日本IBMが始めた地域イベント“第2弾”への意気込みWeekly Memo

日本IBMが先週、福岡でプライベートイベントを開いた。昨年来、全国地域での営業展開に力を入れる同社の新たな取り組みに注目してみた。

» 2013年04月30日 08時00分 公開
[松岡功,ITmedia]

始まった「IBMリーダーズ・フォーラム」第2弾

 「本日は1日をかけて皆様との関係をより深いものにしていきたい」

 「IBMリーダーズ・フォーラム2013 Spring 西日本」で話す日本IBMのマーティン・イェッター社長 「IBMリーダーズ・フォーラム2013 Spring 西日本」で話す日本IBMのマーティン・イェッター社長

 日本IBMのマーティン・イェッター社長は4月24日、同社が福岡市内のホテルで開いた「IBMリーダーズ・フォーラム2013 Spring 西日本」の冒頭でこう挨拶した。

 IBMリーダーズ・フォーラムは、全国地域の営業強化策として同社が昨年7月に支社を開設した東北(仙台)、中部(名古屋)、関西(大阪)、西日本(福岡)の4地域で開催しているプライベートイベント。昨年秋に続いて、今回は「2013 Spring」と銘打った第2弾。福岡を皮切りに5月中に残り3地域で順次開催する予定だ。

 各地域の産・官・学の「リーダー」を招いた同イベントは、昨年5月に日本IBMの社長に就任したイェッター氏の肝いりの活動で、同社幹部も顔を揃える力の入れようだ。昨年秋の第1弾は、同社にとって地域展開に「本気」で取り組む姿勢を見せるところから始まった印象があるが、今回の第2弾はテーマをより鮮明に打ち出そうという意気込みが感じられた。

 その口火を切ったのは、イェッター氏の挨拶での次の発言だった。

 「IBMが定期的に実施している世界のCEO調査で、自社に最も影響を与える経営上の要因を聞いたところ、昨年初めてテクノロジー、つまりはITの利活用がトップになった。まさに経営の最重要テーマとなったITの利活用において、IBMは皆様の強力なパートナーとして貢献していきたい。そこで今回は、皆様のビジネスの成長に貢献するビッグデータ活用およびスマーターコマースについてご紹介したい」

 これを受けて、日本IBMで開発製造部門を担当する久世和資執行役員が「先進テクノロジーによるビジネスの変革」と題して講演を行い、「コールセンターの生産性向上とリクスの軽減」や「オープン&ソーシャル・データの市場分析による品質管理」などのビッグデータ活用に関連したIBM東京基礎研究所の研究成果を紹介。「世界中に60カ所以上あるIBMの研究開発拠点が生み出す先進のテクノロジーを大いに活用していただきたい」と強調した。

 その後、ビッグデータ活用およびスマーターコマースについて、それぞれに事業を担当する責任者がIBMのソリューションを紹介。さらに、ビッグデータ活用では西鉄情報システム、スマーターコマースでは千趣会マーケティングサポートの代表者が、顧客の立場から先進事例を披露した。

地元政財界の大御所がビッグデータ活用の課題を指摘

 そうした中で、同イベントのプログラムとして最も注目を集めたのは、地域の有力者によるパネルディスカッションだった。パネリストとして登壇したのは、福岡空港ビルディングの麻生渡社長、九州旅客鉄道の石原進会長、そして日本IBMの高橋倫二執行役員 西日本支社長の3人。RKB毎日放送メディア事業局の納富昌子専門局長がモデレーターを務めた。

 左から、RKB毎日放送の納富氏、福岡空港ビルディングの麻生氏、九州旅客鉄道の石原氏、日本IBMの高橋氏によるパネルディスカッション 左から、RKB毎日放送の納富氏、福岡空港ビルディングの麻生氏、九州旅客鉄道の石原氏、日本IBMの高橋氏によるパネルディスカッション

 麻生氏は元福岡県知事・全国知事会長、石原氏は福岡経済同友会代表幹事をはじめ九州の経済団体の要職をいくつも兼任する、まさに地元政財界の大御所である。それだけに、話題は地元を中心とした経済状況からアベノミクス、エネルギー、雇用、人材育成、ビジネスへと広がっていった。

 ITの利活用についても両氏は、「企業にとってはITをどう生かすかが、今後の自らの盛衰を決めると言っていい」(麻生氏)、「今後のビジネスはITの利活用で決まると、経営者は心底認識すべきだ」(石原氏)と、強い口調で訴えた。ただ、そうした認識の深い両氏だけあって、ビッグデータ活用については次のような指摘があった。

 「ビッグデータを分析しても過去からの連続的な動きがわかるだけではないか。不連続な動きが少なくないビジネスに本当に生かすことができるのか」(麻生氏)

 「鉄道にも例えば定期券のように生かされていない膨大なデータがあるが、果たしてそれをどう分析すればビジネスに生かせるのか。具体的な提案をいただきたい」(石原氏)

 これに対し、高橋氏は「ソーシャルネットワークを含めた社内外の幅広いビッグデータを分析できるようになってきたことで、ビジネスへの活用領域は大きく広がりつつある」と説明したものの、両氏の指摘に対しては直接言及しなかった。

 それは当然かもしれない。なぜならば、麻生氏が言う「不連続な動き」も石原氏が言う「定期券データの活用」も、ビジネスごとのマーケティングノウハウが不可欠だからだ。それにしても、両氏の指摘はまさにビッグデータ活用の核心を突くものである。こうした大御所の見解を聞くことができるのもこのイベントならではだろう。

 ITの利活用でも特にビッグデータ活用とスマーターコマースをテーマにスタートしたIBMリーダーズ・フォーラムの第2弾。日本IBMでは今年秋にもテーマを広げて4地域での第3弾の同イベント開催を計画しているという。その意味では、今年が同社にとって地域展開での確かな成果を上げられるかどうかの正念場になりそうだ。

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