ボーダフォンとパートナーが創造する「グローバルM2M」のニュービジネスモデルとは?

ワイヤレスネットワークを介してシステムや情報の連携を可能にする「M2M」のグローバルでの活用が広がり始めた。世界80カ国以上にネットワークを持つボーダフォンとパートナーによる、最新のM2Mソリューションの動向を紹介しよう。

» 2013年06月12日 10時00分 公開
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ビジネスモデルを変革するM2M

 ボーダフォンがM2M(Machine To Machine)ビジネスに本腰を入れている。M2Mとは、さまざまな機器やデバイスに取り付けられたセンサーがネットワークを通じて情報をやりとりするシステムのこと。ボーダフォンは同事業にて、既存のモバイル通信網を活用しつつ新たなビジネスチャンスを生みだそうとしているのだ。

 同社にとってM2Mが重要な事業である理由を、ボーダフォン・グローバル・エンタープライズ M2M APAC リージョナルビジネスディレクターのニクラス・エカーブ氏は次のように語る。

ボーダフォン・グローバル・エンタープライズ M2M APAC リージョナルビジネスディレクターニクラス・エカーブ氏

「M2Mは、われわれがこれまで提供してきたモバイルサービスやモバイルネットワークを活用しつつ、新たな手法で顧客のビジネスを支援する事業だ。世界中に広がるボーダフォンのモバイルネットワークで様々なデバイスを企業の中央システムに接続させ、情報を集約する。これは顧客のビジネスにとって強力なツールとなり、ビジネスプロセスやエンドユーザーとの関係、さらにはビジネスモデルさえも変革するものになる」

 ボーダフォンは、世界30カ国以上で自社のモバイルネットワーク網を運営し、日本(NTTドコモがパートナー)を含めた50カ国以上にて提携パートナーを介したモバイルネットワークサービスを提供している。「この幅広いネットワーク網があるからこそ、世界中でM2Mのようにビジネスクリティカルなサービスが展開できる」(エカーブ氏)

 実は、ボーダフォンでは20年以上にわたって、様々な業界の企業でのM2M導入をサポートしてきた実績がある。約5年前、M2M事業を戦略的成長分野の1つと位置付け、積極的に投資を行うという判断を下し、2010年にM2M専任組織を立ち上げた。現在、世界各国で250人以上がM2M専任スタッフとして事業を展開している。アジアパシフック地域では同社が自社ネットワークを運営しているニュージーランド、オーストラリア、インドはもちろん、日本や香港、シンガポール、韓国にも専任スタッフがおり、近く中国でもM2Mチームが発足する予定だ。

 「M2M市場は順調に成長しており、M2Mをビジネスに取り入れることのメリットを理解する企業も増えつつある」とエカーブ氏。「市場の成長に伴い、われわれのM2Mチームも更に強化する予定だ」としている。

実用化が進むM2Mソリューション

 「M2Mを利用すれば、従来になかったような情報やサービスを顧客に提供できる」と話すエカーブ氏だが、実際にM2Mはどのような場面で活用されているのだろうか。

 同氏がまず例を挙げたのは産業機器だ。大型産業機器がどこでどのように使われ、どれだけのエネルギーを消費しているのか遠隔管理できるほか、位置情報技術で機器の盗難を検知することや、メンテナンス時期および問題発生時にアラートを出すこともできるという。

 商用冷蔵庫にもM2M技術が活用されている。飲料水やチョコレート、アイスクリームなど、冷蔵・冷凍保管が必要な商品が正しい温度で保管されているか、冷蔵庫にセンサーをつけることで監視できるというものだ。

「一部地域では、夜中に冷蔵庫の電源が切られてしまうケースもある。メーカー側は商品を一定温度に保ち、消費者に届けるまで最適な状態を保ちたいと考えているにも関わらず、店舗側にその意識がないこともあるためだ。M2M技術を使って冷蔵庫内の温度を監視し、商品に影響が出るような温度変化があった場合は、メーカーが店舗に連絡するなどして品質を確保するようにできる」

 デンマークのGlobe Tracker Internationalは、こうした分野でボーダフォンのM2Mを採用した企業のひとつだ。同社はサプライチェーンにおける商品追跡や運用管理を行う「Smart Autonomous Asset(自立型スマートアセット)ソリューション」にてボーダフォンのM2M技術を採用、サプライチェーンの可視化を実現している。

グローバル規模で展開するボーダフォンのネットワークによって「Smart Autonomous Asset」サービスが実現した

 エカーブ氏は、「サプライチェーンの課程において、出荷や運送時のコンテナの状態を監視することは非常に重要だ。コンテナの状態によっては製品に悪影響を及ぼす危険があるので、製品が積まれた時点からコンテナの温度や二酸化炭素量などさまざまな状態を監視し、遠隔から温度調整などもできるようにしている。ボーダフォンのグローバルネットワーク網があるからこそ実現できるサービスで、製品へのマイナスな影響を最小限にとどめることができる」と説明する。

 また、医療分野でもM2Mが活用されている。医療機器は非常に精密で、測定結果は常に正確であることが求められる。こうした機器は細心の管理体制が必須であり、「医療機器にM2M機能を持たせ、メンテナンススケジュールが正しく守られているか、エラーが起きていないか常にチェックできるようにしている」という。メーカーが遠隔地から機器にログオンし、現地に出向くことなく修理を行うことや、ソフトウェアのアップデートも行える。

