へのアンケートを交えて紹介する。

» 2013年04月30日 08時00分 公開
[会田雄一(クオリカ),ITmedia]

 これまで3回の連載で、クオリカが自社を次世代オフィスにするために導入した3つの根幹システム「仮想デスクトップ(VDI)」「SSL-VPN」「BYOD」の概要と利用実態を紹介してきた。クオリカの新オフィス(Thin Office)ではこの他に、クラウド型のコラボレーションサービスであるGoogle Appsと、クラウド型のユニファイドコミュニケーション(UC)サービスであるWebEXを導入し、活用している。また、座席をフリーアドレスにし、コラボレーションエリアを設けるなど、オフィス設備の面でも新しい方法を導入した。今回は、これらのクオリカの取り組みについて、また、新しいオフィス全体の活用効果と課題についても紹介する。

クラウドサービスを積極的に活用

 最近のクラウドサービスは、PCやモバイル機器をうまく活用し、便利なサービスを安価に提供している。災害に強いことは東日本大震災で証明された。セキュリティを含む信頼性や安全性も堅牢なものが多い。クオリカではこれらを積極的に社内システムの一部として導入し、活用している。既存のシステムと置き換えるのは大変だが、発想を変え、既存のシステムはそのまま継続して活用し、既存の製品やサービスには無かったり、便利だったりする機能を重点的に活用することにした。また、クラウドサービスなので導入も容易であり、期待する効果も早期に実現できる。

 今はクラウドサービスの普及期であり、クラウドサービスに「完璧」を求めるにはまだ無理がある。「巧遅よりも拙速」で、便利な機能から活用を開始し、早く効果を享受するのが、賢い使い方だろう。

Google Apps for Business の導入と活用

 メール、カレンダー、情報共有、などを実現するための新しいコラボレーションツールとして「Google Apps for Business(以下Google Apps)」を選定し、導入した。(図1

図1:Google Apps for Businessの利用

 Google Appsの選定理由は、コラボレーションに必要な機能が充実しており、機能強化のスピードも速いこと、また、法人用にはセキュリティを含めた十分な管理機能が提供されていること、そして、利用料が安価なことである。ワークスタイル変革の観点から最も期待したことは、スマートフォンやタブレットとの間で、メールやカレンダーの同期ができることだ。これが実現できれば、コミュニケーションの利便性やスピードはさらに改善できる。

 クオリカは、社内のコラボレーションツールとしてNotesを10年以上使用してきた。社内のワークフローやデータ共有の仕組みの大半はNotes上で運営されている。顧客のNotesと相互接続して連携しているものもある。これらは簡単には切り替えができない。

 まず、メールとカレンダーをNotesからGoogle Appsに移行した。また、移行と同時にスマートフォンなどとの同期を開始した。新たな情報共有や情報発信は、Google DriveやGoogle Sitesを活用することにした。Notesに比較して、とても便利になっている。ただし、ワークフローや他社との連携の機能などは、今もNotesを継続して利用している。Google Apps導入の目的は「クオリカのコラボレーション能力を改善する」ことであって、「Notesの廃止」ではない。業務システムの変更は、業務改革の一環として別計画で実施する予定だ。

WebEX Connectの導入と活用

 電話やチャット、Web/テレビ会議などを実現するためのUCツールとして、Cisco Systemsが提供するクラウドサービスである「WebEX Connect」を導入した。(図2

図2:WebEX Connectの利用

 クオリカ社員は、どのVDI端末からでもこれらの機能を利用することができる。VDI端末の上でWebEXを本格的に利用するのは世界でも珍しい事例だが、大きな問題は生じていない。自宅のPCやモバイル端末からインターネット経由でつなぐこともできる。

 Web会議もテレビ会議も、社員だけでなく、お客様やビジネスパートナなどにも参加してもらうことができる。主催者のクオリカ社員が参加者を特定して招待メールを発行し、参加に必要な情報を伝えれば良い。相手先にPCやタブレットがあり、それがインターネットにつながり、Webが使えれば良いので、つながらない相手はいない。

 UCの機能の中で最もよく活用されているのはWeb会議だ。プレゼン資料などをWeb上で共有しながら音声ベースで会議が進められる。参加者のデスクトップを全員で共有できるため、プレゼン資料などを参加者が共有しながら、その場で協同して編集することも多い(写真1参照)。Face to Faceの会議に完全に置き換えることはできないが、Face to Faceの会議回数を減らすことに役立っており、移動時間や工数、交通費などが削減され、生産性が上がっている。

 また、どこにいても会議に参加できるので、有識者の参加や早期の会議セットも可能になり、会議の質の向上や、意思決定の迅速化に貢献している。チャットも、短期間で若手の社員を中心に利用されるようになった。電話だと相手が出られないことが多く、電子メールだとスピード感が遅い。手頃なコミュニケーション手段として活用されている。

写真1:Web会議の共有画面(Thin Officeの資料をテレビ会議を通じて共同編集している様子)
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