クラウド戦略の次なる矢を放つHP、「Cloud OS」などの新施策を発表HP World Tour Beijing Report

本格化する企業のクラウド利用に向けて、米HPがOpenStackベースのソフトウェアスタック「HP Cloud OS」やサービスを多数発表した。ビル・べグティCOOは、「エンタープライズクラスのクラウドを提供できるのはHPのみ」と意気込む。

» 2013年06月26日 07時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
HPのビル・べグティCOO

 米HPは6月25日、中国・北京で開催したアジア太平洋地域向けのカンファレンス「HP World Tour Beijing」で同社のクラウド戦略「コンバージド・クラウド」に基づく多数の新たな施策を発表した。基調講演に登壇した最高執行責任者(COO)のビル・べグティ氏は、「あらゆるクラウド環境に対応し、その構築と利用の両面においてユーザーニーズに応えるポートフォリオを実現する」と宣言した。

 同社が顧客企業へ実施したクラウドに関する意識調査によると、IT責任者の68%が今なおセキュリティやコンプライアンス、65%がベンダーロックインへの懸念を抱いているという。その一方、2016年までに76%が何らかの形のクラウドを導入するとも回答。べグティ氏は、「オンプレミスとプライベート、パブリック、マネージドのクラウドの橋渡しができるパートナーが求められている」と話す。

 こうした企業ニーズに対してべグティ氏は、選択肢と信頼性、一貫性を提供することが同社の強みであり、「SLAに基づくエンタープライズクラスのサービスを確実な形で実現することが他社との違いだ」と強調。そうした取り組みでの評価により、シンガポール政府が利用する電子政府向けクラウドサービス「G-Cloud」に同社のソリューションが採用されたことを明らかにした。

HPのコンバージド・クラウド戦略

 こうしたをコンバージド・クラウド戦略を推進する新施策として、(1)OpenStackベースの同社のディストリビューション「HP Cloud OS」の拡張、(2)クラウド基盤構築パッケージ「CloudSystem Enterprise Starter Suite」、(3)パブリッククラウドサービス「HP Cloud Services」およびプライベートクラウド運用支援サービス「Enterprise Cloud Services」――が発表された。

 (1)のHP Cloud OSは、CloudSystemやHP Cloud Servicesで導入されている。今回は新たに、同社の省電力サーバシステム「HP Moonshot」にも対応する計画が発表された。これにより、例えば、Webサーバなどのホスティングサービスにおいてサービスインの速さや拡張性、信頼性、省電力性、省スペース性に優れたサービス提供基盤を構築できるようになる。

今年4月に発表したMoonshotサーバによるクラウド対応を実現するという

 (2)のCloudSystem Enterprise Starter Suiteは、2011年に発表したCloudSystem Enterpriseの構成を簡素化してより迅速なクラウド構築を可能にする。クラウド環境をスモールスタートで導入し、将来的に拡張したいといった企業ニーズに対応するものという。

エンタープライズグレードのクラウド環境を迅速に導入できるという

 (3)のうちHP Cloud Servicesではより大規模なインスタンスへの対応、SDNベースのプライベートネットワークによるクラウド環境への接続などが可能になる。併せて利用コストを抑えたメニューも追加した。Enterprise Cloud ServicesではERPなどエンタープライズアプリケーションのクラウド環境への移行の支援、モバイルデバイスからプライベートクラウドのアプリケーション利用を支援する管理やセキュリティ機能の提供、同社データセンターで顧客企業のプライベートクラウド環境を運用する新メニューを導入していく。

 べグティ氏は、同社のクラウド提供実績としてCloudSystemが1000社以上に導入され、パブリッククラウドサービスの利用が6000社以上に、マネージドクラウドサービスの利用が200社以上に達したことを紹介。「こうした実績はパートナー企業と二人三脚で取り組んできた成果であり、さらに、5600社以上が当社のサービスを利用してクラウド化への準備を進めている」と語った。

Cloud OSとオープン化の狙い

 基調講演後のグループインタビューに応じたエンタープライズグループ データセンターサービス・クラウドビジネス担当ゼネラルマネジャーのジョージ・ヤムニス氏によると、新施策の中で触れられた「HP Cloud OS」とはOpenStackをベースに、運用自動化などオーケストレーションのための機能やポータル機能、ITリソースニーズの高まりに応じてクラウドにリソースを拡大するバースティングのための機能などを、HPが独自に追加したもの。

 その狙いを同氏は、「われわれはOpenStackコミュニティーに最も技術を寄与してきたメンバーの1社であり、クラウド基盤のオープン性を高めつつ、OpenStackをより信頼ある形にし、Cloud OSとして提供している。政府官公庁や金融機関、公共機関といった高度なガバナンスが要求されるユーザーに、オンプレミスとクラウドのマルチプラットフォームを利用してもらいたい」と述べている。

インタービューに応じたジョージ・ヤムニス氏(左)とジョン・ハスキー氏

 今年3月には、HPと同じくOpenStackコミュニティーのメンバーである米IBMも、同社のクラウドサービス基盤をOpenStackベースに移行させると表明し、その理由を「企業ユーザーにオープンなクラウド環境を提供するため」としている。2社ともOpenStackベースのオープン性を強調する形となった。

 これについてストラテジック・エンタープライズ・サービス&ITアウトソーシング担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーのジョン・ハスキー氏は、「HPのいうオープンとは、アプリケーションのポータビリティ(可搬性)を実現することだ」と説明する。

 IBMでもこの点を強調しており、差別化点としてはハードウェアや基盤ソフトウェアの独自機能、サービスなどが焦点になるようだ。ハスキー氏は、「われわれとしては顧客のニーズに応えることが第一にある。異なるテクノロジーであっても、それを含めたオファリングをしたいと考えており、実際に提供した実績もある」と話した。

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