 病院内にLAN環境が整っているケースも多いが、「最新機器を導入する場合、技術的にLAN接続が可能でも、病院のネットワークは集中治療の監視など機密情報を扱うことに使われることも多く、新たな医療機器を導入したからといって、すぐにLAN接続できないことが多い」とエカーブ氏。セキュリティやポリシーといった課題が立ちはだかり、導入した医療機器をネットワークに接続するまで5カ月ほどかかることもあるという。病院側にこうした事情があるため、最初から機器そのものにネットワークへの接続性を持たせておくことに大きなメリットがあるとのことだ。

 エカーブ氏は、「M2Mのネットワーク網はインターネットより安全だ」と主張する。ボーダフォンの提供するM2Mネットワークは、機器とユーザーのシステム間をプライベートに結ぶ保護されたネットワークとなっている。「インターネットを介さず、テレコムネットワークやインターネットに対してアドレスがオープンになることもない。保護されたチャネルの中で、ユーザーのみが機器にアクセスできる。M2Mデバイスには電話番号が割り当てられているわけではないので、SMSを使った攻撃を恐れる必要もない。完全に外部からのアクセスは不能で、ユーザーのITネットワーク内でのみ機器にアクセスできるシステムなのだ」という。

ボーダフォンのグローバルM2Mサービスでは端末からユーザー企業のアプリケーションまでをEnd-to-Endで安全に接続することを可能にしている

 ほかにも、M2Mの先駆者としては自動車業界が挙げられる。実際に自動車メーカーが提供しているサービスには、自動車とスマートフォンアプリを連動させ、広大な駐車場のどの場所に駐車したのか忘れても、M2Mの活用によってクラクションを鳴らしたり、ライトを点灯したりできるサービス、あるいは、車の走行距離やガソリンの使用量、メンテナンス時期などが分かるものもある。いわば、スマートフォンが自動車の情報を確認するためのインタフェースとなっているのだ。

 インドの電気自動車メーカーMahindra Reva Electric Vehiclesは、同社の電気自動車「e2o」にボーダフォンのM2Mを採用し、スマートフォンアプリや専用Webページでさまざまな機能を提供している。例えば、遠隔地からのバッテリーの充電状況の確認や、車内エアコンの制御、ドアロックの施錠や解除、最寄りの充電ステーションの場所確認などができる。また、パーキングブレーキをかけ忘れたり、ドアがロックされていなかったりする場合は、自動的に所有者へ警告が発せられるという。

 こうしたサービスは、消費者にとって便利なのはもちろん、消費者とメーカーとの関係向上にもつながると期待される。「これまで自動車メーカーは、工場から自動車が出荷された時点で消費者との関係が切れていた。しかし、自動車のM2Mサービスを通じてメーカーと消費者の間に新たな関係が生まれる。現在スマートフォンで提供されているサービスはシンプルなものばかりだが、こうしたサービスによりメーカーは、消費者との関係を保つチャネルを確保し、さらに密な関係を築いていける可能性を秘めている」(エカーブ氏)

 M2Mで消費者のライフスタイルを支えるサービスが提供できれば、「製品の買い換え時に再度自社製品を購入してもらう可能性が大きくなる」(エカーブ氏)という。M2Mサービスを通じて、消費者とメーカーの間には製品を超える結びつきが生まれる。「多くの企業が、M2Mによるコミュニケーションで顧客との関係が向上できることに気づき始めている。だからこそ市場も成長しているのだ」とエカーブ氏は述べている。

パッケージソリューションの提供へ

 M2Mビジネスを推進するにあたってのボーダフォンの強みは、既にグローバルなモバイルネットワーク網を提供していることにある。こうしたインフラ部分は今後もボーダフォン全社で強化していく方針だが、M2M部門としては「ネットワークのみならず、ハードウェアやソフトウェア、さらには、サービスまで組み合わせた統合パッケージを市場に提供していきたい」(エカーブ氏)としている。

 2013年3月には、ヨーロッパの保険会社向けに統合パッケージソリューションのトライアルを始めている。通常、自動車保険の保険料は、ドライバーの居住地域や年齢、事故歴などによって決まるが、このソリューションを活用して自動車に搭載したセンサーからドライバーの運転データを収集すれば、自動車の利用状況をベースに保険料が決まることになる。

 自動車に搭載したセンサーを通じて、加速の仕方、ブレーキのかけ方、コーナーの曲がり方など、ドライバーの運転内容を監視する。こうして得たデータからドライバーの安全性を判断し、保険料が決まるという仕組みで、利用ベース自動車保険(UBI)と呼ばれる。「安全に運転するドライバーであれば保険料が安くなるため、従来の自動車保険のように年齢が若ければ若いほど保険料が高くなることもなく、ドライバーに合った保険料が算出されるようになる」とエカーブ氏は説明する。

 このようなパッケージソリューションは、ネットワーク網のみならず、ハードやソフト面も重要だ。上述の保険会社向けのパッケージは、ボーダフォンとそのパートナーであるTowers Watsonによるものだが、「重要なのは、それぞれのコンポーネントを統合し、ボーダフォンが責任を持って顧客にソリューションを届けることだ」とエカーブ氏は強調する。

 このように特定の業界向けソリューションを開発することで、「M2Mのメリットをより多くの顧客に享受してもらいたい」とエカーブ氏は話す。ボーダフォンでは今後、さらなるグローバルM2Mソリューションの構築に投資し、顧客企業のニュービジネスモデルの創造を支援していく考えだ。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2013年7月11日