“電子ペーパー”の新用途を開拓 大日本印刷が目指す世界とは

紙感覚で利用できる極薄の表示装置である「電子ペーパー」。ただし、その用途は電子書籍のリーダーなどに限られているのが実情だ。そうした中、大日本印刷が電子ペーパー市場の拡大に向け提案に力を入れているのが「電子ペーパー表示システム」である。同社の戦略とは果たして――。

» 2013年05月02日 10時00分 公開
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電子ペーパーの普及を加速させるために

 日本初の本格的な印刷会社として1876年に誕生した大日本印刷(DNP)。同社は創業以来、“印刷”を核に技術に磨きをかけることで業界をけん引し、業容を着実に拡大させてきた。その事業領域は雑誌や書籍の印刷のみならず、カタログやPOPなどの商業印刷や包装材、さらにはICカードやディスプレイ用部材、半導体用の電気・電子部材に至るまで極めて多岐にわたる。

 そんな同社が近年になり注力する新事業の1つが「電子ペーパー」だ。電子ペーパーとは文字通り、紙感覚で利用できる極薄の表示装置のこと。反射光を表示に利用するという技術的な特性から、液晶ディスプレイと比較し明るい場所でも視認性に優れ、表示変更時にのみ電力を使うため消費電力が非常に小さく、電源を切っても表示を保てるのが特徴だ。

 電子ペーパーは紙の代替として大きな期待を集め、さまざまなメーカーにより技術開発が進められてきた。もっとも、その用途は現状では電子書籍リーダーなどの分野に限られているのが実情だ。

 こうした現状を打開すべく、DNPが提案活動を推進しているのが「電子ペーパー表示システム」である。同システムは電子ペーパー端末の「ドットマトリクスサイネージ(DMS)」と、DMSの表示管理用サーバ、専用アクセスポイントにより構成され、表示管理用サーバからの指示によりDMSに搭載された電子ペーパーの表示変更をリモートで可能にしたものだ。DNP 電子システムセンター システム技術部で部長を務める吉野伸二氏は「電子ペーパーの利用は着実に進みつつあるものの、現段階では用途はごく限られていると言わざるを得ない。ただし、指示や表示を必要とする場面は我々の日常において至るところに存在する。そうしたニーズに幅広く対応を図り、電子ペーパーの新たな用途を開拓することこそ我々が電子ペーパーシステムを手掛ける一番の狙いなのだ」と強調する。

製造現場での“紙”にまつわるコストを一掃

 DNPが電子ペーパー表示システムにより開拓を狙う領域の1つが製造現場である。工場の製造ラインでは従来、製品に添付された紙ベースの作業指示書を基に作業が行われてきた。そこでの紙の消費量は大手自動車メーカーともなると1日あたり数万枚に達するのだという。これほどの量となれば、紙コストだけでも無視できない額に上る。加えて、印刷機器のメンテナンスやサプライ品、さらに作業指示書の廃棄コストも負担する必要があった。

大日本印刷 電子システムセンター システム技術部 部長の吉野伸二氏 大日本印刷 電子システムセンター システム技術部 部長の吉野伸二氏

 だが、電子ペーパーシステムの利用を通じて、紙にまつわるこれらの課題を抜本的な解決を見込むことが可能になる。

 「紙ベースの従来からの運用では、印刷された作業指示書を各工程に届けるために人的コストも負担する必要があった。対して、電子ペーパーシステムであれば、工場の生産ラインを管理するMES(Manufacturing Execution System)システムと連携し、DMSに表示させる作業指示書を適宜、遠隔から切り替えることで、あらゆるコストを削減できるのだ」(吉野氏)

 生産現場では、組み立てに急を要する“特急品”や“緊急試作品”などがラインを流れることもしばしばだ。その際には、通常の製品は一時保管棚などで保管されるものの、実はそのことが忘れられ、製品を探す作業が発生することも少なくないのだという。

 しかし、電子ペーパー表示システムは1台ごとに異なる表示指示が出せるよう、DMSにユニークIDが割り振られており、ユニークIDとアクセスポイントの設置場所を突き合わせることで、製品がどの工程にあるのかを特定するための仕組みも整備できる。DNP 電子システムセンター システム技術部 エキスパートの西本充利氏は、「ラインの製造装置にトラブルが生じた際には、従来であれば問い合わせのやり取りに時間を要し、その間、ラインを止めざるを得なかった。だが、MESと電子ペーパー表示システムを連携させることで、代替ラインに製品を誘導するようDMSの表示を切り替えられるようになり、トラブルの影響を最小限にとどめられるようになるのだ」と説明する。

 電子ペーパーのサイズは4.4インチ、画素数は320×192ドットであることからバーコードなども表示可能。既存のバーコードシステムといったIT資産を引き続き活用することもできる。

