アジアで加熱するクラウドとビッグデータ、HPが新興市場で狙うものHP World Tour Beijing Report(2/2 ページ)

» 2013年06月25日 07時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
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ビッグデータに向けて歩み出せ

 プリート氏のセッションを受けて登場したAPJ テクノロジーコンサルティング、テクノロジーサービス担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーのモーハン・クリシュナン氏は、企業でのビッグデータ対応を支援するとしたHadoopベースのシステムの設計や導入コンサルティングサービスを発表した。

 同氏によると、ビッグデータの分析によるビジネスへの活用では米国や日本などが先行しているが、中国などのアジア主要国も追従し始めているとし、「構造化、非構造化のそれぞれデータの相関分析から企業ビジネスの価値を創造する必要性が生まれている。しかし、そうしたデータの大半は“ダークデータ”として生かされていない」と述べた。

 データ活用を妨げる背景には、ボリュームがあまりに巨大であり、ソースもバラバラなデータがものすごいスピードで生成されながらも、従来システムがそれに対応できず、ガバナンスも確保されていないことがあるという。新サービスではこうした課題の解決を顧客企業と一緒に取り組むものだといい、ワークショップを通じて具体的なデザインから導入までのプロセスを明確化できる点が特徴だと強調した。

ビッグデータ活用のための基盤構築をHPのサービスで実現したという

 こうしたサービスをいち早く活用したとして、顧客事例では日本のインターネット広告大手のフルスピードにおける広告管理システム「AdMatrix」での採用が紹介されている。

加速する新興市場のIT最適化

 メディア向けセッションで発表されたコンバージドインフラのコンセプトやワークショップ形式のコンサルティングサービスなどの施策は、既に日本でも提供されているが多い。同社が今回のタイミングで発表した背景には、同社がアジアの新興市場でも日本と似た企業ニーズが高まっているとみてからであるようだ。

スブラマニュム・バラジー氏

 セッション後に日本のメディアとのグループインタビューに応じたテクノロジーサービス、ストレージサービスディテクターのスブラマニュム・バラジー氏は、コンサルティングとストレージの2つのサービス領域を担当しており、そのことがアジアの新興市場における同社戦略の現状を表していると述べた。

 「顧客に明確にロードマップを示すことによって、早い企業では2〜3カ月、平均でも6〜8カ月という非常に短い期間でそれぞれの目的を達成することに成功している」(バラジー氏)。インフラ最適化とビッグデータ活用基盤の構築という2つの目的に同時並行的に取り組み始めているという点が、新興国企業のITに対する活気の高さを物語っている。

 また、製品戦略では今回のイベントにおいてストレージ関連を前面に展開している。その理由についてプリート氏は、「3PAR製品の競合はEMCだ」と明言し、同社に真っ向勝負を挑む気概をみせた。

マイク・プリート氏

 発表したオールフラッシュアレイモデルの投入により、ストレージラインアップとしてはテープ、HDD、SSDによるシステムをそろえ、ストレージ管理ソフトウェアのポートフォリオも拡充している。プリート氏が意気込む背景には、HPがDellと激戦の末に3PARを買収し、ストレージ市場での同社のスタンスを高めることに取り組んできた経緯から、ストレージベンダー大手のEMCと互角に戦える環境とその手応えを、アジア太平洋市場で近年の実績から掴みつつあるためであるようだ。

 ストレージ展開の強化は、上述した同社がアジア新興国市場でも見込んでいるビッグデータのニーズ拡大にもつながる。プリート氏は、ストレージとソフトウェアの連携によるデータ検索や処理のパフォーマンスが競合優位性を高めるとも説明し、「ぺタバイトクラスのデータから必要な情報を瞬時に発見できるクエリ処理を可能にする。訴訟での証拠開示請求(e-Discovery)などが代表例だ」とした。

 カンファレンスの前半では米国や日本市場で本格化し、これに追従するアジアの新興国市場でのITインフラ最適化やビッグデータ活用に向けたニーズの取り込みを狙う同社の姿勢が明確に打ち出された。開催2日目となる25日には、メグ・ホイットマンCEOによるキーノートや、HP Discoverで発表されたクラウド分野の新たな戦略が披露される予定となっている。

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