ワークスタイル変革と生産性向上への取り組みで実感した工夫と課題次世代オフィスの進化論(2/3 ページ)

» 2013年04月30日 08時00分 公開
[会田雄一(クオリカ),ITmedia]

スマートフォンとタブレットのBYOD

 個人所有機器をVDI端末として使用する際のルールについては前回ご紹介した。スマートフォンは、画面サイズが小さいので実用上はVDI端末として使用されず、メールの閲覧や発信、カレンダーの確認などが主になると想定した。そこで、スマートフォンのBYODについて、次の4点を基本方針として定めた。

  1. BYODで利用する用途は電子メールとカレンダーへのアクセスのみとし、アクセスする方式はGoogle Appsと同期する方式に限定する。スマートフォン接続のセキュリティ対策の基本部分はGoogle Appsを活用する
  2. BYOD対象の機器にはパスコードチェックや暗号化など、管理者が指定したセキュリティポリシーを所有者が自ら適用する。同期ごとにこのポリシーが適用されているかどうかを確認し、確認できた機器とのみ同期を許可する
  3. BYOD対象の機器を所有者が紛失したり、盗難に遭ったりした場合、所有者は速やかに会社に届け出る。また、所有者自身がリモートワイプ(通信網経由の機器初期化)を実行する
  4. 対象機種はAndroid搭載のスマートフォンとタブレット、iPhone、iPadとする。iPadはVDI端末としてBYODを申請することも認める

 セキュリティポリシーの適用や紛失時のリモートワイプなど、BYOD利用者に負担はかかるが、現在リーダークラス以上を中心に270人、社員の約3分の1が申請し、個人所有のスマートフォンやタブレットでGoogle Appsと同期を行っている。想定していたよりも、利用者は多い。筆者も利用しているが、とても便利だ。

 また、セキュリティの条件を満たすのは面倒だが、対策自体には十分に納得感がある。なにしろ、筆者のスマートフォンには大切な家族や友人の個人情報が入っている。紛失や盗難に対応することは当然のことだ。

フリーアドレスとコラボレーションエリア

 クオリカの新本社のオフィスでは、座席をフリーアドレスにした。コスト削減のために席数を削減したわけでは無く、新本社勤務の人数分の座席は設置してある。

 各座席には共用の24インチディスプレイとゼロクライアントのVDI端末を設置した。また、セキュリティや環境ECO、生産性などから、デスクの引出しや、デスクサイドの文書キャビネは設置しないことにした(写真2参照)。こうすると、社員はどの座席に座っても同じように仕事ができる。結果的に「社員は特定の座席に座る必要性がなくなった」というのが実態だ。

写真2:デスク周辺

 原則として、社員はどこに座ってもよいことにしている。その他の事業所の社員が立ち寄った時も同様だ。ただし、同じ部やチームのメンバの近くに座る方が、コミュニケーションが容易で仕事がやり易いため、大まかに事業部や部、チームなどの着座エリアを決めている。

 新オフィスでは会議室、応接室、研修室などの他に「コラボレーションエリア」を設けた。打合わせが必要な時、空いていれば何時でも打合せができるエリアだ(図3)。

図3:クオリカ新本社の平面図とコラボレーションエリア

 オフィスの中央部と窓際に12ブース分のスペースを設け(写真3および4参照)、(1)6人程度が打合せできるテーブル、(2)42インチか24インチの高精細ディスプレイ付VDI端末、(3)ホワイトボード――からなる3点セットを配置した。もちろん、テレビ会議やWeb会議もできる。ホワイトボードの内容は、参加者がスマートフォンで撮影し、メールでアップして共有する。

 社員からはとても好評で、利用率も高い。移転前に比べ、予約制の会議室などと合わせたコミュニケーションスペースは倍増した。課題の検討や意思決定の迅速化を期待している。

写真3(左):6人用打合せブース 写真4(右):コラボレーションエリア

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