基地局設置のための技術やノウハウも提供

 メーカー各社は生産ラインの生産性を最大化すべく、長年かけて作業指示書を見直し続けてきた。作業指示書は、いわば各社のノウハウの集積とも言え、そこには独自のこだわりもある。このことを踏まえ、電子ペーパー表示システムでは表示管理用サーバにフォーム作成機能を実装。XMLによりレイアウトの自由な定義を可能にし、紙とほとんど変わらぬ視認性を実現した。また、MESなどの基幹システムとの連携にあたって必要とされる処理は、各種データをXML形式に変換するだけ。システムにほとんど手を加える必要がなく、短期かつ安全に導入できる。

電子ペーパー表示システム 電子ペーパー表示システム

 無線通信機器の導入に当たっては、適切な基地局設定も必須だ。そこで、DNPはシステムの導入にあたり、顧客の既存環境における無線システムの有無や電波状況を入念に調査した上で基地局を設置するとともに、稼働後の検証作業を実施する。

 「電波状況はさまざまな要因により大きく変化する。また、工場などではレイアウト変更もしばしばだ。これらに対応するために、電波状況を調査するツールと、調査に必要とされるノウハウを併せて提供する。その結果、迅速なサポートが困難な場所などにおいても、自前でトラブルを解決できるようになるのだ」(吉野氏)

 すでに同システムは自動車や半導体のラインを中心に豊富な導入実績を誇り、その構成のシンプルさと入念な検証作業によって、これまで運用が停止するようなトラブル自体を起こしたことは一度もないという。

 なお、DMSの通信方式には消費電力が少ない近距離無線通信規格であるIEEE802.15.4(ZigBee)に準拠した方式が採用されている。これは、「生産ラインでは大量の表示端末が用いられることから、それらの充電は現実的に極めて困難」(吉野氏)なことを踏まえた判断であり、内蔵された市販のコイン電池4個で、約2年間の利用が可能となっている。

desknet'sがオフィス市場を開拓する切り札に

 ここまでは、主に製造現場における電子ペーパーのメリットを見てきたが、指示や表示を必要とする場面は至るところに存在する。このことを踏まえ、DNPは現在、各種システムと組み合わせることで、提案メニューの拡充を図っている最中だ。

 その一環として、オフィス内での用途開拓に向け同社が新たに追加したメニューが、ネオジャパンのグループウェア製品「desknet's」との連携ソリューションである。

 一般にオフィスではミーティングが日常的に行われ、グループウェアの多くは会議室予約などのための機能を標準的に実装している。ただし、せっかくシステムで予約をしたものの、予約時間に会議室が使われていたり、会議室がいくつもある場合には、どれを予約したのかを忘れてしまったりという経験は誰にもあることだろう。

 desknet's連携ソリューションは、こうしたオフィス内でのちょっとした悩みの解決に大きな威力を発揮する。例えば、会議室の扉などにDMSを設置し、会議室予約機能のデータを基に利用時間や予約者などを表示させることで、予約者以外の利用の自制を促し、予約した部屋を容易に特定できるようになる。また、大学などでは試験会場の案内のほか、電源が切れても表示を保てる特性を生かし、非常時における避難経路の指示といった用途も考えられる。既に東京電機大学の北千住キャンパスでは教室前に授業スケジュールを電子ペーパーで表示し、学生が確認できる環境が整備されており、他大学からも同ソリューションの問い合わせが寄せられているという。

会議室の予約と利用を大幅に効率化

 実は、DNPでは2005年にdesknet'sを全社導入して以来、約4万人に上る全社員のスケジュール管理、2000以上の会議室、設備や機器の予約管理で活用してきた。その背景には、同社が事業部間の連携を通じて多様な製品を組み合わせ、付加価値を高める活動をしてきたことがある。従来から多拠点間でのテレビ会議が頻繁に開催され、会議室の予約や利用の効率化が切実な課題となっていたのだ。desknet's連携ソリューションは、この悩みを解決するためDNPが編み出した現実的な“解”と言えるわけだ。

 「desknet'sの活用を進める過程で、電子ペーパー表示システムとの連携のアイデアがもたらされた。そこで環境を整備したところ社員から好評を博したことで、広く企業に受け入れられる可能性があることに気付かされた。しかも、desknet'sは機能が豊富でシステムとしての安定性も高く、ユーザー企業も非常に多い。これらを総合的に判断し、desknet's連携ソリューションの提供に乗り出すことを決断したのだ」(吉野氏)

 desknet'sはもはやDNPにとって業務上の必須ツールになっているという。一方で、DNPはdesknet'sを武器に、電子ペーパーの普及をさらに加速させる考え。そのためにA4サイズのDMSを用意するといった施策を通じ、2016年度には電子ペーパー表示システムで30億円の売り上げを目指す計画である。

 電子ペーパーが我々にとって身近な存在になるのも、そう遠い話ではなさそうだ。

desknet'sを約40,000人で利用中

  • desknet’s Enterprise Edition V4.2 (カスタマイズ版)
  • 導入時期:2005年10月
  • 利用数:約40,000ユーザー
  • 主要利用機能:スケジュール、設備予約、電子ペーパー(会議室予約表示システム)と連携

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